艦これ小説-提督が小説を投稿するようです!- -3ページ目

艦これ小説-提督が小説を投稿するようです!-

艦これの小説を投稿して行きまーす。
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はい、更新めっちゃ遅れましたw
でも代わりに今回からやっとお話が進むので楽しみにしていてください。あと、ツイッターとかでこのブログのことを広めてくれると嬉しかったりますw周りの提督さんにどうぞ紹介してみてください

【登場人物】
長門〈ながと〉:
日本海軍誇る超弩級戦艦。第二次世界大戦では日本海軍の象徴ともいえたものすごい強い戦艦。
ゲームないでもものすごい強さを誇っているので提督の皆さん躍起になって建造しようと日々資材を貯めています。「私が、戦艦長門だ。よろしく頼むぞ。敵戦艦との殴り合いなら任せておけ。」

駆逐イ級〈くちくいきゅう〉:
敵性の駆逐艦。ゲーム内では提督諸氏が初めて合う敵性艦でもある。提督レベルが上がっていくと会う機会がなくなっていくので古参提督にイ級というと懐かしがられる。

【本文】
「五月雨?こことここにサインしてここに指印であってるか?」

チャーハンのおいしそうな匂いがただよっている食堂に俺こと南雲の声が響く。

「はい、そうですね。そこに提督のサインと指印をしてくだされば書類は完成になります」
五月雨に確認をして慎重に書類にサインを書き込んでいく。

「……提督って結構達筆なんですね」
「そうか?そこまで達筆ってほどじゃないと思うんだけどな……」

再度自分の文字を眺めてみる。
……達筆というか汚いだけだなこりゃ……。

自分の文字など見なかったことにして書き終わった書類を五月雨に渡す。

「はい。書類の受け取り確認しました、少し待っていてくださいね……」
五月雨は書類を受け取り虚空を見つめ始めた。

「五月雨?」
「あ、提督すいません。ただいま本部との通信中なのでもう少し待っていてもらってもよろしいですか?」
通信って何も持っていないじゃないかと思っていると後ろから鳳翔さんが近づいてきて
「提督は私たちについてどれぐらい知っていますか?」
と聞いてきた。

「私たちって艦娘についてってことですか?」
「そうですね。あ、敬語じゃなくても結構ですよ提督のほうが上位士官なんですから」
「いえ、年上に敬語を使うのは常識ですよそちらこそお気になさらずに、それよりも艦娘について知っていることってどういうことですか?」

鳳翔さんがしばらく考えるような顔をした後
「そうですね、五月雨ちゃんも報告にしばらくかかるでしょう資料室へ行きましょうか」
大鳳さん、五月雨ちゃんに伝えておいてくださいと言い二人で椅子から立ち上がる。

「そもそも提督には私たちの敵、深海棲艦についてお話しておいたほうがよさそうですね」
資料室に向かう途中で鳳翔さがそう口を開いた。

「深海棲艦……沈んだ艦の怨念が艦の形をして襲ってくるってやつですか……」
ゲームだったころの知識を利用して(まぁ、公式ネタではないが)それっぽく言ってみる。

「……怨念、そうですねそういう噂も広まっています。ですが真相は闇の中まだ解明されていません」鳳翔さんが暗い顔でそういう

「深海棲艦の目的、出現場所、なぜ日本を攻撃するのか、そのすべてが謎に包まれています。私たち艦娘はそういった深海棲艦への対抗策として開発された『兵器』です。これから私たちについて資料を見せながら説明いたします」
「『兵器』……」
鳳翔の話を聞いているといつの間にか目的の部屋に付いたようで扉をくぐり資料室に入る。

「さて、それでは深海棲艦については私から説明できることは以上なので今度は私たちについての説明ですね」
鳳翔が棚から一つの紙束を取り出し机に置く。

「こちらを見てください」

紙束の表紙には「生体兵器『艦娘』建造計画」と書いてあった。

「これは?」
「これは私たちの作られた目的、運用方法が書いてある私たちについてのマニュアルです、このように私たちの武装、作戦要項その他いろいろなことが書いてあります」

