日本語と朝鮮語の母音調和は同じだ!
和語における母音連続禁止法則及び「母音調和」
母音調和について、これまで誰も気が付いてはいないことを、ここで紹介する。
疑問点
① ヤ行は何故「ヤユヨ」だけなのか。「イ」と「エ」の欠落理由の説明が出来るか。
② ワ行の「ウ」が何故欠落しているのか。「ヰ」と「ヱ」が昔使われていたのに何故使われなくなったのか。
日本語の特徴は、「母音衝突の禁止」という鉄則を守るために、音節音図体系のネットの中で整然と母音調和を行っている。
体系は「ヤ行=ヤYa・〔イ〕・ユYu・エYe・ヨYo」 と 「「ワ行=ワWa・ヰWi・〔ウ〕・ヱWe・ヲWo」である。
「ヤ行」の全てに〔イ〕が介在し、「ワ行」の全てに〔ウ〕が介在して母音調和音を合成させている。
◎『ヤ行』は母音「イ・i」+母音「a・u・e・o」の合着による『母音調和音』である。
○「や=イ+ア=i+a=ya・母音調和・尖った主体=矢の形態」
意義の構造「い=射る形態・尖りの形態」+「あ=吾・主体」=「射る主体=矢・Ya」
○「ゆ=イ+ウ=i+u=yu・母音調和・尖って湾曲した形態=弓の形態」
意義の構造「い=射る形態・尖りの形態」+「う=屈曲した形態」
○「江=イ+エ=i+e=Ye・母音調和・尖って突き出た形態=弓に矢を番えて獲物を狙う形態」
意義構造「い=射る形態・尖りの形態」+「え=選ぶ形態」
○〔甲類〕「よ=イ+オ=i+o=yo・(母音調和)尖ったもので圧迫する形態〕」=「弱る・夜」
意義構造「い=射る形態・尖りの形態」+「お=押す形態・圧迫する形態」=「生命が危機的状況にある」。「夜」は太陽の存在しない、草木も眠る弱体化した形態。
◎ 『ワ行』は母音「ウ・u」+母音「a・i・e・o」の合着による『母音調和音』である。
○「わ=ウ+ア=u+a=wa・(母音調和)・屈曲した主体・人が両手を前で結んだ形態・輪・我の存在を示す形態」
意義構造「う=両手を前に屈曲した形態」+「あ=吾・主体」
○「ゐ=ウ+イ=u+i=wi(母音調和)・連続・猪の親子が連続する形態(猪の家族の移動の形態)」=「井戸・居座る・田舎・ゐなか(たゐ=田んぼが連続する形態)
意義構造「う=屈曲した形態」+「い=射る形態・尖りの形態」
○「ゑ=ウ+エ=u+e=we(母音調和)・屈曲して突き出す形態・吐く形態・崩れた形態」
意義構造「う=屈曲した形態」+「え=選ぶ形態」
○「を=ウ+オ=u+o=wo(母音調和)・雄・男の性的な形態・男根の形態」
意義構造「う=屈曲した形態」+「お=押す形態・圧迫する形態」。
音図の「行」で、空白の箇所に 先頭母音が位置づけられ、母音調和が行われていることを明示している。音義の関係も、前母音の意義と後続母音の意義とで、二者合一的に意味化され構造化されている。したがって厳密に言うならば、「ヤ行・ワ行」の各音節は「単音節」であるにもかかわらず、二つの意義素の合成で、二階層の独立語的な「意味の構造を持つ語」という側面を持つユニークな語である。だから単音節にもかかわらず名詞としての「意味構造」を持つ語が存在する。
ヤ 「矢」・ ユ「湯(揺らぐ形態)」・ エ「江・ 柄・枝」・ ヨ「夜」
ワ「輪」・ ヰ「猪・井」・ ヱ「絵・餌」・ ヲ「男・雄・緒・尾」
名古屋言葉の母音調和
三河言葉は名古屋とは全く異なる言語で江戸言葉の下地になった言葉である。今日でも東京の下町のベランメイ言葉を聴くと三河弁との距離が近いことがよくわかる。
