二人の間には、ほかにもいろいろと雑談が交わされました。――

 守護霊「家屋の造りが大変違いますね・・・・・・。」
 僕「時代が違うから、家屋の造りだって違います。」
 守護霊「たったお一人でさびしくはありませんか?」
 僕「別段さびしくもありません。僕はいろいろの趣味をもっていますから・・・・・。現にここに懸けてあるのは僕の描いた絵です。」
 守護霊「まあ、この絵をあなたがお描きなすったのですって?こちらへ来てから描いたのですか?」
 僕「そうです。これが一番よく描けたので大切に保存してあるのです………。」
 僕が自慢すると守護霊さんは、じっと僕の絵を見つめていましたよ……・・。

 大体上に記したところが、新樹によって通信された会見の顛末でした。私が直接会見の実況を目撃して書いたのでなく、当事者の一人である新樹からの通信を間接に伝えるのですから、いささか物足りないところもありますが、しかしこれは、こうした仕事の性質上致し方がありません。それで、幾分でもこの不備を補えるように、つぎに彼の母の守護霊との間に行われた問答をあげておくことに致します。これは新樹が退いてからすぐその後で行われたものです。

 問「ただ今子供から通信を受けましたが、あなたが新樹を訪問されたのは今回が最初ですか?」
 答「そうでございます。私はこれまで一度も子供を訪ねたことはございません。」
 問「あなた方も、時々は他所へおでかけになられる場合がおありですか?」
 答「それはございます。修行する場合は他所へ出掛けもいたします。もっとも、たいていの仕事はじっと座ったままで用が足せます・・・・・・。」
 問「今日のご訪問のご感想は?」
 答「ちょっと勝手が違うので奇妙に感じました。第一、家屋の造りが私たちの考えているのとは大変相違していましたので゙・・・・・・」
 問「あなたは先程しきりに子供の名前を訊かれたそうで・・・・・・・。」
 答「私、今までは、あの子の名前を呼びませんでした。私たちには、心でただあの子を思えばすぐ通じますので、名前の必要はないのです。しかし今日は念のためにはっきり聞かせて貰いました。シンジュと申すのですね。昔の人の名前とは違って、あくどくなくて大へん結構だと思いました。」
 問「あなたは、あの子をやはり、ご自分の子のように感じますか?」
 答「さあ………じかに逢わないといくらか感じが薄い気がいたします。けれども、今日初めて訪ねて行って、逢ってみると、大変にどうも立派な子供で………私も心から悲しくなりました。どうしてまあ、こういう子供を神さまがこちらの世界にお引き寄せなさいましたかと、口にこそ出さなかったものの、随分ひどいことだと思いまして、その時には神さまをお怨みいたしました。――私から見ると、子供はまだ執着がすっかり取りきれてはいないようでございます。あの子供は元来陽気らしい性質ですから、口では少しも愚痴を申しはしませんが、しかし、心の中ではやはり時には家のことを思い出しているようでございます。私は子供に、自分の経験したことを物語り、自分も悲しかつたからあなたもやはりそうであらう。しかしこればかりは致し方がないから早くあきらめる工夫をしなければいけないと申しますと、子供も大へん喜びまして、涙をこぼしました。涙の出るのも当分無理はないと思います。自分にちっとも死ぬ気はなかったのですから………。私は別れる時に、もしわからないで困ることがあったら、遠慮せず私に相談をかけるがよい。私の力に及ぶかぎりは教えてあげるからと言っておきました………。」
 問「この次は一つ、あなたのお住居へ子供を招いていただけませんか?」
 答「おやすいことでございます。もっとも住居と申しましても、私の居る所は狭いお宮の中で、他所の方をお招きするのにはあまりふさわしくありません。どこか、あの子の好きそうな所を見つけましょう。心にそう思えば、私たちにはどんな場所でも造れますから・・・・・・・。」