試しに一ページ目をめくってみると作戦要項、つまり陣形のことについてや遠征任務のことについて書いてあった。

「とりあえずこのページからこのページにかけてこの鎮守府に所属している艦娘の詳細が書かれていますので読んでみてください」

鳳翔がめくったページにはそれぞれの艦娘の名前、写真、武装、さらには実戦経験の有無まで書いてあった。

「あれ?」
資料を見ているとある部分がほとんどの艦娘で共通していた。

「……鳳翔さん、これを見る限りだと実戦経験がある艦娘って鳳翔さんと長門しかいないんですけどこれはどういう?」

鳳翔は少し困った表情をした後口を開き
「それは……この鎮守府が戦績のない、つまりほかの鎮守府で用済みと判断された艦が集められているからですね」
そのまま続けて鳳翔がこの鎮守府の現状について話してくれた。

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「……以上のことが原因でこの鎮守府の戦略的価値もなくなったのでしょう。基本、深海棲艦も意味のない場所は襲わないようですから必然的に戦績も低下、今となっては私たちのような価値のない艦たちが集められる場所となっているという感じですね」
「価値のない艦だなんてそんなこと……安心してください、俺がこの鎮守府を以前のようににぎやかな鎮守府に戻してあげますから」

俺の言葉で鳳翔はしばしこちらを見た後微笑んで
「……そうですか、ふふ、よろしくお願いしますね。提督♪」
その笑顔に少しドギマギしてしまいそれをごまかすために早くいきましょうと食堂に向かうおうとする。

「ッ……!提督!」
突如鳳翔が焦った様子でこちらに寄ってくる。

カンカンカン!!!!!!カンカンカン!!!!!!
どうしたんですか?と聞く前に突如鎮守府内に鳴り響く警鐘がなり始めた。

「な、なんですかこれはっ!」
とっさに鳳翔のほうを見ると向こうもこちらが理解していないのを理解したのだろうすぐに答えてくれた。
「これは緊急時の警鐘、しかも三回鳴らすのが二回ということは敵襲です!」

鳳翔がそう言ってすぐに鎮守府内に五月雨の声が響き渡る。

『鎮守府近海にて敵性艦を確認!鎮守府内の艦娘は至急作戦会議室に集合してください!』

「敵襲ってここは戦略的価値はないんじゃないんですか?!」
鳳翔にそういってみるが実際にこうして敵襲があるのだから向こうからしたらなんらかの価値があるのだろう。
鳳翔も同じような考えらしく
「わかりません!しかし実際問題こうして敵性艦の出現が確認されていますし……!とりあえず作戦会議室に急ぎましょう!」
そういってきた。

とりあえず作戦会議室にいかないといけないというはわかっていたので二人で走り出す。

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作戦会議室につくと異様な雰囲気だった。

「あ、提督!」

鳳翔と一緒に部屋に入るとすぐさま五月雨が寄ってきた。
とりあえず状況の確認が最優先と判断し五月雨から現状の詳細を聞く。

「……つまり所属不明の駆逐艦が一隻、鎮守府近海に現れたってことだな?それでその艦の識別パターンから敵性艦と判断。現状に至るということか……」
「はい、しかし相手の目的も分からずこのまま放置しようにも後続がいた場合この鎮守府にある現状の装備ではおそらく駆逐艦数隻で限度かと……、もし相手が戦艦などを連れてきた場合この鎮守府は……」

五月雨のその言葉に部屋の中に緊張が走る。

「そうか……」

とりあえず現状を整理する。
現在の敵性艦は一隻の駆逐艦のみ。
しかし先発の偵察隊の可能性が大きく後続に戦艦などの強力な艦がいた場合今のうちにそれを迎撃するだけの装備、艦娘はいない。
だからと言ってこのまま偵察艦を放置するのも結局後続の艦を呼びよせることになるのでアウト。
一応、ここには戦艦、空母、軽巡とそれなりの戦力はそろっているが実戦経験者は二名のみ。

