真言宗には、向上門と向下門という、大切な考え方があります。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、これはとてもあたたかい教えです。
向上門 ― 私たちが仏に近づいていく道、向上門とは、私たちが仏の境地へと向かっていく道のことです。怒りや迷い、悲しみを抱えながらも、手を合わせ、祈り、少しずつ心を整えていく。そうやって、本来私たちの内にある仏の心を思い出していく道です。
真言宗では「この身このままで仏になれる」と説きます。遠い未来の話ではなく、いま、ここから始まる道。それが向上門です。
向下門 ― 真言宗の教えは「あなたが頑張りなさい」だけではありません。
向下門とは、仏が私たちのもとへ降りてきてくださるはたらきのこと。
迷っているときも、立ち上がれないときも、仏の智慧と慈悲は、すでにこちらへ向かっている 。
祈る前から、仏は私たちを見捨てていない。それが向下門です。
ふたつは同時に起きている。
私たちが手を合わせるとき、それは向上門です 。けれど、その手を合わせようと思えたこと自体が、すでに向下門なのかもしれません。
私たちが一歩踏み出すとき、仏もまた一歩、こちらへ来てくださっている。
向上門と向下門は、別々の道ではなく、響き合うひとつの流れなのです。
祈りとは、自分が仏に近づく行いであると同時に、仏に抱かれていることに気づく時間なのかもしれません。

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