名古屋言葉は「母音調和」の徹底した言語である。和語の最大の特徴である「母音連続禁止」の規則を頑固に遵守した個性在る言語である。「拗音」と評されている音韻は、「母音調和音」に他ならない。名古屋大学に金田一春彦氏が居られたが、このことにはお気づきになられなかった。
◎尾張言葉は、二つの母音を合着させて、徹底して母音調和音にする道を厳守する。
尾張地方以外の他府県の人にとっては、この母音調和音の発音は非常に難しく、習得は極めて困難である。名古屋弁の発音で「八母音説」があるが、そのご指摘は全く外れていると言わねばならない。古代日本語は「五母音」プラス「一合成母音(ヲ列・古語13音コソトノモヨロ)と言うことになり、「八母音説」は言語基盤の研究不足による言説であり、全くの誤りである。
「朝鮮語」の十七母音と日本語の五母音
日本語は古代から変化することなく「五母音」の言語である。八母音説は全くの誤りであることを後述した。
朝鮮語の音韻は以下であると説明されているが日本語と同じように母音調和言語であると考える。故に母音数は「アイウエオ」の五つである。
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十七母音図 a 日本語の「ア」と同じように発音 【ア】和語に同じ ya 日本語の「ヤ」と同じように発音 〔ヤ〕◎母音調和 和語に同じ eo 口を「ア」の形に空けて、「オ」の発音 ●母音調和 和語に無し yeo 口を「ヤ」の形に空けて、「ヨ」の発音 ●母音調和 和語に無し o 唇を少しまるめて、「オ」と発音 【オ】和語に同じ yo 唇を少しまるめて、「ヨ」と発音 〔ヨ〕◎母音調和 和語に同じ u 唇を突き出すようにして「ウ」と発音 【ウ】和語に同じ yu 日本語の「ユ」より唇をまるめて「ユ」と発音 ◎母音調和 和語にほぼ同じ ω 「イ」のように口を横にひいて、「ウ」と発音 ●母音調和 和語に無し i 日本語の「イ」と同じように発音 【イ】和語に同じ e 日本語の「エ」と同じように発音 【エ】和語に同じ ye 「イェ」と1音節で発音 〔枝・ヤ行のエ〕◎母音調和 和語に同じ wa 「ワ」と同じように発音 〔ワ〕◎母音調和 和語に同じ we 「ウェ」と1音節で発音 〔ヱ〕◎母音調和 和語に同じ wo 「ウォ」と1音節で発音 〔ヲ〕◎母音調和 和語に同じ wi 「ウィ」と1音節で発音 〔ヰ〕◎母音調和 和語に同じ wui 「ウィ」と発音。口を横にひいて「ウ」と発音してから「イ」●母音調和 和語に無し
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注・四個の ●印の「オヨウイ」は和語と微妙に異なる音であるが、母音調和音で純粋な母音ではない。この四個の意味の相違関係を意味文法解析法で探求すれば、朝鮮語の本質解明の糸口が発見できるかもしれない。これは「言語内探求」による規則性の発見という科学的なもので、思弁を用いない徹底した言語科学というデータサイエンスの手法のことである。
朝鮮語は日本語と同じ「ヤ行・ワ行」を有する言語で、これによって和語に近似の言語であることが判る。日本語でも関東・東北・九州・名古屋地方の方言と歴史的な文献記録のある近畿地方(奈良時代)の音韻との間には微妙な異なりがある。
短略的な音韻比較は避けるべきだが、隣国朝鮮の音韻体系が極めて日本語に近似であることは否定できない。朝鮮語の意味文法を明らかにするために、素語理論の手法を応用できる可能性はゼロではないと考えている。