「提督……」

五月雨がこちらを見つめてくる。
こちらも五月雨を見つめ返し覚悟を決める。

「これより敵性艦んの迎撃作戦を敢行する」

誰かの息をのむ声が聞こえる。

「ふっ……作戦でもあるのか?」
後ろからそういわれたので見てみるとそこには今回の作戦の要、戦艦長門がいた。

「あぁ、今回は相手のバックがわからないから保険として二方面作戦を展開することにする」
「ほう?二方面とはずいぶん大げさだな。面白そうだ、説明してみせろ」
長門が俺の言葉に興味を持ちこちらの机に寄ってくる。

「よし、これより作戦を発表する。みんなこっちに集まってくれ」

俺の言葉で大鳳以外のみんなが作戦机のそばに寄ってくる。

「今、長門にも説明したが今回は二方面作戦、つまり鎮守府内に侵入してきた敵性艦と後続の敵性艦がいるであろう海域の二つに同時展開をさせようと思っている」
部屋の中の艦娘全員が集中して話を聞いているのがわかった。

「まず、現在侵入してきている敵性艦だがとりあえずこれを駆逐イ級と呼称することにする。それでだがこいつには第六駆逐艦隊の暁、響、雷、電を当てようと思う」
暁たちの緊張が高まったのがわかった。

「暁、お前には旗艦を務めてもらおうと思う。できるか?」
暁のほうを向き目を見ながらそう聞く。
暁は緊張からか武者震いをし答える。
「わかったわ!暁の出番ね!見てなさい!」
その頼もしい返事を受けほかの三人も次々にこちらを見てうなずいてくれる。
「それじゃぁ、その四人は先に装備を整えてきてくれ」
「わかったわ!行くわよみんな!」
暁たちはそう言って部屋を出ていく。

「次に後続敵性艦の相手だが、こちらは主に偵察が重要になると思うから空母を中心に言ってもらおうと思う」
その言葉に龍驤と鳳翔が前に出てくる。

「実戦ですか……致し方ありませんね」
と鳳翔。
「鳳翔さんもそういいながら久々の実戦で興奮してるくせに~まぁ、うちがいるからこれが主力艦隊なんやろ?久々にがんばるで~!」
鳳翔に続き龍驤も気合い十分のようだ。

「あぁ、二人ともよろしく頼む、それで二人の護衛には長門お前にやってもらおうと思うが大丈夫か?」
「いいだろう、敵戦艦と殴り合いなら任せておけ」
俺の発言に対してふっと笑いそう答える長門。

「それとこっちの旗艦だが五月雨、お前に任せたいんだが大丈夫か?」
「お任せください!精いっぱい頑張ります!」
五月雨も気合いは十分みたいだ。

「おい!俺たちはどうするんだよ!」
そこまで発表したところで天龍が声を荒げて詰め寄ってきた。

「ま、まて天龍!別にお前を忘れてたわけじゃないんだって!」
詰め寄ってきたときの気迫におされ少しビビってしまう。

「天龍、龍田の両名には作戦対象以外が作戦海域に侵入しないようにあたりを警戒しておいてもらいたいんだ」
「あん?警戒だぁ?ふざけるな!俺に夜戦をさせろ!」
天龍がそう詰め寄ってくる。

「あらぁ~天龍ちゃん?ようは作戦海域に入ってきた輩には勝手に攻撃をしていって言われてるんだけどそれでもだめなのかしら?」
見かねたのか龍田が天龍の気をそらしてくれた。

「……どういうことだよ龍田」
「だからね?偵察にでてる艦が一隻なわけないからそれらの発見、駆逐をお願いされてるのよ~、ね?提督さん」
いきなり龍田に話を振られて少しどもってしまう。

「お、おう。そういうことだ。天龍、お前にしかできないことだ。頼めるか?」

少しの間迷った様子を見せたあと天龍はうなずいた。

「わかった、そうと決めれば善は急げだ!行くぞ龍田!」
「あらぁ~天龍ちゃんまって~」

去り際にひとこと龍田に礼を入れておくと
「帰ってきたらお願い事一つかしらね♡」
と言われてしまった。
どんなことをお願いされるのかと少し怖かったが今はそれどこれではないので咳払いを一つ入れ号令をかける。

