営業は難しい仕事です。

100人の大学生に、順番に営業職がしたいかと質問をしたとすれば、恐らく誰一人として迷うことなく、「したい」あるいは「したくない」と、即答すると思います。

 

一般的に会社は株式会社という法人格を利用する事が多いです。

そして株式会社とは、講学上の定義としては、株式という有価証券を発行する事ができる会社、とされますが、結局のところ、出資者に対して、その出資に見合うリターン(配当)を払う事を前提に会社のオーナーになって頂く事で事業の展開を目論む法人の一形態です。

もっとも、中小零細な株式会社の場合は、配当が必ず伴う訳ではないことに、今回は留意だけして下さい。

 

リターンの原資は税引後の利益があてられますが、損益計算書を上の遡った時に存する科目である営業利益の多寡が極めて重要で、その営業利益を稼ぎ出す事を、営業の方々は一義的な目的としている事実は言わずもがなです。

 

固定的な顧客が存在し、定まった商品やたまに開発される新商品の紹介でお仕事が済む状況下で、まれに「単調な毎日」と思っている担当者もいるかもしれませんが、いやいや、非常に恵まれた状況である事を理解する必要があります。

すなわち、諸先輩方がその様な状況を作り上げた、その果実の上での仕事だからです。

 

顧客が全くない状況下であれば、まずはいかにして潜在顧客を洗い出して接点を持つか、そして接点を持った方々(法人)にいかにして顧客になって頂くか、という、あえて困難と書きますが、一筋縄ではいかない現実が待っているのです。

 

その際に、扱う商材が唯一無二で、競合がおらず、潜在顧客に認知して事のみが最重要というが如き状況だと、比較的簡単に顧客の開拓が出来ると私は思いますが、実際はその様に恵まれた状況は少なくて、どちらかというと、既に存在する商材を、潜在顧客のニーズに上手く紐付けることで購買意欲を持って頂き、結果として成約につなげていくという一連のプロセスが必要です。

そして恐らく最も難しいのが、潜在顧客との接点を持つ事ではないでしょうか。

 

このようにみていくと、実は営業という仕事はAIに向いているのではないか、とも思われます。

潜在ニーズは、その潜在顧客の属性に基づき確率的に表現する事ができますから、そこで提示される選択肢を示し続ける事で、これまた確率的に成約が導かれる可能性が大きくなります。

 

しかし、この場合の「成約」は、恐らく「営業力」の成果ではなくて、どちらかというと強力な「販売力」の成果に基づくと言えるかもしれません。

 

すなわち、「営業」という仕事は、潜在顧客が、実は全く意識していない新しい世界へ、商材という武器を提供する事で誘うコンサルティングの一手法だと、今更のように思わされるのです。それ故に営業は会社の花形であり、その成果に見合った報酬が約束される魅力的な仕事なのです。

 

南極で氷を売る事が出来れば正に怖いものなし。

今まで意識される事がなかったけれども実は極めて強力な武器を目の前に、法人顧客の潜在ニーズに思いを馳せた、そんな一日でした。