下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【16】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1945401266&owner_id=5019671
テーマサイトは下記。
【次の文の「といっても」は「とはいえ」に置き換えられますか】
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/9156997.html
==============引用開始
日本人の方にお願いします。次の文の「といっても」は「とはいえ」に置き換えられますかでしょうか。
●すぐに来て下さい。まあ、すぐにといっても、ご無理のないぐらいで結構ですが……。
●彼は東京だがね。東京といっても、神田の出だ。
●卓郎は、国語学者だ。国語学といっても、彼は文法の方だそうだ。
==============引用終了
先行質問はどうなってしまうんだろう。
【「とはいえ」と「といっても」の違いについてお願いします】
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/9155553.html
結論だけ書くと、置きかえられない理由は考えにくいのでは……。
たしかにちょっと異和感がある場合もあるけど、その異和感の程度は個人差があるだろう。
ある人は○だと思う。ある人は△だと主張する。ある人は×だと断言する……そうなると、水掛け論にしかならない。
理由を論理的に説明できるのは、言葉の神様のレベルでしょう。
だったら、「同じように使える」と考えるしかないのでは。
まず辞書をひく。
==============引用開始
デジタル大辞泉の解説
とは‐いえ〔‐いへ〕【とは言え】
[接]「とは言うものの」に同じ。「彼は不満らしい。―、全く反対でもない」
[連語]「とは言うものの」に同じ。「人数は少ない―、意気込みは盛んだ」
==============引用終了
==============引用開始
大辞林 第三版の解説
とはいえ【とは言え】
( 接続 )
〔連語「とはいえ」から〕
先行の事柄に対して,それを認めつつも,それにやや反したり矛盾したりする事柄を述べるのに用いる。そうはいっても。けれども。とはいうものの。 「君はほんとに誠実だ。-,それだけでは世の中は渡れない」
とはいえ【とは言え】
( 連語 )
〔格助詞「と」・係助詞「は」に動詞「いふ」の已然形「いへ」の付いたもの。「とはいへど」の「ど」の略された形〕
接続助詞的に用いて,逆接条件を表す。…ではあるが,その反面…。…とはいうものの。 「責任者が行く-,やはり不安だ」
==============引用終了
==============引用開始
大辞林 第三版の解説
といっても【と言っても】
( 連語 )
前に述べたことにやや対立したり矛盾したりする意を表す。接続詞的にも用いる。 「安い-一万円はする」 「社長-名ばかりで…」
==============引用終了
ここまでで読み取れること。
・「とはいえ(とは言え)」と「とはいうものの(とは言うものの)」はほぼ同じ。
・辞書は連語の「とはいえ」と接続詞の「とはいえ」を別のもののと考えているらしい。
それはどっちてもいいと思うけど、それが辞書のこだわり(正用か誤用か)なんだろう。どっちでもいいと思う。たとえば、「だから」は文中で使えば「接続助詞」だが、文頭で使えば「接続詞」になるってこと。『大辞林』を見る限り、連語の「とはいえ」は「とはいえど」の省略された形。接続詞の「とはいえ」が同様か否かは不明。たぶん同様なんだろう。
以下メンドーなので、「連語」(要は接続助詞的な用法)に限って書く。基本的に使い分ける理由がなさそうだから。
ちなみにいつもの類語辞典も見ておく。
「といっても」と「とはいえ」の違いにはふれていない。
http://dictionary.goo.ne.jp/thsrs/17256/meaning/m0u/%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%84%E3%81%88/
==============引用開始
◆(と(は)いっても・とはいうものの・ものの) 「とはいえ」と同じような意味を表わす。「人間はみな平等だとはいっても、現実には金持ちも貧乏人もいる」「一点リードしているとはいうものの、いつ逆転されるかわからない」「教科書を開きはしたものの、何も頭に入って来ない」
==============引用終了
辞書の例文を並べてみる。
●「とはいえ」の例文
人数は少ないとはいえ、意気込みは盛んだ
責任者が行くとはいえ,やはり不安だ
●「といっても」の例文
「安いといっても一万円はする」 「社長といっても名ばかりで…」
どれも「とはいえ」でも「といっても」でもおかしくない。
質問者が2つの質問であげた例文で考えてみる。
1)妹の頭は単純{とはいえ/といっても}、そこが彼女の可愛いところでもある。
2)雄介は、知らなかった{とはいえ/といっても}、罪を犯した。
3)責任者が行く{とはいえ/といっても}、やはり不安だ。
4)すぐに来て下さい。まあ、すぐに{とはいえ/といっても}、ご無理のないぐらいで結構ですが……。
5)彼は東京だがね。東京{とはいえ/といっても}、八王子の出だ。
※「神田」はヘンなので「八王子」にした。
6)卓郎は、国語学者だ。国語学{とはいえ/といっても}、彼は文法の方だそうだ。
どれも×とは言えないだろう。
当方の語感だと……厳密に考えると引っかかるものがいくつもある。なかでもイヤなのは4)5)6)の「とはいえ」。
{とはいえ/と(は)いっても}、これは当方の主観でしかない。こんな微妙な違いを質問者に押し付ける気はない。
ここから先は、いっそう当方の個人的な感覚。
かなり微妙な話なんで、日本語学習者にわかるとは思えないが……。
↑の4)5)6)が「とはいえ」だとヘンに感じるのは、「は」が余計に感じるからでは。4)5)6)を「とはいっても」してみると異和感が生じるはず。「とはいえ」だと異和感が大きくなる。
そもそも、「とはいえ」と「といっても」を比較するのがおかしいのでは。
比較するなら「といっても」と「とはいっても」だろう。
「といっても」と「とはいっても」は、同じようでも微妙に違う。「は」の働きの分だけニュアンスがかわるのは当然だろう。
ちゃんと書くとメンドーだから要点だけ。下記の2つの違いを考えればわかるはず。この「は」の働きは……とりあえず「限定」にしておこうか。
「は」のない「といっても」と「とはいえ」を比較するのがムチャ。
「認めるとは言ったが、そこまで許す気はない」
「認めると言ったが、そこまで許す気はない」
もうひとつ注意するべきは「とはいえ」は「とはいえど」の「ど」の略された形ってこと。
「ど」をつけるついでに「も」もつけて考えるべきだろう。
「とはいえ」≒「とはいえど」と、「とはいえども」は、同じようでも微妙に違う。「も」の働きの分だけニュアンスがかかわるのは当然だろう。
この「も」の働きは……とりあえず「逆接」にしておこうか。
「とはいえ」≒「とはいえど」も逆接だが、「とはいえども」のほうが「も」の働きの分だけ逆接のニュアンスが強くなる。「も」のない「とはいえ」と「と(は)いっても」を比較するのもムチャ。
ということで、比べるなら「は」も「も」も入っている「とはいえども」と「とはいっても」なのでは。
これならば、ほとんど同じと言えるはず。
一方から「ど(も)」をとり、一方から「は」をとって比較したら、何がなんだかわからなくなるって。
「とはいえども」と「とはいっても」の一方しか入らない例文を持ってきなさい。もしあったら……謝るから。(←オイ!)
つきつめると、「は」の働きとは、「も」の働きとは……って話になる気がする。そんなものを簡単に説明することなどできません(泣)。
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