「よしそれでは作戦開始時間はこれより20分後とする!解散!」
「「「了解!」」」

みんなが出て行った会議室に俺とまるゆと大鳳が残る。

「まるゆ非番だったのに召集をかけちゃったみたいで悪かったな。戻って休んでてくれ」
「いえ!私もみなさんの戦う姿が気になるのでここにいさせてもらいます!」
「そうか?ならゆっくりしててくれ」
まるゆが椅子に腰かけるのを確認して端にいる大鳳のほうに近づく。

「大鳳、悪いなできればお前にも作戦に参加してほしかったんだが……」
そう謝ろうとしたが向こうも分かっているのか最後までこちらの言葉を言わせずに答える。
「提督大丈夫、そこについては理解しているわ。まだここに来たばっかりの私ではみんなとうまく連携が取れない可能性がある、そういうことでしょ?」
「わかってくれていたようで助かるよ。お前はこの後どうする?」
「私もここで見ていくことにするわ、もし打ち残しがあったら私だけでもでないといけないだろうしね……」
椅子に座りながら足をぶらぶらさせているまるゆを見ながらそう答える大鳳。
「そうか、それじゃぁ少しみんなの様子を見てくるから何かあったら無線で呼んでくれ」
ここ来る前に鳳翔に渡された腰につけている無線を叩きながらそう言って部屋をでた。

案内はされなかったが地図にドックは寮の奥と書いてあったので寮に向けて歩いていく。

「ここか?」
寮につき奥まで進むと一番から四番まで書いてある扉が横に並んでいたのでとりあえず一番の扉をノックして入る。

「……え?」
一番の扉に入ると目の前に肌色の服装をした五月雨と目があった。
しかし、よく見るとそれは服ではなく肌そのもので目があっている五月雨の顔が徐々に赤く染まっていく。
「……てい、と、く?」
「んなっ!す、すまん!まさか着替えてるだなんて思わなくてっ……!」
「きゃぁぁ!いいから早く出て行ってください!」
「ふぐぉっ!!」
五月雨の手のひらが顔面に飛んできて後ろの開いている扉から外に向かって吹っ飛ばされる。
扉が閉まる音が聞こえたので痛む頬を抑えながら眩む視界を見ながらなんとか扉によりかかる。

「そ、そのすまん五月雨。まさか艤装をつけるのに着替えるとは思わなくて……」
俺の言葉に扉の向こうから声の代わりに衣擦れの音がしその後扉によりかかる音が聞こえた。

「……その、みました?」
「いや、その……すまん」
その答えに扉の向こう側からこちらを叩くような軽い衝撃が来るのを背中で感じる。
「……悪い、でも五月雨たちの様子がどうしても気になって……」
それでも言い訳がましくしゃべっていると
「提督、艤装の装備が完了したのでどうぞ」
と聞こえた。
「お、おう」
さすがにないだろうが先ほどの過ちから学習しゆっくりと扉を開く。

中に入るとこちらに背を向けている五月雨がいた。

「その、さっきはすまん」

そう謝ったがこちらを振り向かない五月雨。
この後には作戦が控えてるのでさすがにこのような状態で出撃させるのはまずいと思い何とか許してもらおうといろいろ考え、結局許してもらえるまで頭を下げることにした。

「五月雨この通りだ、本当にすまなかった」

頭を下げると数秒の間のあとにこっちを振り向く気配がした。
「もういいですよ提督、頭を上げてください」

そういわれたので頭を上げると艤装を装備した少し怒った表情の五月雨が目に入ってきた。

「私たち艦娘は艤装を装備するとき一旦服を全部脱がなければいけないんです。知らなかったということで今回は許しますけど次やったら憲兵さんを呼びますからね……」
「あ、あぁ……わかってる。絶対にしない、ここに誓うよ」

俺の回答に満足したのか五月雨は怒った表情を崩し近くにあった椅子に座る。

「……その、提督、私大丈夫でしょうか?」
座った五月雨がそう聞いてくる。

「……大丈夫。そっちには鳳翔さんたちもいるし五月雨の近くには長門もいる。五月雨に攻撃が当たることはないよ」
「そうじゃなくて!私なんかが旗艦としての役割を果たせるのでしょうかっ?!実践経験があるわけでも龍驤さんみたいに火力があるわけでもないのに……」

