連続小説 キウイ | 黒南風~くろはえ~

連続小説 キウイ

「あ・・・どうもありがとうございます」

道路に転がった買い物かごを手繰り寄せ、

108個のキウイをせわしなく拾い集めながら洋子は言った。


異様に低い姿勢で拾い集めていたため

タイトなハーフパンツの下からのぞかせる真っ赤なスウェットパンツが

大地をぬらすミルクを吸い込み真っ黒になっている。


しかし洋子はまったく気にも留めていなかった。


それよりも目の前の人物の首が取れかかり、

手が一本足が数十本、

そしてわけの分からない肉の塊が彼の体の至る所から漏れ出しているのを

彼女は半ばエクスタシーに落ちた感覚で見つめていた。


「あの・・・・お名前は・・・?」


洋子は鳩が豆鉄砲食らったような顔で見つめている彼にそっと問うてみた。


もちろん、洋子の上半身はタイトな七部丈のノースリーブの下から覗かせる

真っ白なダウンジャケットからもの凄い勢いで流れ出す羽毛を止められずにいた。


「・・・・・・・・・・・・?」


彼はぼんやりと虚空を眺めたまま、その腐りかけの唇を動かそうとはしなかった。

いや、動かす方法を忘れてしまったのかもしれない。

彼の耳たぶは、そう思わせるには十分すぎるほど立派な福耳だった。


そのとき


「うるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる憂売るるるるるっるっるるるるるっるるるうるうるるうううるるるる」


洋子は突然叫びだした。ずいぶんおなかが減っていたようだ。

そういえばあの夢を見てから何も口に入れてない。

とはいえ、それゆえにわざわざキウイを108個も買ってきたのだが。


しかし今はこの腹の鳴りを止めなくてはいけない。

何か食さなくては。

手持ちの食材はいまキウイフルーツしかない。

だがキウイは皮を剥かなくてはいけないし、そもそもあまり好きではない。


焦りが募りパニック状態に陥りそうになったとき


私の目の前にひたすら体から肉を出す男の姿があった・・・・・


つづく