【つまらんダジャレは嫌いだぁ!61──「大きな」と「大きい」の違い】〈1〉〈2〉 | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

 フリーランスの編集者兼ライターです。
 主として日本語関係のことを書いています。

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1354427241&owner_id=5019671

mixi日記2010年01月21日から。

「みなさ~ん、今日は反対の言葉の勉強をします。〈大きな木〉の反対の言葉がわかる人。ハイ、tobiクン」
「はい、センセー。〈大きくない木〉です」
「それも反対の言葉ですね。ほかに〈ナントカでない〉を使わない言葉を考えましょう」
「センセー、〈ナントカ出ない〉って便秘ですか?」
「イラッ。tobiクン、ふざけてないでまじめに考えましょうね。いまそんなことは関係ありません」
「はい、センセー。〈フツーの木〉でどうよ」
「ピキッ。tobiクン、ちょっとこちらにいらっしゃい。〈大きな木〉の反対の言葉になる〈ナントカな木〉ですよ」
「……じゃあ、大きな茸」
「それは木じゃないだろ! 〈ナントカな木〉だって言ってるだろうが、クソガキ!」
「痛い痛い、tobiクンの〈大きくない茸〉をイジめないで。シクシク」
 ……それは〈オトコなキ〉?


 えーと、今回のテーマは「大きな」と「大きい」の違い。
 最近参加したコミュの過去のトピでおもしろいテーマを見つけた。
【「大きいかぶ」と「大きいなかぶ」】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=26354322&comm_id=1585030

「大きな」と「大きい」はどう違うか。これは昔から疑問だった。イチバンの違いは「大きな」は連体詞で「大きい」は形容詞。意味はほぼ同じ。ただし、「大きな」が洗練された言葉で、「大きい」は子供っぽい言葉、ってイメージがあった。
「1」でリンクが張ってあるサイトは興味深い。※リンク切れ。
http://kite.meikai.ac.jp/japanese/meikainihongo/7/sasaki.pdf
↓にかわったらしい。
http://www.urayasu.meikai.ac.jp/japanese/meikainihongo/7/sasaki.pdf

 この論文によると、基本的には「大きな」と「大きい」には互換性があるが、微妙に違う点もある。ポイントを箇条書きにしてみる

1)「大きい」しか使えない例
「大きいのしかない」(小銭がないとき)
「大きいお兄さん」(最年長の兄の意味)
※tobiメモ 「最年長」だろうか。単に「年長」だと思う。「大きいお兄さん」の上に、ずーっと年の離れた「別格のお兄さん」がいてもおかしくはない。

2)「大きな」しか使えない例
 主として慣用句。
「おっきなこと」「大きな顔(をする)」「大きな口(をたたく)」「大きなお世話」
※tobiメモ なぜ「大きなこと」だけ「おっきな」になっているのかは不明。さらに、「おっきなこと」だけは「大きい」にできるらしい。全部、「大きな」が自然だと思うけど、「お世話」以外は「大きい」が間違いと断言する自信がない。

3)「小さな」と「小さい」の違い
「小さな胸」(かわいらしい胸)
「小さい胸」(形態の大きくない胸)
>「ちいさな胸」というと、胸の形態が小さいのみならず、愛らしい心というニュアンスを含むことが往々にしてある。
※tobiメモ 知らん。 

 コメントの「3」に〈「大きな」の品詞は、連体詞とする見方と、連体形しかないナ形容詞とする見方とがあるようです。(辞書によって違ったりします。)〉とある。
 ちょっと調べてみた。

ネット辞書『大辞泉』
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%AA&dtype=0&dname=0na&stype=0&pagenum=1&index=027541021701000
================================
[形動]《形容動詞「おおきなり」の連体形「おおきなる」の音変化》
◆「声の大きな人」のように、述語としても用いられるので、形容動詞と認められる。連体形だけが用いられる。
================================

ネット辞書『大辞林』
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%AA&dtype=0&stype=1&dname=0ss
================================
(形動)
〔補説〕 形容動詞「おおき(なり)」の連体形から。現代語では連体形「おおきな」の形だけが用いられる
〔補説〕 「おおきな」を連体詞とする説もあるが、この語は「耳の大きな人」などのように、述語としてのはたらきをもっている点が、一般の連体詞とは異なっている
================================

 手元の『広辞林』には連体詞しかのっていない。
 Wikipediaだと、「大きな」「小さな」「おかしな」は連体詞。こうなってくると、当方が口を挟めるような問題ではない。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%A3%E4%BD%93%E8%A9%9E

