安倍晴明は特に有名で、天文・暦法・占術をはじめ呪術・祭祀などにも通じ、長く宮中にお いて活躍したと言われていますが、この清明が香川県で生まれたとする説があります。 『讃岐国大日記』には、「清明は讃岐国香東郡井原庄で生まれた。」とあり、丸亀藩の公撰 地誌である『西讃付誌』には「讃岐国香川郡由佐の生まれ」と記されているのです。どちらも 現在の香川県高松市香南町、香川町のあたりです。 由佐の冠櫻神社に伝わる文書には「代々、安倍晴明の子孫が宮司を務めた。」と記されて いて、境内には安倍晴明神社もあります。 そして、この安倍晴明が善通寺を訪れたとする記録もあります。それは「今昔物語集」に伝 わるもので、次のような内容です。『讃岐を訪れた清明が、暗い夜道を式神(しきがみ:陰陽師 が使役する鬼神)に松明を持たせて歩いていました。ちょうど善通寺の門の前を通りかかった 時、式神の姿が見えなくなりました。しばらくして式神が姿を表したので、清明が理由を聞くと、 式神が「ここには空海が書いた山門の額があるが、その霊験のため姿を現せなかったので す。」と言いました。』 空海の法力や安倍晴明の呪術が同時に記された興味深いお話しです。同じ平安時代に活 躍した菅原道真も陰陽道などの呪術に精通していたことが知られていますが、道真は讃岐の 守 ( 国 司 の 長 官 = 今 の 県 知 事 ) を 4 年 間 勤 め て い ま す 。 - 平安時代を代表するこれらの霊験あらたかな偉人 3 人が、ほぼ同時期に讃岐(香川県)に 関わっていたことは興味深い事実です。 ◆空 海 774 年 ~835 年 4 月 22 日 ◆菅原道真 845 年 6 月 25 日~903 年 2 月 25 日 空海没後 10 年で誕生 ◆安倍晴明 921 年 1 月 11 日~1005 年 10 月 31 日 道真没後 18 年で誕生