愛で作られる「存在感」=(自我・アイデンティイー・心の芯)
今述べた心の奥にある「存在感」の話は少し分かりにくいのですが、心を理解するには欠かせません。
「存在感」とは、「自分が自分であることを無意識のうちに心の奥で知っていること」です。
この無意識の「存在感」があるから自分の個体を認識して自分の命を守ることができます。
それだけではなく、「存在感」がという感覚が既に述べたように脳が働く時の中心として必要な脳の司令塔にもなるのです。
ところでこの「存在感」はどのようにしてつくられるのでしょうか?
それは「愛されている自分」として作られるのです。
特に赤ちゃんの時が、この「存在感」の形成には大切な時期です。
そして赤ちゃんに分かりやすい愛はスキンシップです。
スキンシップなしで遠くから可愛いと思って見ていても、赤ちゃんには愛が伝わりません。
ですから「抱かれて、目を見て、あやされながら。母乳を貰っている自分」として、生まれたその日から、「存在感」をつかみ始めるのが自然の姿です。
スキンシップや愛に裏打ちされてできるのが「存在感」だと言えます。
ちなみに憎しみや,無視、寂しさは愛の反対ですから「存在感」をつぶします。
「存在感」が乏しいとどうなるのか?
心の病のほとんどはこの「存在感」の不足が原因です。
それは今述べたように、スキンシップ不足で赤ちゃんのの時に育つからです。
脳の働きの中心になるものが不足すれば脳がうまく活動しません。
今日の困難な社会問題の原因の多くは、この「存在感」の不足によります。
不登校・いじめ・児童虐待・シンナー・麻薬・覚せい剤・ノイローゼ・うつ病・自殺・理由なき殺人・サリン事件・境界領域精神障害などは程度の差こそあれ、みなこの「存在感」が不足して育ったことによるのです。
文責 元国立京都病院・整形外科部長 石田勝正