のび太のドラビアンナイトⅥの2[★★★]

[初出誌] 『のび太のドラビアンナイト』、「月刊コロコロコミック」19912月号、38頁、234コマ

[単行本]  『のび太のドラビアンナイト』、「てんとう虫コミックス 大長編ドラえもん VOL.111991825日 初版第1刷発行、44頁、266コマ

[大全集] 『のび太のドラビアンナイト』、「藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 420111227日 初版第1刷発行、44頁、266コマ

 

[梗概] 王さまはみんなを自慢のコレクションのひとつである砂船に乗せて、黄金宮を出て、砂漠を駆け巡ることになった。アブジルと子分たちは王さまが船で出かけたということは、現在城が空っぽであるので、急いで城壁までやってきた。

 

 王さまは大冒険にあこがれて人のおそれる魔界のはてまでも航海した船乗りであった。目の前には、王さまの飼っている砂イルカが三頭砂漠に現れ、さらに、巨大な砂煙とともに「ブオー ザ・ザ・ザーッ」と砂クジラが現れた。

 

 カシムの子分が何回イカリを投げあげても、高い城壁にはとどかなかった。カシムが「ブルンブルン シャーッ」とイカリを投げると、王さまの「胸さわぎブローチ」が「ワー キャ~ アレー ヒエー ギャー ビ~」と激しく鳴り出したので、不吉なことが起きると騒ぐので、砂船でお城に帰ることになった。

 

 カシムが高い城壁をのぼり、お城の門を「ギギ…」と開いて仲間を中に呼び入れた。王宮の門が開いていたので、王さまたちが中に入ると、アブジルがコレクションを支配し、全員を逮捕して、地下牢に放り込んでしまった。ランプのオバケが地下牢の見張り番になっていた。

 

 地下牢で、ドラえもんが「あーあ四次元ポケットがあったらな…」と嘆くと、王さまも四次元ポケットに関心を示し、あの男もミライとか言っていたと言い出した。そして、むかしの話を語り出した。

 

 「わしが船乗りになったのは金もうけだけが目的ではないのだ。遠い海、遠い国、そこはだれも知らないなにかがありそうで、たとえば、伝説の魔神や人食い鬼や火をはく怪獣の住む世界などひと目みたいものだと…、七回もの冒険旅行に挑戦したわけだ。あれは七回目の…、つまり、わしの最後の航海のときだった」

 

 「大嵐で船が難破して…、ひとりの男を助けたのだ。その男がいったのだ。自分はミライからきた、タイム・ベラベラ(タイム・トラベラー)とか…。なにかお礼をしたいという。わしはむかしからの夢をうちあけた。彼はどこからかふしぎなコレクションをとりよせ、ここに黄金宮をたててくれたのだ」という話であった。

 

 地下牢の外では、ランプのオバケが「ギャアー!! アチチ アチチ。あっちいけ!!」と大騒ぎしていた。スネ夫によると、海の底からぼくらを助けてくれた真っ赤な火の玉がランプのオバケをやっつけて、地下牢の中へ「バアー、ぼくですよ」と入ってきた。

 

 ミクジンであることがみんなにわかった。ミクジンは「無責任なことが大きらいでね。けんかして帰ってからときどきタイムテレビでようすをみてたんです」と話したので、みんなで感謝し、三流ガイドなんていって悪かったと謝った。

 

  地下牢を出るとき、ジャイアンがランプのオバケを「それ! 別れのあいさつだ」と蹴り飛ばしたので、ランプのオバケが「ご主人さまあ、にげますよォ!!」と大声で叫んだので、アブジルは「兵士のタネ」を撒いて、王さまたちを追わせることになった。

 

 王さまはひとまず砂漠へ逃げ出すことにした。王宮を出るとドラえもんがミクジンに「きみのタイム・マシンの出入り口はどこ?」と尋ねると、「王宮の中庭」という返事であったので、また、スネ夫に「この三流ガイド!!」と言われてしまった。

 

 王さまの知っている抜け道を通って、王宮から離れることになった。小さな丘にくると、王さまが「ひらけゴマ!!」と唱えると、大きな岩が「ゴ ゴ ゴ ゴ…」と開き、「どこでもドア」みたいなものらしい超空間に入ることになった。

 

  砂漠に出ると、王さまは「人助けなんてするんじゃなかった。おかげで夢の王国を悪者どもにのっとられ…。わしは船のりだぞ。砂漠をのそのそ歩くなんてのは、性にあわんのだ!! このまま死んだほうがましだ~」と愚痴り出した。

 

 スネ夫は「王さまの話は何百年かのち、アラビアンナイトという本になって、世界じゅうの子どもたちが読んでるんですよ。シンドバッドは大スターになってるんですよ。なんべんも死にそうな目にあいながら、そのたびに知恵と勇気できりぬけて、また新しい冒険にいどんでいく…。そんなシンドバッドにあこがれる子どもたちが、本物がこんなぐちっぽいじいさんだと知ったらどんなにがっかりするか」と強く訴えた。

