のび太と夢幻三剣士Ⅴの1[★★★]
[初出誌] 『のび太と夢幻三剣士』、「月刊コロコロコミック」1994年2月号、34頁、227コマ
[単行本] 『のび太と夢幻三剣士』、「てんとう虫コミックス 大長編ドラえもん VOL.14」1994年9月25日 初版第1刷発行、34頁、227コマ
[大全集] 『のび太と夢幻三剣士』、「藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 5」2012年3月28日 初版第1刷発行、34頁、227コマ
【初出誌vs.大全集】
変更なし
[梗概] ドラモンとノビタニヤンが「ソロリ ソロリ」と竜から逃げようとすると、「ギロ グワオ」と襲いかかってきたので懸命に逃げると、「ボチャ ボチャン」と温泉に落っこちてしまった。温泉から「プーッ」と顔を出すと、竜が見張っていたので、温泉にもぐり、穴があったのでどこかへ抜けられるかもしれないと思って入っていった。
シズカリアは馬の背中で三日三晩走り続けて…、世界の果てまできたような気がした。「おなかがすいちゃった。のどもカラカラ…。お風呂に入りたい…。もうだめ! あたしここで死んじゃうんだわ。お父さまごめんなさい、さようなら…」と目を閉じると、「ゴオ ゴオ ズズ~ン」と何か大きな物が落下してきた。
お星さまでも落ちたのかと思い、穴に入ってみるときれいなバッグが落ちていた。食べものが入ってないかしらと口にすると、パンが出てきた。穴の中で何か「コト コト…」と音がしたので、それを「せーの!! スポ」と引き抜くと、空中に飛び出し、「だれかおろしてえ!!」と絶叫することになった。
ドラモンとノビタニヤンが気づいた時は、竜の谷の入り口までもどっていた。ジャイトスとスネミスの行方もわからず、竜のヒゲを切るどころか近づくこともできない状態であった。ドラえもんは魔法使いだからなんとかできないのかと問われると、「ホーキ」がないとだめだという返事であった。
「星をおいかけてとんでいったきり…」と空を仰いでいると、だれかがホーキに乗ってこちらへやってくることがわかった。ホーキがだれかを振り落としてドラモンのところへやってくると、ドラえもんは「ぼくをさがして何千里…、苦労しただろうね」とホーキを抱きしめた。
一方、ホーキから振り落とさせた者は「ぼく、旅の剣士シズカール」と名乗った。シズカールにホーキの件を尋ねると、「星といっしょにおちてきて、うまってもがいてたのをひっぱりだしたら、それがホーキだったの」という返事だった。
「ぼく、魔法使いのドラモン」、「ぼく、ノビタニヤン。白銀の剣士だよ」、「白銀の剣士!? きみが!? 家出してよかった…」とシズカリアはつぶやいた。ホーキがあれば魔法を使えるので、竜退治のリターンマッチになった。
ドラモンには「石像?…、そうだ! 石像に化けて近づこう!!」といったアイディアが閃いた。あのへんは石像がゴロゴロしているので、「竜がこっちをみたらパッと立ち止まる。あっちを向いたらまたそろそろと…」とダルマさんがころんだの要領で竜に立ち向かうことになった。
「ドラモンてほんとの魔法使い?」、「本人はそのつもりらしいけど」、「どーせわたしゃ三流の魔法使いです!」と言いながら、竜に近づいていった。
竜が「ゴオ~ン グルル…」といびきをかいて寝ていたので、手分けして両側から近づいて、ドラえもんの合図でいっぺんに左右のヒゲを切る計画を立てた。「ツルッ」と足を滑らすと、竜は「カッ」と目を開き、首をもたげたが、三人は「ピタ」、「ピタ」と一歩一歩近づいていった。
ノビタニヤンは目の前に石像になったジャイトスとスネミスを見て、大声で叫んでしまった。気づいた竜が「グワア ゴオ」と炎を浴びせると、「ドドーッ」と温泉が噴き出したので、ノビタニヤンは空中に高く押し上げられ、白銀の剣士の剣で竜のヒゲを「ズカッ ズカッ」と切り落とすことができた。すると、「ギャア~ユラ…・ズズン」と竜がぶっ倒れてしまった。
