「~にて」 「~によって」〈1〉~〈3〉日本語 | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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mixi日記2011年03月23日から

 テーマトピは下記。
【ーによって -にて】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=60994490
 ちとコメントを入れたら、あっと言う間にトピが削除され、トピ主からありがちなメッセージが来た(泣)。
 質問の趣旨は「~にて」「~によって」はどのように使い分けるのか、ということ。
 毎度のことだが、こういう違いを説明するのは「面倒」(あるかたからもらったメッセージにあったフレーズ)だし、日本語学習者が理解できるか否かも疑問。具体例で考えるべきだろう。具体例がないとしらみつぶしに考えることになる。それはたいへんだって。
 考えてみてほしい。「at」と「in」の使い分けなんて説明できる? 専門家だって手こずるだろう。
 具体的な例文を出して、〈空欄に入るのは「at」か「in」か?〉〈その理由は?〉ということならまだ説明できるかも。

 まず辞書をひく。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%AB%E3%81%A6&dtype=0&dname=0na&stype=0&index=17020214068300&pagenum=1
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にて
[格助]《格助詞「に」+接続助詞「て」から》名詞、活用語の連体形に付く。

1 場所を表す。…において。…で。「面接は本社―行います」
  「わづかに二つの矢、師の前―一つをおろかにせんと思はんや」〈徒然・九二〉

2 時・年齢を表す。…の時に。…で。「本日は午後五時―閉館します」
  「長くとも、四十(よそぢ)にたらぬほど―死なんこそ、めやすかるべけれ」〈徒然・七〉

3 手段・方法・材料を表す。…によって。…で。「飛行機―任地へ赴く」
  「すべて、月、花をば、さのみ目―見るものかは」〈徒然・一三七〉

4 理由・原因を表す。…によって。…で。「病気―欠席いたします」
  「御物の怪(け)―、時々悩ませ給ふこともありつれど」〈源・若菜上〉

5 資格を表す。…として。
  「ただ人(うど)―おほやけの御後見(うしろみ)をするなむ、ゆく先も頼もしげなめる」〈源・桐壺〉

◆中世以降「で」に音変化して現代語に及ぶ。なお、「にて」は、現代語でも文語的表現あるいは改まった表現に用いる。
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http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E3%81%AB%E3%82%88%E3%81%A3%E3%81%A6&stype=0&dtype=0
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に‐よっ‐て【に因って/に▽依って】
[連語]《格助詞「に」に動詞「よる」の連用形が付き、さらに接続助詞「て」の付いた「によりて」の音変化》

1 原因・理由を表す。…ので。…ために。「踏切事故―電車が遅れる」
  「年をとらぬ年が八年ある―、四十七ながら三十九ぢゃ」〈浮・永代蔵・三〉

2 手段・方法を表す。「特殊な顔料―書かれた絵」

3 その中のあるものについて、または、その中の一つ一つについていうと、の意を表す。「種類―毒のあるものもいる」「政治家―主張は異なる」

4 よりどころを表す。「命令―行動する」
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「によって1」→「にて4」と同様。置きかえも可能。
「によって2」→「にて3」と同様。置きかえも可能。
「によって3」→ ──
「によって4」→ ──。ただし、「にて」に置きかえ可能。「によって1」とどう違うのかは不明。

「にて1」「にて2」は、「によって」にはできない。「にて5」はよくわからん。
「にて」は〈◆中世以降「で」に音変化して現代語に及ぶ〉とのこと。ということで、「にて」は基本的に「で」に置きかえることができる。「によって3」も「で」にできなくはない気がする(ちょっとヘンかな。下記の【「~にて」 「~によって」〈2〉】参照)。
 今度は「にて」と「で」の違いを見てみる。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A7&dtype=0&dname=0na&stype=0&index=15122012538000&pagenum=11
(あんまりにも長いんで略)
 よく似た形に「森鴎外は、医者で小説家だった」というのもある。
 これは「〈断定の助動詞「だ」の連用形〉の中止形」なんだそうな。納得が行かないけどそういうことらしい。
【板外編9】文法はお好きですか?──そんな物好きな人はいません
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1207215683&owner_id=5019671

 で、「にて」と「で」の話。
 これはね。全部「で」にするべきだと思う。「で」のほうが用途が広いし、(現代語では)一般的。「にて」だと書き言葉的になり、堅苦しい印象になる。なんなら、「によって」も全部まとめて「で」でいいかも(それはさすがに乱暴か)。
 ところが、そういうのが好きな人もいる(泣)。
 昔やっていたパンフレットの仕事は、なんでもかんでも「にて」だった。
 移動手段も「にて」で、場所も「にて」。

  バスにて移動。レストランにて食事。

 間違いではないけど、どうにも気持ちが悪い。どうやら、「で」より「にて」のほうが丁寧という意識が働いているらしい。そりゃ書き言葉的だからそちらのほうが丁寧な印象があるのは確かだ。これにもれなく「起点のヨリ」が加わるから、どうしようもない。
【板外編6】「起点のヨリ」と「比較のヨリ」
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1068925572&owner_id=5019671

