御用達は音子屋(ねこや)でどうぞ 参の語り | みけぬこの不思議なお話ブログ

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店のドアが開きますと、野原の匂いがしました。あと刹那の気が押し寄せましたので、
わたしは、少し身構えました。
人ではない、あきらかに 「あやかし」の気をはらむこの気配。
しかしなぜでしょう、晴れた日の野原の草のいい匂いと、山の萌える様な青い佇まいも
感じられるので す。こやつはなにものなのでしょう。
「あの・・・・」
と少年の声がします。まだ10(とお)は行かない童(わらべ)のようです。
「お ばけのお店でしょ。おばけのねこさんの・・・・・・」
わたし、まだ正体は知られていないはず、知っているのはお地蔵様だけなのに。
すると 続けてこういうのです。
「お地蔵様に、お話をしたらここに行くように言われたので・・・・・・・」
開けたドアの端から「チラッ」と顔が見 えました。
栗色の光る髪、黒目で瞳は青、大きな耳がついています。
「君は何者ですか。かくれていないで、こっちにおいで」
と、わ たしは声をかけました。
「あの・・・・腹ペコで・・・・術か解けそうで・・・・・」
声の主はドアの端から「ヌッ」と現れますと、コマ送り のようにゆっくりと
倒れながらその姿を一匹の狐の姿に変えました。
九尾の一族の子のようです。
しかし、なぜ?
あやかし一 族の頂点に立つ九尾の狐は、わたしのような「おばけ」とは
格が違い、たとえ子供であっても口すら聞いてもらえないはずなんですが。
よっぽ どの事情があるのでしょう。
「じゃまするぞ、猫之介」
また声がしてあらわれたのは、身なりのきちんとした
初老の紳士でした。
「お 地蔵・・・・様・・・・・」
その声に、耳の後ろの毛が「ぞぞぞ」と逆立ち、
わたしには、有り余るすごい事が起こる予感がしました。
耳 を三角にして目をつむり、日なたで過ごしたい気分です。
しかしそうも言ってられないことはわかってたんですけどね。