はじまり8 | GO TO FARM! (牧場へ行こう)~牧場物語 ミネラルタウンストーリーズ~

はじまり8

「え、本当に、上手くいったんですか!?」

「なんだよ、自分がやっといたくせして」

グレイは呆れつつも、結果オーライということでさすがに笑みが零れてしまう。「ありがとう。お陰で、俺の願いが叶ったよ」

「どういたしまして」

クリフも笑顔で答える。「ボクとしても嬉しいですよ」

「それじゃ、俺、これから用があるから」

このミネラルタウンに住むことが決まったクレアを、ピートと共に案内することになっていたのだ。うきうき気分で踵を返したグレイの耳に、

「…れで…他の術も…かも…」

と、クリフの呟きが途切れ途切れに聞こえた。

 浮かれていたグレイは、特にそれを気に留めることもなく―部屋を出た。


 ローズ広場のベンチに座っていた彼女が、黄金の髪をふわりと揺らして立ち上がる。

「あ、グレイ。こっち」

「ごめん、遅くなって」

クレアはブルーのカットソーにチェックのスカートといういでたちだ。いつも病院服姿しか見ていなかったグレイにとって、今の彼女は本当にまぶしいくらい明るく、健康美そのものだ。それと同時に彼女が健康になったこと、そしてここで暮らすことになったことに対する幸せを改めて噛み締めていた。

「あ、それ、今日も、身につけてくれてるんだ―」

「うん、そう。これ、すごく素敵だから気に入っちゃって」

濃いブルーのカットソーの上、控えめに輝くアクアマリンのシルバーペンダント。

 が。

「そ、そっか」

心底嬉しい気持ちとは裏腹に、口をついて出てくるのはただその言葉だけ。帽子のつばを掴むとそのまま手繰り寄せ、顔を半分隠してしまう。

(そのペンダントよりも、君のほうが輝いて見える…とか、言えないよなぁ)

(…カイなら、言えんのかな…)

 そんなグレイに優しく微笑みを向けていたクレアだったが、ふと、

「―ピート、遅いね?」

「ああ、あいつはいつも待ち合わせに遅れて来るんだよ」

苦笑してグレイは答える。それは事実だった。あいつとの待ち合わせ、苛立ちながら待ったことがどれほどあったことか―もっとも今日は、それがグレイにとって実にハッピーな結果をもたらしているのだが。

(なんせ、クレアさんと二人きりなんだもんな)

「牧場が忙しいのかもしれないわね」

クレアはクスクス笑って、「えっと、グレイは、時間大丈夫?」

「ああ」

「それなら、気長に待ちましょう」