皆様こんばんは、セバスチャンです。
ずいぶんと久方ぶりに更新いたしますが、
皆様、体調等崩されてはおりませんか?
夏場は猫でも暑いもの。
水分はちゃんと補給しましょう。
さて、何の話をしましょうか。
マスターはネタがないと唸っておりますが、
私もそれほど話題を用意しているわけではない。
そういえば、最近は夜晴れることが多く、
月が綺麗に見えますね……。
ああ、そういえば月で思い出しました。
皆様は黒猫の影が一人歩きをする、
という話を聞いたことがございますか?
猫たちの間で実しやかに噂される伝説みたいなものです。
――ある満月の晩。
一匹の黒猫が月見に散歩へ出かけたそうです。
その日は普段の月よりもさらに大きく、明るく見えました。
月光は昼間の太陽の背景をそのまま黒く染めたように眩く、
けれど太陽にはないやわらかさを湛えていました。
黒猫のつやつやの毛並みは月光に照らされて、
より一層黒い毛色をきらきらと輝かせます。
満月を写し取ったかのような琥珀の瞳はまん丸で、
同じ形をした空に浮かぶ天窓を見上げていました。
しかしどうにも感じる違和感。
ここにいるのにいないような、妙に体が軽いような、
そんな違和を黒猫は感じたのです。
けれど特に気にする様子もなく、
黒猫は絶好の月見場所である小高い丘へと上りました。
自分の家のある小さな街を一望できる場所。
風が勢いよく駆け上がってきて、黒猫の長いヒゲを揺らします。
今夜は自分ただ一人。ほかに猫たちはいません。
優越感に浸りながらも、腰を落ち着けようとその場に腰をおろした時です。
黒猫は、自身の違和感の正体に気づきました。
視線を下ろした草原には、なんと自分の影がなかったのです。
慌てた黒猫は辺りを見渡しました。
すると街の方へと駆け下りていく黒い存在を見つけました。
楽しげに転がるように、跳ねるようにそれは街へと下りていきます。
自分によく似た、影でした。
影といっても平面ではなく、遠めに見れば黒猫かと見紛うほどそれは立体で、
狼狽える黒猫も一瞬気づかないほどだったそうです。
自身の影を見つけた黒猫は、急いでそれを追いかけました。
もちろんそれに気づいた影は逃げ回ります。
走る速さは自分とほぼ同じ。
とうとう捕まえることが出来ず、朝焼けの時間帯。
影は息を切らせる黒猫に振り返ると、
寂しそうな顔をして陽の光にのまれて静かに消えていったそうです――。
というお話なのですが。
影猫は、きっと自由が欲しかったんでしょうね。
いつも自分は主の足元で伸びているだけ。
なにをするにも物真似だけ。
きっと自由を気ままに謳歌したかったんだと私は思います。
そうそう、この話には後日談がありまして。
それ以降、黒猫の影は満月の晩になると決まって一人歩きをするようになったそうです。
主に追いかけられ、また追いかけ返し。
そうして二人は満月の番を朝まで楽しむようになったと云われています。
皆様も満月の晩、黒猫を見つけたら、
影を見てみるのも面白いかもしれません。
もしかしたら、影がどこにも見当たらない子がいるかもしれませんよ?
と、いうことで今日の一曲です。
☆LUNA SEA様で
『MOON』
それでは。
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