のび太の創世日記Ⅰの1[★★★]

[初出誌] 『のび太の創生日記』、「月刊コロコロコミック」19949月号、30頁、195コマ

[単行本]  『のび太の創生日記』、「てんとう虫コミックス 大長編ドラえもん VOL.151995925日 初版第1刷発行、30頁、195コマ

[大全集] 『のび太の創生日記』、「藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 62012530日 初版第1刷発行、30頁、195コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 「参考にするならやっぱり出来杉くんかな」が「参考にするならやっぱり出木杉くんかな」に変更[12(1)]

 

 [梗概] のび太は「あのふたりが悪いんだ!! あのふたりがあのときあんなばかなことしなけりゃ、ぼくらは毎日のんびりと、学校や宿題におわれることもなく…、遊んでくらせたのに。つくづくあのふたりがうらめしい」と嘆いていた。

 

 のび太は『せかいのはじまり』という子どもの絵本を読んで、特に、アダムとイブがなんの苦しみもなやみもない楽しいエデンの園で、神さまから食べてはいけないという「ちえの木の実」を食べてしまったので、エデンの園をおっぱわれて、今、ぼくたち子孫が苦労しているわけだ!!」というのが嘆きの根拠であった。

 

 タカヒロちゃんの絵本を取り上げたのはのび太であった。あまりおもしろいので読みふけり、夏休みの宿題の自由研究のテーマ探しをすっかり忘れてしまっていた。

 

 のび太はドラえもんにその件がどうなったかと問い詰められたので、出木杉の自由研究「多奈川絵巻」を見せてもらったが、りっぱすぎてなんの参考にもならなかった。しずちゃんは朝顔の観察日記を続けており、タネをあげるからやってみたらと言われたが、今からじゃ遅すぎた。

 

 ジャイアンに自由研究の話をすると、「せっかく楽しい夏休みをすごしていたのによけいなことしてくれて!! 責任をとれ!!」と追い掛けられた。ジャイアンにつかまった時、スネ夫の家から風船があがるのが目に入った。スネ夫は風船にへリウムガスをつめ、その風船に手紙をつけ飛ばしていた。

 

 風船の落ちた場所を手紙や電話で知らせてもらい。それを地図に記入し、毎日のお天気や風向きとの関係を記録していた。なお、風船を拾った者にはスネ夫の特製のテレカがプレゼントされた。ジャイアンは強引におれも手伝うから共同研究にしてくれと頼んでいた。

 

 夏休みが残り少なくなったのに、のび太ひとり自由研究のテーマが決まっていないので、しょんぼりして家に帰ってきた。寝転がって、「だーれもみかたになってくれない…。ぼくってかわいそう…」とつぶやいていると、すばらしい考えが閃いた。タイムマシンに乗って、宿題を先生にわたす前に見ようという計画であった。

 

 タイムマシンに乗っていると、タイムパトロールの検問を受けることになった。密航タイム・マシンが逃走中で、超空間もぶっそうだなと考えていると、このへんにドラえもんさまというかたがすんでいらっしゃいませんかと、尋ねられたので、ドラえもんならぼくんちにいるけどと答えると、のび太は「未来デパート科学教材部夏休み宿題コーナーからのご注文の品」を手渡された。

 

 ドラえもんがデパートに注文した製品はひみつ道具でもある『創世セット』であった。ドラえもんはのび太に三つの約束を誓わせた。1)少しでもいい世界に育てるよう努力すること、2)毎日観察日記をつけること、3)途中であきてほうりだしたりしないことの三点であった。

 

 「創世セット」の「ベースマット」を広げ、マットを「コントロールステッキ」でトンとつくと、「ワッ」と暗やみに落下するので、「フワフワリング」をかぶると、「フワ~リ」と浮かぶことができた。「宇宙の素」を振りまき、ステッキでよーくかき混ぜた。

 

 「グル グル グル」とかき混ぜて、ほんとにこんなことで宇宙ができるのかと考えていると、「ズバ」と爆発して吹き飛ばされてしまった。説明書には、「爆発するから最初の操作はそとからしなさい」と書かれてあった。

 

 第一段階は火の玉で、ガスとチリがゆっくりかたまりながら回転していた四十六億年前の太陽系の姿であった。ノートにスケッチをしながら、あす以降が楽しみになってきた。のび太は「すばらしい新世界を作ろう。みんなが楽しく平和にくらせるユートピア…グウ」と眠ると、自分が神さまになった夢をみることができた。

 

 次の日になると、太陽のまわりのガスやチリは小さな星にかたまって、ひらぺったい渦巻きになって回り、微惑星がぶつかっては砕けながら、だんだん大きくまとまりだした。ジャイアンがスネ夫の家に行って、「ブーブーふくらませてジャンジャンとばそうぜ…」と声をかけると、スネ夫はグンニャリして、なんかむなしいと嘆いていた。

 

 「きのうまであんなに風船とばしたのに、ひろったというしらせが電話一本ないんだもの」と説明するので、特製のスネ夫のテレホンカードが魅力ないからだとジャイアンは考えた。「だれがほしがるか! もっといいもの…。そうだ! あれだ!! おれの新曲テープ! ボゲ~」を録音し出した。

 

 のび太がこんな調子じゃ夏休みが終わってしまうと言いながら、「フア~」とあくびをするので、時間の進み方を早めることにした。ドラえもんがちゃんと見てなきゃだめと言いながら、出掛けた。

 

 のび太は神さまの仕事って意外に地味だなと思って、「グル グル」と宇宙をかき回していた。神さまも息抜きがしたいと言いながら、しずちゃんの家に行った。しかし、しずちゃんは出木杉とプールに出掛けたあとだった。

 

 家に帰ろうとすると、ジャイアンが「スネ夫のやつ裏切りやがった!! 風船やめてデパートで昆虫標本を買ってごまかすんだというんだ!! おまえとおれだけだぜ。宿題できてないのは。こうなりゃ死ぬも生きるもいっしょだ。二学期にはいさぎよくふたりそろってしかられようぜ!!」と、のび太をしっかと抱きしめた。

 

 のび太が「あのう悪いんだけど…」と言おうとすると、ジャイアンは「なにーっ、観察日記つけはじめた!? のび太のくせに!! ギタギタにしてやる!!」と猛烈に腹を立ててしまった。

 

 ひどい目にあって家に帰ると、ドラえもんから叱られ、一時間目をはなした間に、みんな太陽に飲み込まれ、実験は失敗してしまった。のび太は「ぼくの新世界が生まれる前にほろびちゃった、ワア~」と泣き崩れた。

 

 のび太がほんとうに反省したので、ドラえもんは「コントロールステッキ」を一時間もどして、キャンセルしてもう一度スタートしてくれた。かき回すのが早すぎるとバラバラに散らばってしまうので、ゆっくり回すことにした。

 

 太陽から地球までの距離が大事で、ほんの少し遠すぎても近すぎても生命は生まれないということであった。ゆっくりゆっくり回していると、太陽から三番目の星が生まれ、四十五億年前のぼくらの地球とそっくりであった。

 

 ジャイアンは「決心した! のび太にあやまろう。あやまっておどかして共同研究にしよう。それしか道はない」と考えながら、夜道を歩いていると、火の玉が町の上をフワフワと、うら山の方へ飛んでいくので、追い掛けることにした。

 

 「ミツケタカ? ドウモハッキリシナイ。シカシ時代ト場所ハタシカコノヘンダゾ」と話しているカマキリを見て、ジャイアンは「ワッ!! バ、化け物!!」と叫び、「ダレダ! ニガスナ!!」とカマキリに追い掛けられることになった。