ドラモンから「早く竜の血を!! なにをぐずぐずしてるの。時間がたつとヒゲがのびるんだよ」と言われても、竜の上のノビタニヤンはどうしても竜に剣を刺すことができず、「ぼくにはできない!!」と叫んで、竜から飛び下りてしまった。
ドラモンが「しかし…、それじゃどうやって妖霊大帝と戦うんだよ! ユミルメの人びとが…」と説得しても、「それは人間のかってだよ!! こんな秘境でひっそり生きている竜を、殺す権利なんてだれにもない!!」と主張していると、竜のヒゲが「ピク ピク」伸び、竜も「ムク ウオオ~ン」と立ちあがってきた。
竜は「おどろかなくてもよろしい。きみたちに危害をくわえるつもりはない。これまで大勢の人間がわしの血をねらってやってきた。わしは身を守るため、石にした。だが、きみのような剣士ははじめてだ」と声をかけてきた。
ノビタニヤンが「さわがせてごめん。ぼくらはかえるから平和にくらしてください」と別れを告げると、竜は「まちなさい。はるばるやってきたのに、このままかえすのも気のどくだ。血を流すわけにはいかないが…、温泉にわしの汗を流してあげよう。あびれば不死身とはいかなくても、一度くらい生きかえられる体になるはずだ」と教えてくれた。
ドラモンもノビタニヤンも温泉に入って全身の隅々に湯をしみこませることにした。しかし、シズカールはどうしても入ろうとはしなかった。石像にされた仲間にこのお湯をかけると元に戻れるというので、お湯をかけにいっている間に、シズカールは何日かぶりのお風呂を満喫していた。
竜から、「谷の南に川がある。下れば人間の町だ。流れが急で危険だが、そのぶん早くかえれる。さらば勇士よ」と別れを告げられた。
「ドオドオ」と流れる急流には船が必要であったので、ノビタニヤンは白銀の剣を使って木を切り倒し、木を「コン コン スカ スカ ガツン ガツン」と切り抜いて、あっというまに船を作り上げた。ジェットコースターの速さで川をくだり、川幅の広い下流までやってきた。
アンデル市に近づくと、煙が上がり、妖霊軍の攻撃が続いていると予想できたので、シズカールは城が囲まれているとすれば、うかつに上陸できないと考え、この川の支流が城の水門に通じているので、そこから城に入ることになった。シズカールが城に詳しいのでみんな驚いていた。
城に入ると人影も見えず、シーンとしていた。突然ヤリをもった兵士が化け物と言いながら攻撃してきた。ノビタニヤンが白銀の剣士と名乗り、妖魔と戦いにきたと告げると、兵士は早速隊長に連絡に行った。
隊長に、「ぼくは魔法使いドラモン。おれたちは夢幻三剣士」と名乗り出た。隊長は「あまり強そうじゃないが…。でも、まあ人手不足だから…」と歓迎してくれた。
妖霊軍の姿が見えないのは雨のためであった。この城を攻めているのは土の精軍団、つまりドロ人形みたいな妖魔で、水が苦手であるけれども、切ってもついても平気な軍団であった。
率いているのがスパイドル将軍で、六本の腕で六本の毒剣を振るう、おそるべき化け物である。これまで三回戦い、生き残った城兵が九人で、この雨がやんだ時、われわれの戦いの最後になるでしょうと隊長は考えていた。
ドラモンが「チンプクリンのホイ!」と魔法を唱えて、取り出した物がなぜかテープレコーダーであった。スネ夫が「ジャイトスの歌を吹き込んでボリュームいっぱいに流せば、お化けもめげちゃって…」と意見を出したが、ジャイトスに猛反対されてしまった。
シズカールの出した城の広い地下倉庫にみんなの声を吹き込んで、土の精軍団を引き寄せるという作戦が採用された。
雨がやみ、土の精軍団が最後の攻撃の時がきたと考えて、城門までくると、城門は開けっ放しで、番兵も見あたらなかった。スパイドル将軍は「だまされぬぞ! かならずどこかにかくれているのだ。城内をくまなくさがせ!!」といった指令を出した。
城内に入ると、「やーい、ドロンコお化けここまでおいで。くやしかったら入ってこい!!」と地下倉庫のほうから聞こえてきたので、将軍が「やーい、やーい」とする声に「グサ」と刀を突き刺すと、「ガ~ ガ~ ピー」と音の出るテープレコーダーを突き刺すことになった。そのとき、「ド・ド・ド…」と大量の水が地下倉庫に流れ込んできた。