最初は顔をあげて勢いよくしゃべっていた五月雨も最後の方には下を向きぼそぼそとした喋りに変わってしまった。
俺はそんな五月雨にしてやれることはと考え、近づき頭を胸に抱いてやった。

「え、あ……」
「大丈夫、五月雨、お前は優秀な子だよ。俺が来るまでの鎮守府をサポートがあったとはいえ一人で管理してたんだ。大丈夫、その能力はきっといや、絶対に戦場でも役に立つよ。だから自信をもって、な?」
「提督……その、もう少しこのまま抱いてもらっていてもいいですか?」
「あぁ、それぐらいお安い御用だ」
「ありがとうございます……」

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ピピピピピピピピ
腕に付けた時計が鳴り響いた。
「よし、時間だな。五月雨大丈夫か?」
「はい!もう大丈夫です。お任せください!」
さっきまでのしおらしさが嘘のように元気にうなずく五月雨。

「それじゃぁ俺は作戦会議室にもどるな?作戦はさっき話した通りだけど、俺は先に暁たちの指揮をとらなきゃいけない、そっちが終わるまでは基本五月雨の判断に任せる、よろしく頼むぞ」
「了解です、五月雨抜錨します!」

五月雨はそう意気込みドックの開放口、つまり海側のシャッターを開け外に出た。

五月雨が海に出たことを確認して俺も作戦会議室に戻る。

作戦会議室に戻るとそこには既にスクリーンが展開されてそのスクリーンには大海原が表示されているところだった。

あらかじめ五月雨と鳳翔から受けておいたレクチャー通りに目の前に置いたマイクに向けて声をかける。

「あー、こちら南雲。暁聞こえるか?」
『問題ないわ!いつでも出れるわよ!』
部屋に暁の声が聞こえその後スクリーンに水上に浮かんでいる響と雷、電が映りこんだ。

「よし、それじゃぁ現時刻をもって作戦を開始する。目標はそこから零時方向、距離約20kmの駆逐艦一隻、艦隊出撃!」
『了解、暁抜錨するわ!』

スクリーンに映った暁の視界が徐々に加速していくのを見て座っている机の一部が開いて出てきた画面で暁、響、雷、電の装備を確認し開戦後の作戦を練る。

「いいか?敵艦に接触後暁、響は正面から砲撃、敵艦が暁たちに応戦してる間に雷、電は両側から回り込んで近づき次第雷撃戦に移行。暁は雷撃戦中に退路の確保、響は敵艦が撤退しようとしたところをとどめという作戦で行く。何か質問はあるか?」
そう暁に聞く。
少しの間ほかのメンバーとの会話が聞こえた後異議ないわ!と元気のよい返事が返ってきた。
ここまで自信満々なのも日ごろ特訓のおかげか、それとも単純に性格の問題か?と考えながら会敵までの時間を図る。

会敵予想時間まで残り30秒というところで暁たちに声をかける。

「残り30秒で会敵予想時間だ。落ち着いてやれば被弾することなく終わらせるはずだ、頑張れよ」
『わかってるわよ!こういう時こそレディーは落ち着いてしっかりと役割こなすものよ!私だって立派なレディーなんだからできるに決まってるわ!』
そう答えた瞬間に数メートル先を走っていた響が叫んだ。

『5km先に駆逐イ級を視認!これより戦闘にはいる!』
『雷!電!作戦通りやるわよ!』
『了解!電!そっちは頼んだわよ!』
『了解なのです!』
そういって左右に展開する雷と電。

『響!私とスピードを合わせて!いい?合図で主砲を打ち込むわよ!』
『わかった!暁、いくよ!』
上からみたらちょうど移動した線が三つ又の矛のようになるように動く四人。