 

 すると、王さまは「わしは心にまで年をとらせたらしい…。バクダッドへいこう!! 八回めの航海にのりだすのだ!!」と宣言した。

 

 遠くの方に鳥の大群があらわたので、尋ねると王さまのくだらないコレクションのひとつである吸血コウモリであった。王さまは、「このまま、日の沈む方向へ進みなさい。海に出るはずだ。救いの船が通りかかることもあるだろう」と指示を出した。

 

 王さまは「わしはここで時間をかせぐ。きみたちはそのあいだに少しでもにげのびなさい」と言うので、ジャイアンが「そりゃないでしょ。年よりにひとりで戦わせて、にげるなんて」と近づいていった。

 

 のび太が「ドラえもんのポケットさえあればなあ…」とつぶやくと、ミクジンがドラえもんのお腹についていたうすぎたない袋を、カシムが砂漠に捨てたので、拾っておきましたとドラえもんに手渡した。

 

 ドラえもんがひみつ道具『ネットロケット』を取り出し、一網打尽に吸血コウモリを捕獲することができた。ミクジンは「やっぱり一流ガイドだよ!!」とみんなから絶賛された。

 

 ドラえもんがひみつ道具『空とぶじゅうたん』を出そうとしたら、品切れで『空とぶふろしき』を出して、黄金宮を空からさっそうと乗り込もうとした。「カシムとアブジル!! 宮殿をとりかえしにきたぞ」と宣言すると、ふたりは「空とぶふろしき」をみて大笑いし、兵士たちに弓を撃ち込ませた。

 

 「バリヤーが不完全であったので、ちょっぴりおしりに刺さった」状態であった。大勢の兵士が攻めてきたので、ドラえもんは「通りぬけフープ」を出して、難局を切り抜けた。アブジルは城の外も中も兵士で埋め尽くすため、盛んに「兵士のタネ」をまいていた。

 

 ドラえもんはひみつ道具『変身ドリンク』を飲んで、アブジルに変身し、居眠りをしていたランプのオバケに兵士のタネの箱をもってこいと命じている。

 

 アブジルのもっていた箱をランプのオバケが奪ったので、「こらっ、なにをする!?」、オバケが「あんたがもってこいというから…」と口答えするので、アブジルはわしのにせ者がいることに気づいた。

 

 アブジルに変身したドラえもんは「兵士はすべてタネにもどれ!!」と指令を出し、もとのドラえもんに戻っている。アブジルが「みんな気をつけろ!! わしのにせ者がいるぞ!!」と怒鳴っていた。カシムと子分がにせものだと「ドカ ボカ」殴りつけると、本物であることがわかった。

 

 王さまが自慢の馬に乗って「パカポコ パカポコ パカポコ」やってきて、「悪者ども、勝負はきまったぞ。あきらめて降参しろ!」と宣言した。すると、アブジルは魔法のびんから大魔神を「ボウン」と出し、「ひねりつぶせ!!」と命じたので、「バシッ」と叩かれた王さまは王宮の外までぶっ飛ばされてしまった。

 

 大魔神には、兵士のタネを全軍出動させても、まるで歯が立たなかった。ドラえもんは「スモールライト」を大魔神に浴びせて、お人形ごっこに使いたくなるサイズにしてしまった。

 

 アブジルは奥の手である空とぶ宮殿の空とぶカラクリを使って、「ゴゴゴゴ…」と黄金宮を空に飛ばしたので、みんなで追い掛けることになった。馬に乗った王さまはアブジルと刀を使って「チャン チャリン チャリリン」と激しく戦った。

 

 王さまの乗った馬が空中で分解してしまい、真っ逆さまに墜落してしまった。アブジルが「悪はかならず善に勝つのだ」とうそぶいていたが、王さまはかろうじて王宮の壁にしがみつくことができた。

 

 アブジルが王さまを振り落とすために、王宮を「グラ グラ」を揺すぶったが、王さまはヒラリと身をかわし、「ヒョイ ヒョイ」と信じられないような身軽さでアブジルを追いつめた。王宮の屋上で再度、「チン チャン ジャリン チャリン チャン」と激しい戦いを繰り広げたが、王さまは汗で手が滑って刀を落としてしまった。

 

 しかし、勝ち誇ったアブジルも油断をし、足を滑らせて大地に墜落してしまった。戦いの終わった王さまは黄金宮を「ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ…」と適切な場所に着陸させた。

 

  黄金宮に平和が戻ったのは、きみたちのおかげだと感謝されたあと、のび太は「本屋でシンドバッドの絵本をさがしますよ。みつけたらここへとどけにきます」、「そりゃうれしい。楽しみにまってるかね」といって別れた。

 

 屋根の上で夜空を仰ぎながら、のび太は「あの大冒険は現実だったのか、夢の世界のできごとだったのか…」、ドラえもんは「さあね…、どっちでもいいじゃない。夢みたいに楽しかったんだから」といった会話を交わした。

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