土俵空穂(どひょううつぼ)靫 | KenさんのBLOGS

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japaneseweaponsさんの所で日置(へき)流伝書が紹介されていて,土俵空穂の記事がありました。
矢入れ道具の空穂・靫・羽壺・うつぼについては私も何度か記事にしていました。

通常のうつぼは腰に横につけて十数本の矢を入れて持ち運びます。
鏃から羽根までもすっぽり覆われ,矢が雨などに濡れない様になっています。

写真は以前紹介したイタリアフィレンツェの「stibbert博物館」で所蔵されているうつぼです。

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右が通常のうつぼで,左が土俵(弩俵)空穂(どひょううつぼ)です。
土俵空穂は,沢山の矢が入れられる大型のうつぼの事です。
金土俵なんて言われてますね。
上部の籠編みの部分が相撲の土俵を作る俵に似ているからだと云われますが。弩は大弓ともいわれ,大きなという意味で使われます。弩級戦艦、超弩級とは 並はずれて大きい等級、またはレベルの事を云います。
従って大きな俵のついたうつぼ,または大型のうつぼという意味で「弩俵空穂」が正しい様な気がします?

「日置正流武射術 射形の図」(日本武道全集)
芝前指矢射の要法は,一人一人の敵を射留るの術にあらず。
戦場に臨みて一人一張を持って大軍を射立るの術にて,一騎当千の大芸なれば,常に志しを星雲の上におかずんば,成就し難き大勢也。
矢次早に射て,長く疲れざるを専とす。故に平日の修行甚厳也。
日置殿以来此道大いに行われて,射術を好者専ら爰に心を尽す日置殿の伝,吉田家にて大いに中興し,天下に射術を好むもの,此の法によらざるはなし。
故に射手等戦場へは,皆弩俵に矢数を多く,人入れて持する事なり。如図に折敷て構ゆる事也,是を日置流武射術と云う。
と述べられています。

指矢(さしや)は数多くの矢を敵に射込む射法です。数矢とも云って速射の技術と持久力が必要とされます。

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これは「日置正流武射術」の図ですが,折敷く射手の後ろには,弩俵空穂を担いで控えている侍がいます。
 
膝に乗せた矢が無くなったら足すのでしょうか?または射手が疲れた場合にはすぐさま交代する控射手なのでしょうか?

日置流印西派の無言歌に
「空穂なる矢の根は錆びて弦ほぼけ 弓射るばかり射るが射るかは」
とあります。
弓や矢の手入れについて普段の不心がけを戒めたものですが,弓はただ引けばよいというものではなく,太平の時にも常に戦時の事を心に掛け稽古するのが武士としての嗜みである。と云う意味です。