 相当しつこく「に」と「から」をすすめたけど、聞き入れてもらえなかった(泣)。

 と書いて推敲中に下記のトピが立った。おいおい。それは「~にて」と「~によって」の比較の話とはちょっと違うんじゃないか? 書き直しかよー(泣)。
【「にて」「によって」の違いについて】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=61013297&comment_count=0&comm_id=398881
 これが詳しいのかな?
「ご教授」もやめてほしいな。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-869.html

 気を取り直してさわりだけ(誤用か正用か)。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-122.html
 辞書をひくだけでほぼわかると思うけど。
「理由・原因」のときには「にて」は使えるかな? ちょっと古くさいけど使えると思う。
 このあたりについては↑の説明ででわかるはず。
「受身」?のときに、「にて」は使えるかな? こっちは「にて」も「で」も使えないと思う。ここがポイントだろう。


「~にて」 「~によって」〈2〉

mixi日記2011年03月24日から

 テーマトピは下記。
【「にて」「によって」の違いについて】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=61013297&comment_count=0&comm_id=398881

 質問の全文を転載する。
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昨日、短文にて投稿させていただきましたが・・・

 詳しく説明しないことには答えていただく方にも考える方向性が定まりにくいと御指摘を受けましたので削除させて頂いたのですが、昨日の説明不足のトピックスでも考えてくださった方が居たら申し訳ないと思い、詳しく記載させていただきたいと思います。


「にて」「によって」の利用方法にはさまざまなものがあると思うのです、今回知り合いの留学生に相談された内容は「受身文」のみになるのですが、他にもう一つ「理由・原因」の区別方法もご教授くだい。



受身
国立代々木競技場は丹下健三(にて・によって)設計された。
ノルウェーの森は村上春樹(にて・によって)書かれた。


理由・原因
台風(にて・によって)多くの家が停電した。
怪我(にて・によって)学校を休みます。
事故(にて・によって)会社に遅れる。

「ーにて」よりも「-によって」の方が強調を強める効果があるのではないかと考えていますが、明確な区別がありましたらご教授をお願いいたします。
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「理由・原因」については↑の〈1〉でわかるはず。
 問題は「受身」のとき。これを「受身」と言っていいのだろうか。ちょっと違う気がする。
 これは「理由・原因」などを表わす「~によって」とは別のもの。
「丹下健三による設計」と言いかえればわかる……と思ったが、「理由・原因」だって同様の書きかえはできる。
「台風による停電」
「怪我による休み」
「事故による遅れ」
 o( ̄ー ̄;)ゞううむ
 困った。

■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%82%88%E3%82%8B&dtype=0&dname=0na&stype=0&index=23225719069400&pagenum=1
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よ・る【因る/▽拠る/▽由る/▽依る】
[動ラ五(四)]《「寄る」と同語源》

1 (因る・由る)それを原因とする。起因する。「濃霧に―・る欠航」「成功は市民の協力に―・る」
2 (依る)物事の性質や内容などに関係する。応じる。従う。「時と場合に―・る」「人に―・って感想が違う」「成功は努力いかんに―・る」
3 (依る)動作の主体をだれと指し示す。「市民楽団に―・る演奏」
(以下略)
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 ↑の「3」だろう。「市民楽団による演奏」は「市民楽団によって演奏される」とは言えても、「市民楽団にて演奏される」とは言えない。だって「~にて」には「動作の主体をだれと指し示す」意味はないもん。
 ここを区別しないと話がグチャグチャになる。
 判別法がわかりにくい。とりあえず、「動作の主体」になれるか否かだろう。
  国立代々木競技場は丹下健三が設計した。○
  ノルウェーの森は村上春樹が書いた。◯
  多くの家を台風が停電にした。×
  怪我が学校を休ませた。×
  事故が会社に遅らせた。×


 ちょっと気になったこと。
 何がなんだかわからないのでインネンをメモしておく。
 〈1〉で見た連語の「によって」と「に+よる」の関係ってどう考えたらよいのだろう。
 連語の「によって」が「に+よる」から派生したのはわかる。あえて連語として考える必要があるのだろうか。
「によって」の「3」の例文の「政治家によって主張は異なる」。
「よる」  の「2」の例文の「人によって感想が違う」。
 この2つの違いが当方には理解できない。
 仮に、「に+よる」から派生したもののうち、「で」「にて」と置きかえ可能のものを「連語」にしたとする。だとすると、「3」の意味は外すべきだろう。そういうことなら許してやってもいい。(←何様!)


