角界ではソウル出身の関取として活躍した
春日王関がこのたび引退なさることになり、
5月28日に断髪式が両国国技館で執り行われ、
僭越ながら私も断髪に際して、ハサミを入れさせていただきました。
まだまだ活躍が期待された春日王関でありましたが、
この度の角界於ける不透明な騒動の煽りを受け
ご本人としては全く不本意ながら、
様々な事情を鑑みて、身を引く決断をなさったそうです。
この日、「かすがおお~~~!!」と絶叫できるのは最後とあって
国技館はここを先途とばかりに
「春日王」と絶叫するお客様の声に溢れましたが、
その声は憤怒、そして次第に憐憫の涙で濡れてゆくようでした。
当日は様々な著名人の方々が駆けつけました。
映画俳優 ユ・ジテさんの到着に、玄関ホールの人々は騒然となり
巨漢、チェ・ホンマンさんの登場には、会場がどよめきました。
松方弘樹さんも颯爽として姿を見せられ
いつもながらの二枚目ぶりに会場は魅了されました。
また力道山のご夫人がお出ましになったのは
現在の北朝鮮、
咸鏡道出身の朝鮮相撲の名手であった力道山こと金信洛。
角界にスカウトされるも閉鎖的社会のなかで苦しみ、
角界を自ら離れてプロレスへと転向。
その後、「力道山」として戦後日本の復興のシンボルとなったことは
誰もが知るところです。
「主人のことが春日王関のこととだぶってしまって」と
涙を拭いていらっしゃいました。
春日王もまさに韓国において、
韓国相撲の選手として全国制覇を果たした名力士であったのです。
奇しくも力道山と同じ道のりをたどりながら、
無念の引退をする春日王をおもいやる夫人の涙が
全てを物語っているようでした。
これからの相撲界はどうなっていくのでしょうか。
神事として、日本の国技として
永きに亘って親しまれてきた伝統は
一度根本から見直さなければ、そうたやすくは
元には戻れないのではないでしょうか。
もしもこの度の騒動のなかで
相撲に生涯を賭けた多くの若者達が
人生を翻弄されてしまったのだとしたら、
日本人として誠に申し訳なく思うばかりです。
春日王の雄姿を見届けるためお母様も韓国からおいでになり、
髷にハサミを入れられたのでした。