『残り5km!向こうも気づいたみたいだよ!暁気をつけてね!』
『わかってるわよ!響の方こそあたるんじゃないわよ!』

砲雷戦に備え徐々にスピードを上げていく二人。

『カウントスタート!10、9、8……』 

その場にいないとはいえ十分な緊張感で汗が出てくる。
スクリーンから目が離せなった。

『……3、2、1、発射!』
暁の合図で二人同時に構えた砲の引き金を引く。

音量が調整されているとはいえ、それでも十分に大音量な砲撃音が部屋に響き渡る。

『響!続けていくわよ!あと10秒間砲撃を行ったら次のフェイズに移行ね!』
暁が12.7cm連装砲を打ちながら叫ぶ。

それに響はうなずき今まで直線だった動きを今度はS字を描くようにグネグネとした蛇行に切り替える。

そして向こうもそれに反応しこちらに砲撃を行ってくる。
相手の砲弾が近くに着弾し水柱が立つ。

『くっ!このやったわね!やぁ!』
お返しとばかりに砲を打ち返す暁。

「暁!そろそろ十秒だ!雷たちの邪魔になるから砲撃を中止しろ!」
残り一秒になっても砲撃をやめないので心配になってそうマイクに叫んでしまう。
『わかってるわよ!でもぎりぎりまで打ってないと雷たちに気が付いちゃうでしょ!』
『暁!次のフェイズに移るよ!』
『わかってるってば!響とどめは任せたわよ!』

そういって後ろに下がる暁と響。

『ってー!』
『なのです!』
そして二人と入れ替わりにイ級に肉薄する雷と電。
イ級の真下から立ち上がる水柱を確認し雷撃戦が成功したことを確認する二人。

『響!そっちにいったよ!』
雷が響にそう伝える。

駆逐イ級は響に気付いて進路を変更するが時すでに遅し。

『遅いよ。Урааааа!』
響がしっかりと照準をあわせ魚雷を発射する。

ドガン‼‼

今度こそ装甲が耐えられなったのかイ級内の魚雷に引火でもしたのか明らかに先ほどまでとは違う高さの水柱を立ててイ急の姿が消えた。

『や、やったのです……か?』
電のつぶやきが聞こえる。

『そうよ!勝ったのよ!まぁ、どう考えても暁たちが一番だったってことね!』
みんなに近づいた暁がそう勝鬨の声を上げる。
『勝利か……いい響きだな、嫌いじゃない』
『ふっふ~ん、この雷様に勝てるとでも思ったのかしら。ねぇ、司令官?……あれ?きいてる?』
みんなが暁に続いて勝利の言葉を並べる中俺は電の様子がおかしいことに気づいた。
「電、どうかしたのか?まさか、被弾したのか?!」
『ち、違うのです!ただ……』

どうやら被弾したわけではないようだった。何かと思い電の次の言葉を待つ。

『その、ただ……戦争には勝ちたいけど、相手の命も助けたいなって……向こうにだって命はあるわけだし……やっぱりおかしいですか?』

その言葉に勝利に浮かれていた頭が急速に冷えていくのがわかった。
『……電、よく聞くのよ相手を倒さなきゃ自分たちが沈められる。それが戦争なの、残念だけどそれは無理よ……』
暁が電に現実を突きつける。

『でも……!沈んだ敵でも……できれば助けたいのです……』
「電……」

「電、暁と同じことを言うようだけど今のあなたには無理よ」
突如隣で黙っていた大鳳がそういった。

「おい大鳳、今そんなこと言ったら電だって疲れてるんだぞ」
「提督、悪いけど黙っててほしいな。電、よく聞いて。『今の』あなたには無理って言ったの、あなたのその力加減のできていない力じゃね」
下を向いていた電が顔を上げて大鳳を見る。

「強くなりなさい電。強くなって相手のことを見極めることができるようになればおのずと力加減もできるようになってギリギリのところで生かすことができるようになるわ」
『大鳳さん……』
「それがわかったら明日から鍛えてあげるから気をつけて帰ってきなさい。戻ってくるまでが作戦よ」
『わ、わかったのです!』
電はそう言ってみんなにごめんと頭をさげた。

「……大鳳、お前すごいな」
素直な感想だった。
「いえ、これも先輩の受け売りですよ。私が考えた言葉じゃないです」
大鳳はそう遠い目をしていった。
「そうか……ありがとうな大鳳。これからも頼りにしてるよ」
「えぇ、この大鳳。あなたを勝利に導くのに力を惜しむことはしないわ」

そんなこんなで暁たちがこちらに帰るのを確認しスクリーンを切り俺は次の戦場に備えて覚悟を新たにするのであった。