のび太と雲の王国Ⅴの1[★★★]

[初出誌] 『のび太と雲の王国』、「ドラえもんクラブ2号」199451日、75頁、437コマ

[単行本]  『のび太と雲の王国』、「てんとう虫コミックス 大長編ドラえもん VOL.121994725日 初版第1刷発行、75頁、437コマ

[大全集] 『のび太と雲の王国』、「藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 52012328日 初版第1刷発行、75頁、437コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 「作詞・武田鉄矢 『雲がゆくのは…』」コマ挿入[148149]

 

[梗概] 中央空港に着陸し、入国手続きのためカウンターに行き、無料の入国指輪をつけることになった。ホテルに行く前に、天上世界のことをもっと勉強することになった。その頃のび太はホイくんと一緒に、グリプトドンに乗った少年の家を探していた。

 

 雲の上の世界は広いので、のび太は疲れ、「ねえ、ドラえもん、なにか道具をかして」とポケットにさわると、「H!!」と突き飛ばされてしまった。絶滅動物管理者のグリオが「キーン」と円盤に乗ってやってきたので、のび太は岩のかげに隠れた。

 

 大きな湖が目の前に広がっていたが、ホイくんのお友だちであるネッシーが現れたので、みんな背中に乗せてもらって湖を渡ることができた。

 

 シティーホールでは、ミュージカル「天国の誕生」を全天周立体ホログラムで楽しく観劇することができた。「美しい野や山の誕生後、白い王さまお妃さま白いやかたをたてました。平和な月日がすぎました。……。やがて、北の山国を征服する黒死王、南の砂漠王赤いサソリ、西の大陸の青竜王が緑の豊かな王国の征服に乗り出した」

 

 「王さまたちが行き場を失い、「神よ!! わたしたちの進むべき道をお示しください」と祈ると、神の手が、光かがやく神の手が地球に触れて…、なにかがかわった。雲の上に歩けるような新しい地面ができたんだ!! 新しい白い王国は雲の上。みにくい地上の争いを遠くはなれて栄えます。…」

 

 「雲にとどけ!! 塔に塔を重ねてうばい取れ!! すさまじい雨…。たてに流れる川…。落ちる海…。地上は洗い流され清められた。天上の楽園は平和をとりもどし、人もけものも花も草木も栄えに栄えた」となりました。

 

 のび太はネッシーと別れ、ホイくんに案内してもらってタガロの家に到着することができた。のび太が雲の王国を作ったが天上人におわれてちりぢりになり、なんとかここから逃げ出したいんだと訴えた。

 

 するとタガロは「天の底が抜けたような大雨、島があっというまに消えちゃった。ぼくらが流木につかまって大海をただよっていると…。とつぜん空にすい上げられたんだ。大きなUFOがぼくらをのみこんだ。そしてここ絶滅動物保護州へつれてこられたんだよ」という話をした。

 

 タガロは天上人がなにかおそろしいことをたくらんでいて、信用できないので、仲良しのグリプトドンに雲の底まで掘り下げてもらうと、チャンスがやってきた。雲が高度を下げ山の頂上をかすめたので、すかさず飛び降りたと説明してくれた。

 

 タガロたちは指輪を強制的に付けられており、その指輪は発信機の機能を持っているので、どこへいっても居場所がわかり、すぐつかまるというものであった。

 

 のび太はドラえもんの故障を直し、仲間のゆくえもさがしたいので、どうしても逃げなければと決心していた。すると、ホイくんが「あれに助けてもらえばひょっととして…」とある方法を提案した。

 

 みんなでパラダイスパークを散歩していると、大統領官邸で大事な会談があるため、植物星の大使を乗せたパトカーが通過していった。美しい公園であったが、ガラーンとしてさびしい公園であった。パルパルは人口が減少し、ほかの星への引っ越す人が増えだした。

 

 空気が汚れるし、オゾン層は破れるし…と話しているうちに、気持ちが高まり、「だれのせいよ!! 悪いのは地上人じゃないの!! 自然を破壊し、煙や排気ガスをまきちらし、川も海もよごれぱなしで!!」とエスカレートし、最後には、ノア計画を進めているという話になった。 

 

 ノア計画とは、史上空前の大豪雨をふらせて、大洪水で地上世界のなにからなにまで、洗い流してしまうというものである。パルパルは「このままじゃ地球は空も陸も海も、ボロボロに汚され、破壊され…。あたしたち天上人も絶滅するしかないのよ!!」と訴えた。

 

 地上の生物が絶滅する前に、「洪水の前にあらかじめ動物も植物も、地上人も天上界へ吸い上げておくの。すべてが終わったら、再び地上へ送りかえしてあげます。そのための実験も成功しているわ」という話であった。

 

 最終決定は議会が下すことになっており、明日最後の審判が行われることになっている。そして、パルパルは「その席には地上側証人として、あなたがたにも出てもらいます」と、みんなに告げた。

 

 大統領官邸では、植物星の大使は「たしかに地球の空気はどんどん汚れてきておりますな」、大統領も「おっしゃるとおりです。あなたの星がうらやましい。ゆたかな緑につつまれて…。このままでは地球は滅びてしまいます」といった話が続いた。

 

