5月も終わりに近づき玄関先に植えてあるバラが見頃を迎えた。今年も美しい花とそこに漂う豊潤な香りで家族を楽しませてくれている。
 この季節、楓や紅葉の葉も急速に大きくなり、そこに野鳥が巣をつくる。今年は初めて「オナガ」の巣を発見した。やけに最近「ギィギィギィー」と近くで鳴き声がするはずである。オナガとは、調べてみるとカラス科に属するとのこと。カラスが黒の単色に対して、彼らの姿は頭に黒のベレーボーを被り、白のタキシードを纏いそこから優雅な青く長い尾を覗かせている。何とも洒落た鳥である。



 1歳半になる孫にも見せたくて庭を散歩するのだが、大きな頭を小さな身体に乗せて、たどたどしく歩いている孫には、中々空を見上げることはできない。でもその分、色々な形の小石や草や小さな花、ダンゴムシをよく発見する。その度にまだ言葉にならないが「アー」と声を出し指で指して教えてくれる。そして、地面に腰を下ろし土や花も草も虫にも触れる。彼女の見る新たな世界は、彼女が生まれてくるはるか前から、ずっとあり続けた世界。その世界は今彼女がくり出す行為に、鮮やかな意味を返して応答してくれている。
 以前読んだ本のことを思いだした。コーヒースプーン一杯の土には、50憶のバクテリアがいる。人間の脳の神経細胞の数は100億なので、二杯分の土は脳と同じくらい複雑な処理をしてもおかしくはない。土は大気の循環を支え、植物の生長を促しているのである。未だに、人間の力で土をつくることはできない。と書かれてあった。何気なく暮らしている足もとには、想像もつかない複雑な世界がある。自然は、計り知れない不思議と驚きに満ち満ちている。そんなことを孫と歩く小さな庭から気づかされる。



 本当に大切で価値のあるものは、既にすべての人に与えられているのかもしれない。だから、我々人間は、あれも欲しいこれも欲しいと求め奪うことばかりではなく、もしこの自然を失ったら、大切なものを失ってしまったらと想像する思考が必要なのだろう。
 今朝、つがいである二羽に幼鳥の小さな二羽が加わって屋根に並んでとまっていた。さらに調べると、オナガは「幸運を運ぶ鳥」として知られていて、日常的に見られる鳥ではなくオナガを見かけること自体が珍しく、「滅多にない出来事=特別な幸運の兆し」として解釈されることが多い。と書かれてあった。
 なんだか嬉しくなってきた。