「~にて」 「~によって」〈3〉

mixi日記2011年03月27日から
 なんか疲れる展開だなー。
「9」のような本格的なコメントが入るなら、「8」の当方のコメントは必要なかったかも。かえってメンドーになった気がする。
「8」 「9」のイチバンの違いは、「動作の主体」を表わす「によって」を連語と考えるか、元々の〈助詞「に」+動詞「よる」の連用形「より」+「て」〉の音便形 (正確にはなんて言えばいいのだろう)の「によって」と考えるかだろう。どちらと考えても結果は大差がない気がする。
 当方は、『大辞泉』が連語としていなかったからそれに従った。「国立代々木競技場は丹下健三による設計」とも言えるから動詞「よる」のほうかなと思った。別に連語のほうに「動作の主体」という働きがあると考えてもいい。
 ちなみにgoo辞書は連語に「動作の主体」があると考えているようだ。
【によって/で/でもって/をもって/を通して(をとおして)】
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/thsrs/17139/m0u/%E3%81%AB%E3%82%88%E3%81%A3%E3%81%A6/
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によって/で/でもって/をもって/を通して(をとおして)
によると  によれば  を通じて(をつうじて)  につき  にして 
[共通する意味]
★動作の主体・仲介・手段・根拠・原因を表わす。
[使い方]
〔によって〕▽ウイルスによって伝染していく病気▽事業に失敗したことによって大きな痛手を受ける▽一瞬の判断によって勝敗が決まる
〔で〕▽ヨットで太平洋を渡る▽すぐれた演技力で注目を集める
〔でもって〕▽書面でもって申し入れをする▽子供だけでもって、山に登るのは危険だ
〔をもって〕▽裏切りには裏切りをもって報いる▽その罪人は謀反のかどをもって極刑に処せられた
〔を通して〕▽相撲は直接見るのとブラウン管を通して見るのとでは迫力が全く違う▽文通を通しての交際
[使い分け]
【1】 「によって」は、??受身の動詞が表わす動作の主体(仲介者)、??手段・方法・材料・仲介物、??現象や判断の拠りどころ(根拠)、??由来・原因、を 表わすが、??以外は格助詞「で」で言い換えることができる。??の中でも、「新聞紙で蜂をたたいた」のように、何かを行う際に一時利用するにすぎない媒 介的な道具類には、「によって」は使えない。「ボールペンによって書く」と言えないのと同様である。
【2】「電話によってのいやがらせ」は、「電話によるいやがらせ」の方が一般的。「新内閣による改革政治」「集中豪雨による被害」なども同じ。
【3】「によって」と同じように「により」も使われるが、書き言葉に多く見られる。「都合により欠席いたします」
(以下略)
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 このテのものが機種依存文字を使うのはどういう了見だ?
  おそらく、〈??以外は格助詞「で」で言い換えることができる〉の部分は「受身の動詞が表わす動作の主体(仲介者)」のことだろう。「??の中でも、「新 聞紙で蜂をたたいた」のように」は「手段・方法・材料・仲介物」だろう。勘弁してほしい。ブラウザをかえてもダメみたい。Windowsなら読めるんだろ うか。
 goo辞書の「によって」が『大辞泉』と大きく違っているのは2点。
相違点1)「動作の主体」を表わす働きがある
相違点2)「それぞれ」(「政治家によって主張は異なる」のような用法)がない

 すでに見たように、1)も2)も「にて」にも「で」にもできない。要するにほかの意味とちょっと違う。これを連語だけど特殊と考えるのがいいのか、連語と考えないほうがいいのかは、当方には判断できない。
 以上のことをまとめると下表のようになる。
 ただし、goo辞書は例によって文中の説明と判定表の相関性が不明。当方が勝手に補足している。

にて/によって

 さてと、疑問点が2つ残っている。
疑問点1)下記の「で」が「によって」にできない理由(goo辞書から)
  新聞紙で蜂をたたいた

疑問点2)下記の「で」が「によって」にできない理由
    (トピのコメント「9」から)
  台風で往生した
  雨で辛かった
  めったにない雪で嬉しかった
  事故の連続で人生の不幸を呪った

  理由は……当方には見当もつかない。これもすでに書いたように「で」のほうが用途が広い。上の「相違点1&2」の「によって」は連語か否かは別として、と にかく「で」にはできない。それ以外の「によって」は「で」にできる。しかし、「で」のなかには「によって」にできないものがあるってこと。
「で」と「にて」の関係も同様。「にて」は「で」にできるが、「で」のなかには「にて」にできないものがあるってこと。「で=にて」ではなく、「で⊃にて」(記号合ってるかな?)だろう。
 コメント「9」にあった「結果が誰かの感情に関する場合」か否かは不明。
『大辞泉』の「7」の例文「受験勉強で暇がない」「君のおかげで助かった」だとちょっと違うような……。
 当方の語感だと「にて」は書き言葉的だし、「によって」も「で」に比べて大仰。語感が働かないから、上の表の判定もヘンかもしれない。メンドーなことは考えたくないから、基本的に「で」を使う。日本語学習者はもっと厳密な使い分けをする必要があるのだろうか。

 蛇足ながら、トピ主は当方とのメッセージのやり取りに関してあれ以上ふれる気はないんだろうな。それならそれでしょうがないけど。どうやら余計なお節介をしたようだ。
「ご教授」に関しては〈1〉でリンクを張っている。それ以上の説明が必要なんだろうか。コメント「1」にも「教授と言われると二の足を踏む」とある。当方も同感。