では今回は、今季の流行色にシャーベットカラーが入っている理由のお話です。
そもそも流行色ってどうやって決まるの?というところから始めると、
実は、その年の流行色というのは、すでに2年前に決定しています。
『国際流行色委員会』、別名『インターカラー』という各国から集まった団体があるんですが、
その団体が2年後の時代の流れを読み解き、流行色の方向性を話し合い、決定します。
そしてそれぞれの国に持ち帰り、その決定した流行色を元にして、
それぞれの文化や情勢に合わせた色に微調整していきます。
日本だと『日本流行色協会』、別名『JAFCA』という団体がその役割を果たします。
では、なぜ2年も前に流行色が決まるのか?と疑問になりますよね。
これにもしっかりとした理由があります。
流行色が決まったからといっても、世の中にその色の商品がすぐに出回るわけではありません。
アパレル業界であれば、まずは生地の生産から始めないといけませんし、
工業製品などでも、その塗料の生産や材質の確保ということもあります。
その準備期間に約1年を要すると考えていただきます。
そしてその準備が整ったら、そこからデザイナーさんや開発者さんがデザインし、
それを元に生産に入っていく、という流れになります。
こうやって流行色を取り入れた商品が市場に姿を見せます。
これだけの準備に2年を要する、というわけですね。
でも、もともと流行色というものはファッションから始まったもので、
皆さんもお馴染みのパリコレクション、ミラノコレクションなどのファッションショー、
これを基準にした準備期間が2年というのが本当のところです。
では本題の、なぜ今季の流行色にシャーベットカラーなのか?です。
先ほども書きましたが、流行色は時代背景を反映します。
2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。
世界中に衝撃を与え、多くの方々に悲しみをもたらしました。
この状況をみんなで乗り越えよう、その気持ちから、
『日本を元気に』 というキーワードが日本のみならず世界中あちこちで使われるようになりました。
人と人との繋がり、人の優しさ、それを上手く表現したのがパステルカラーだったと思います。
ビビッドカラーだと押し付けのようで、被災者の方々への配慮が足りないという側面もあったかもしれません。
そして今季の春夏、新聞・TVなどのメディアでその言葉を見聞きしない日はないかもしれない、
『電力不足』 『節電』 という非常に現実的な問題に直面していますよね。
節電グッズや体温調節グッズなど、この問題を乗り切るためのアイデアも多く取り上げられています。
温暖化で年々上昇する気温の中、いかに電気の使用料を抑えて、安全に快適に過ごすか、
これが非常に重要なテーマになっています。
『視覚的に涼しく』
これが色という観点から出た発想です。
猛暑だからと言って公の場で裸で過ごすわけにもいかないので、
当然、衣類は身につけなければなりません。
身につける衣類を清涼感のある色にして視覚から体感温度を下げよう、
その試みのひとつとしてシャーベットカラーを利用しよう、というわけですね。
自分が身につけるだけで得られる効果もありますが、
周りの人たちがシャーベットカラーを着ていることで得られる視覚効果も大きいです。
真夏の暑い日に周りの人たちが黒やダークトーンの重い色の服ばっかりだったら、
それだけでさらに暑苦しくなって気分が悪くなりそうですよね。
加えて、黒などの重い色は熱を吸収しやすいので、着ているほうもしんどいはずです。
これが流行色にシャーベットカラーが取り入れられた理由になります。
もうひとつ、違う側面から捉えた理由をお話しすると、
薄い色のほうが生産の段階でコストを抑えられるからです。
染色というのは、色が濃くなればなるほど手間がかかるためコストもかかります。
この不況の中、企業にとっては少しでもコストを抑えて利益を出したいのは当然。
そうやって生み出される流行色も実は存在する、ということなんです。
この色の生地の在庫が大量にあるからなんとかしないと・・・、とか。
そういう妄想をするのも面白いと思います。
このように流行色というのは、自然と生まれるというよりも、
様々な要素に基づいて決定されるということです。
でも、人の気分が自然とその方向に流れてその色を望むから流行色が決定されるのか、
意図的に操作されて流行色だと認識させられるのか、
そのあたりはなんとも言い難い領域ではありますが、
ちゃんとそこには意味、意図がある、それは事実です。
シャーベットカラーを取り入れることは、色彩心理という観点では節電に繋がる要素のひとつなので、
この流行に乗せられて取り入れてみてください。
色で快適な春夏をすごしましょう!