 「ムカシダイダラアホウドリ」を呼び寄せ、「万能たずな」を「えいっ クルクル」とアホウドリの首に巻きつけ、ツバメのときと同じ操縦法でアホウドリに飛び乗った。アッという間にバリヤーをぬけたが、似たような雲ばかりで、どうやってぼくの王国を見つけるかが問題であった。

 

 ドラえもんが「ハーラ ペーコ ペーコ」と大騒ぎするので、鳥も腹ペコで急に落下しだした。すると、雲間を通して、雲の王国が見えてきた。鳥は「ごはんだよー」のにおいにつられてやってきたことがわかった。

 

 雲のロボットやアホウドリと一緒に食事をしたあと、アホウドリが帰るので王宮の屋上からホイくんたちにも宜しく伝えてと見送った。ドラえもんの故障を直すため、早速「どこでもドア」から帰ることになった。

 

 ドアを「カチャ」と開けると、「ズズン グラ グラ」と吹っ飛ばされ、窓の外をみると大洪水になっていた。水かさがどんどん増し、「ドドド ザバーツ」と家の外に放り出されてしまった。

 

 ドラえもんが「ブク ブク」と沈んでいくと、電柱に「ゴッ」と当たり、意識を回復し、「ぼくはこんなところでなにしてるんだ? おーい、のび太!」となった。さがしていると溺れたのび太が流れてきたので、しっかりしてと救い出し、高いビルの屋上に避難した。

 

  のび太も目をさまして、ドラえもんが直っていることに気づいた。目の前の世界を見て、「五千年の歴史を持つ文明社会がこんなにもあっけなくほろびるなんて」二人には信じられなかった。

 

 ひとまず、「どこでもドア」を使って雲の王国に引きあげることにした。ひと晩寝ると、のび太は「地上世界がほろびたら、二十二世紀も、ドラえもんもいないこと」に気がついた。

 

 ドラえもんも不思議に思ったので、どこでもドアを調べてみると、「時差調節ダイヤルがくるってる。十日も先に進んでいる」ことに気づいた。ママがいじくったのでそうなったと考え、ダイヤルを正しい時間に戻した。

 

 ドラえもんは未来を変えられることに気づき、「洪水の未来もぼくの生まれた未来も今のとこ同じ可能性を持っている。どっちが実現するか…。それはこれから十日以内に、ぼくらが天上人たちの計画をやめさせられるかどうかにかかっているんだ!!」とはっきり認識した。

 

 連邦最高議会では、「今、母なる地球は重大な危機にさらされています。われわれ天上人もふくめてあらゆる地球生命が、地上人のために滅ぼされようとしているのです。かれらは地球が何十億年もかかってたくわえた貴重な資源をわずか数百年でつかいはたし」

 

 「かれらの出現によりはるか昔から栄えてきた動植物を、すべて自分の物のように思い上がり、有害物資を空にまきちらし、オゾン層を破壊し酸性雨を降らせ、川も海も汚しつくし、多くの生物の住みかをうばい、えさをうばい……。もし地上人が核戦争を始めれば、かれらだけでなく、地球の生物すべてが一瞬のうちに消えさってしまうのです。ノア計画は実行すべきであります。一日も早く、一時間もすみやかに!!」と論じた。

 

 最初の証人はボルネオ島熱帯雨林から出席されたオランウータン代表ホッホくんであった。「ある日とつぜん。鉄の怪物があばれこんで森はアッというまに丸はだか…仲間はちりぢり、住む場所もなく…」と証言した。

 

 次の証人はアフリカタンザニアのサバンナから、ゾウのウギンバくんであった。「わしの爺さんもおとっあんも兄きも弟も地上人どもにコロされました。それも…、ただ象牙だけを目あてにむごたらしく。犯人の顔ははっきりおぼえています。あの四人の密猟者どもです!!」と指摘した。

 

 地上人代表の証言として、ジャイアンは「さっきからだまってきいていればおれたちを悪魔みたいにいやがって」と反論した。スネ夫はジャイアンをなだめ、「ぼくたち、知らないうちに…ひどいことしていたと思います。それにしても!! 洪水で全滅させるなんてあんまりじゃないですか!!」と訴えた。

 

天上人は「動植物を雲の上にひなんさせ、洪水のあとまた地上に戻すことになっている」と弁じた。「それにしても町は流されるんでしょ」、「きみたちの先祖は何千年もの石器時代、そんなものなしでくらしていたんだよ」、「じゃあ、おれたちにサルのくらしにもどれっていうのか!?」と議論が伯仲した。

 

 最後に、しずちゃんが「みなさんのおっしゃるとおりだとおもいます。わたしたち人間は、自分たちの生活を豊かにすることにだけに夢中で、まわりのことをまったく気にかけなくなっていたんです。

 

 でも今はちがいます。自然をたいせつにしなくちゃと気がついた人たちがふえてきたのです。地球を守ろうという運動もひろがっているのです」と切々と訴えた。

 

 しずちゃんとパルパルがあすの議会対策を相談するため、スネ夫とジャイアンに電話を入れたが、連絡がつかなかった。そのころ二人は「天上人の陰謀を地上のみんなに知らせなくちゃ。空港でUFOをうばって逃げるんだ。警察と自衛隊と国連軍に電話しようぜ」と懸命に逃げていた。

 

 指輪が発信機になっていたので二人はあっという間につかまってしまった。護送中の地上密猟犯四人がパトカーをうばって逃走中であったので、一台のパトカーをたくさんのパトカーが追撃していた。