マジすか学園6 坂道譚 第4話 | 黒揚羽のAKB小説&マジすか学園小説ブログ

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マジすか学園の二次創作を書いています。マジすか学園を好きな方、又同じく二次創作を書いている人良かったら読んでください。






カリカリと万年筆を走らせ、報告書を作成してる女性がいる。綺麗に染め上げられた茶髪を腰の辺りまで伸ばし、制服の上から白色のファーコートを着用してる。



首元でオダマキを模したネックレスが揺れ、腕には生徒会と綴られた年季の入った腕章、胸元には竜胆のコサージュ。彼女はマジ女3年にして、生徒会長を務める潮紗理菜だ。



「会長。報告したい事が2つあります」



「何でしょう」




万年筆を動かす手を止め、顔を上げる。黒髪ロングに愛らしい顔立ち、蓮が刺繍されたブルゾンを制服の上から羽織り、胸元には竜胆のコサージュ。生徒会副会長の高瀬愛奈だ。



「まず1つ、入学式が行われていた時、生徒がカツアゲの被害にあったそうです。場所は校舎裏。被害者は新入生で、入学式に向かう途中で絡まれたようです。誰がしたのかは調査中です」




「許し難い事ですね。新入生を狙うなど。誰がやったのか分かり次第、すぐに“粛清”を」



「はい。2つ目ですが、例の2人が生徒会に入る決意をしてくれたようです」




「……そうですか。入れてください」




はいと頷き、高瀬が一旦生徒会室を出て、2人の女生徒を引き連れて戻ってくる。潮は嫋やかな笑みを浮かべ、2人を迎え入れる。





「松田里奈です。この度はありがとうございます。誠心誠意生徒会の為に頑張りますので、宜しくお願いします」



「上村ひなのです。宜しくお願いします」



里奈とひなのが頭を下げる。潮は笑みを崩さない。2人が顔を上げると、2人の首元で“欠けた勾玉”が揺れた。




「貴女達の事は愛奈から聞いています。まず生徒会に入る決断をしてくれたことに感謝します。これから大変な事があると思います。何かあればすぐに私や愛奈を頼ってください」




「……はい」



表情を強ばらせて頷く2人を退出させる潮。今日は入学式だ。本格的な活動は明日からでも良いだろう。



「上手くいって何よりです」



「思いのほか簡単でしたよ。会長が言ったようにした結果です」



潮がうっすらと瞼を細める。透き通る水晶のような瞳には様々な感情が写し出される。これもマジ女のため、弱き者達のためと万年筆を動かそうとした時、生徒会室のドアが勢い良く開く。




「もう少し丁寧に開けられないのか?」




「す、すみません。至急お二人に伝えたい事が」




「何でしょう」




「入学式で森田ひかるという新入生が“テッペン宣言”しました」




言下、生徒会室に走る威風。空気は凍り、窓がギシギシと軋み、空気が異様に重く、息苦しくなる。無言で士気を溢れさせている潮。報告した生徒の顔から血の気が引いていく。




「……“テッペン宣言”……どうやら愚か者が入学してきたようですね」




瞳から感情が抜け落ち、代わりに黒々としたものが覆いはじめる。高瀬が持っているタブレットを手早く操作する。



「森田ひかる。1年C組所属。尾張第二中学校出身みたいです。他の“要注意人物”と比べると実績があまりないです」




「……そんな事はどうでも良いんですよ、愛奈。重要なのは愚者が危険な思想を抱いているということです」



潮の声には明確な怒りが孕んでいた。失礼しましたと頭を下げ、タブレットを机に置く高瀬。大きく息を吐いた潮が立ち上がる。




「一年生、特に森田ひかるへの監視を始めてください。逐一報告し、独断で行動しないように」




「は、はい」




生徒が慌てて生徒会室から出ていく。開けっ放しのドアを閉め、高瀬が体を向けると、潮が窓の前に立ち、コサージュに手を当てていた。




「……どうして“テッペン”を目指す愚か者が現れるのか、分かりますか?愛奈」



「ラッパッパと軽音楽部が存在しているから、ですよね?」



「そうです。その2つのせいで弱き者は傷つき、大切なモノを失ってきている。弱肉強食?くだらない。弱い事が罪だと?いいえ、そんな事はありません。



人は生来弱い生き物。故に徒党を組み、繁栄してきたのです。弱い者には弱い者なりの使命があり、役目がある。それを蔑ろにし、剰え踏み躙る事などあってはならない。



だからこそ私達がやらねばならぬのです。ラッパッパを、軽音楽部をなくし、“テッペン”という概念を壊す。


そして弱い者達が安心して暮らせる学園を創る。それが我々の果たすべき使命です」




「はい」



潮の一言一句には彼女の力強い意思が篭っていた。多くの生徒や出来事を見てきたからこそ、現れた感情。それが声に乗れば、誰もが納得してしまうモノになる。




弱い者が淘汰され、それが罷り通る今のマジ女の空気を潮も、高瀬もよしとしない。だからこそ動かないといけない。自分達が。




潮が視線を横にある棚に移す。倒れた写真立てと花瓶が置いてある。そこにいけられた花は枯れており、何度水をあげても花を咲かせる事はなかった。




まるで彼女の行いを否定しているかのように。





「……私は何も間違ってはいない。弱者を虐げる者には相応の罰が下る。そう、これは“正義”なのです」





窓に目を戻した潮が誰に言う訳でもなく、言葉を落とす。高瀬は何も言わず、その背中を見詰め、包帯をぐるぐるに巻いた右手を力強く握り込んだーー。







続く。


次回の更新は水曜日です。


竜胆 花言葉【正義】
蓮 花言葉 【救済】
オダマキ 花言葉 【愚か者】



生徒会。
弱者救済を掲げる組織。弱い者を虐げる者を悪とし、粛清している。また、ラッパッパや軽音楽部の存在がテッペンを目指す者を招き入れてるとし、潰そうとしている。


会長 潮紗理菜。
副会長 高瀬愛奈。

松田里奈。
上村ひなの。