まほくの ADVENT 魔法使いの真実 4 | 黒緋‐クロア‐の中はこうなってます。

黒緋‐クロア‐の中はこうなってます。

ブログと、趣味の小説を書いていくと思います。

 何だかもう、どうでも良くなってきた。正確には、どうでも良くなってから数年経過している。時を遡り始めてから“16年”を超えて、久城一真たちはもう乳飲み子だ。教室での暴走以来、久城一真が大きな問題を起こすこともなく、金髪の誰かがちょっかいをかけに来ることもない。“戻るべき地点”なんてものがわかるはずもなく、新しく知ったことと言えば、久城真人が狂った勢いで世界を飛び回っていることぐらいだ。

 俺にとっても父にあたるのだろうか……という疑問は既にどうでも良く、どちらかと言えば、どうして“月1から月3のペースで”国を股にかけて働いているのかの方が気になっている。どの国の魔法使いに対しても礼儀正しく、真剣で、どこか必死な様子……口を開けば『For my family(家族のため)』と言う。洗脳でもされているのだろうかとすら思える。

 そんな久城真人が、帰ってくるらしい。逆だ、日本を飛び立つ前に戻るらしい。パスポートを覗き見るに、次が日本だ。久城一真と今城梨紅が産まれるまで、あと数週間……この男に付いて回ればわかることもあるだろう。だが、もう、何か、どうでも良い気がちょくちょくしている。意識が薄れかけることも増えてきている。一時期、負の考えが過ぎることが多い時期があったが、それに近いのかもしれない。《アンダンテ》だ、あの光を見よう。心を落ち着かせるんだ。

(……あれ?)

 光が、消えかかっている。カンテラの灯のように俺を照らしていた《アンダンテ》の光が、吹けば消えてしまいそうな程に弱弱しい輝きになっていた。効果の限界が近いということだろう。

 それでも少し、気持ちが落ち着いたように感じる。日本に戻り、2人の誕生を見て、産まれる前のことも知る。《アンダンテ》の限界まで戻り、全てはそれからだ。今は、久城真人を追うのだ。

 

 

 空港に着いた久城真人を出迎えた……正確には見送りなのだが、その場に居たのは数人だった。見覚えのある人物、久城一真の周りにいる仲間たちによく似ている人物が多い。まず、今城幸太郎と寺尾聡明、重野深鈴の3人は久城一真の記憶にある人物だ。重野深鈴は、どうやら重野恋華を身籠っているらしく、お腹が大きくなっている。他にも、珊瑚と呼ばれた大柄な男……川島暖の父だろう。正樹と呼ばれた眼鏡の男は、桜田正義にそっくりだ。礼と呼ばれている女性は、穏やかな雰囲気だが、瞬間的に凉音愛に似ているように見えなくもない。そして、もう1人……

(……は?)

俺は、思考を止めた。止まってしまった。その男を、俺は……いや、俺だけじゃない。“久城一真も”、よく知っている。

短めの金、茶髪に、真面目そうな目。軽薄なイメージ。

(進藤、勇気……?)

 

貴ノ葉高校の制服を着た進藤勇気が、彼らの輪の中で笑っていた。