 ただ、基本的には「大きな」の類いを使うのが無難だと思う。
「大きいのしかない」「大きいお兄さん」は、子供っぽさが感じられる用法なので「大きい」のほうが自然なのかもしれない。ただし、「大きなのしかない」「大きなお兄さん」はダメと断言する勇気もない。

 実はつい最近読んだ小説に「小さい」が出てきた。これはなぜか「小さな」にはしにくい気がした。どうなんだろう。

  尚子の小さいときは、もっと荒々しい急流だった。
  『おとこ坂 おんな坂』(阿刀田高)

【追記】
「小さいとき」は「小さなとき」にしにくい。松任谷由実(「荒井」じゃないんだ)の『やさしさに包まれたなら』の冒頭の「小さい頃」も同様の気がする。単に慣れの問題?
http://www.evesta.jp/lyric/artists/a3091/lyrics/l25227.html


「大きな」と「大きい」の違い〈2〉

 いかんなぁ。〈1〉で書いた{細かい/細かな}ツッコミの対象は、リンク先の論文ではなく、引用されている『現代形容詞用法辞典』だった。
 論文のほうは、あんな乱暴な書き方はしていない。収集した文例を徹底的に分析している。分析した結果は……よくわからない(泣)。

 論文を再読して、メモしておきたいことが出てきた。
================================
「大きい⇔大きな」のように語尾イとナが交替形をもつ語彙は、管見の範囲では下記の8組である。
「大きい⇔大きな」「小さい⇔小さな」「おかしい⇔おかしな」「細かい⇔細かな」
「やわらかい⇔やわらかな」「あたたかい⇔あたたかな」「間近い⇔間近な」「手近い⇔手近な」
================================

 後ろの2組はめったに見ないが、その話はパス。
 8組もあるんだ。考えたけど5組しか出てこなかった(泣)。
 この8組は2グループに分けることができる。

A「~な」が連体詞のもの
※もう少し正確に書くなら、連体詞説と形容動詞説の両方があるもの。「~な」を「~だ」にできないもの、が正確かも。
  1)「大きい⇔大きな」
  2)「小さい⇔小さな」
  3)「おかしい⇔おかしな」

B「~な」が形容動詞の活用形のもの
  4)「細かい⇔細かな」
  5)「やわらかい⇔やわらかな」
  6)「あたたかい⇔あたたかな」
  7)「間近い⇔間近な」
  8)「手近い⇔手近な」


【大きい古時計と大きな古時計の違いは?】
http://www.alc.co.jp/jpn/teacher/soudan/015.html
================================引用開始
15 大きい古時計と大きな古時計の違いは?

Q 現在、ボランティアで日本語を教えています。ちょうど初級の形容詞を教えているのですが、学生から「大きい古時計」と「大きな古時計」はどう違うのかと聞かれて困っています。どのように答えればよいでしょうか。(学習者の国籍は中国。レベルは初級前半)


A  「大きい」はいわゆるイ形容詞で、「大きいです」「大きくなる」「大きい町」のように形を変えます。これに対して「大きな」は名詞につくときは「大き い」と同じように直接つくので形容詞のように見えますが、形容詞と違って名詞の前以外に使わないので特殊なものとして、一般に「連体詞」と分類されていま す。名詞の前にしか使わないものにはほかにどんなものがあるか、考えてみてください。「小さな」「ある(ある人)」「あらゆる」などそうですね。

 さて「大きい」と「大きな」は「~古時計」の例のようにどちらも同じように名詞の前に使われることもありますし、慣用的にどちらかが多い場合があります。慣用的には
  「大きな顔をする」
  「大きな口をきく」
  「大きなお世話だ」
など「大きな」が一般的です。また、抽象的な語については「大きな」がよく使われます。
  「平和の維持は大きな問題だ」
  「博士の大きな業績にはだれでも頭がさがる」
など、「大きい」でもいいのですが「大きな」のほうが多いでしょう。それに対して、具体的に大きさ、つまりサイズを問題にした場合、
  「もっと大きいのはありませんか」
  「あげものには大きいフライパンのほうがいい」
のように「大きい」が多いようですが、これは絶対とはいえません。

 学習者が初級である場合、こうした違いはあまり重要ではないと思われます。ですから「意味は同じであるが、『大きな』は名詞の前にしかつかない」ということを理解させることが大切でしょう。
================================引用終了