のび太のドラビアンナイトⅡの1[★★★]
[初出誌] 『のび太のドラビアンナイト』、「月刊コロコロコミック」1990年10月号、24頁、166コマ
[単行本] 『のび太のドラビアンナイト』、「てんとう虫コミックス 大長編ドラえもん VOL.11」1991年8月25日 初版第1刷発行、24頁、166コマ
[大全集] 『のび太のドラビアンナイト』、「藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 4」2011年12月27日 初版第1刷発行、24頁、166コマ
【初出誌vs.大全集】
変更なし
[梗概] ドラえもんは「お菓子の家の魔女につかまったとか、一寸法師の鬼やジャックの豆の木の大男とか…」といった事故も考えられるので、のび太に絵本を調べるように命じた。
のび太は絵本を調べたが見つからないので、「本人にあって直接たしかめたほうが早いよ。だいたいドラえもんはよけいな心配しすぎるんだ。だから頭に毛が一本もないんだよ」と考えながら、スネ夫の家に行った。ママからカブト虫を捕りにうら山へ行ったと言われたので、行ってみるとふたりを見つけることができた。
しずちゃんの行方不明の公算が大になったので、しずちゃんのママに会いにいったら、ママから「かわったこと? なんにもないけどどうして?」と逆に尋ねられてしまった。
家に帰ると、ドラえもんが「絵本の世界の奥深くひきこまれたのかもしれない」、その証拠として、シンドバットの絵本に「絵本入りこみぐつ」が写っていた。しかも、「あのクツはかたっぽだけじゃ帰れないんだぞ!!」と言われたので、のび太はしずちゃんに直接会ったわけじゃないということを思い出して、ドラえもんといっしょにしずちゃんの家に急いだ。
ママはふたりの姿を見て、「朝から晩まで遊びあるいて!!」と腹を立て、乱雑に散らばった絵本を見て、「いつまでも絵本なんか読んでるから、成績があがらないんだわ」と考えて、全部燃やしてしまった。
しずちゃんの家に行くとだれもいないので、部屋を探していると、ピアノ教室の先生からキャンプの件で電話がかかってきた。ドラえもんが出たが、すぐにのび太は「ガチャン」と電話を切ってしまった。
しずちゃんのママが買い物から帰ってきて、「なにかご用?」と尋ねられたが、ふたりは「い、いやべつに…」といって、大急ぎで家に帰って絵本の世界からしずちゃんを助け出そうとした。
家に帰ると、絵本が全部燃やされたことに気づき、ドラえもんにはもはやどうすることもできなかった。「タイムマシン」も本物の歴史の中をいったりきたりすることができるが、架空の物語の世界とは関係ないものであった。
のび太がドカンのある広場でジャイアンとスネ夫に、「しずちゃんは永遠にアラビアンナイトの世界にとじ込められてしまった」ことを報告した。しずちゃんのママに知らせたほうがいいということになり三人で出掛けた。
のび太がしずちゃんのママに会うと理由も言わずに逃げ出してしまった。ジャイアンもスネ夫も理由が言えず、「さよなら!!」といって帰ってきてしまった。
のび太が屋根の上でしずちゃんのことを考えていたら、しずちゃんが奴隷船に乗せられている夢を見たので、大急ぎで家に帰った。ドラえもんが真剣な顔をし、「宇宙完全大百科」の端末器を使って、なにかをアウトプットしていた。
「アラビアンナイトは全部で二百六十の物語が集められているんだ。これだけの話がみんな作り話だろうか。中には実話をもとにした話しもあるんじゃないかしら」と端末器で調べたら、アル・ラシード王と宰相ジャファルの二人が実在の人物であることがわかった。だからこの時代のアラビアにいけば、ひょっとしてアラビアンナイトの世界とのつながりが…」という考えが閃いた。
ドラえもんは専門家のガイドロボットをみんなに紹介すると、のび太からゆうべのオバケ!!」と言われてしまった。オバケとは失礼なと言いながら、時間旅行公社のミクジンであると自己紹介をした。
ミクジンは「スムーズな時間旅行のためには、その時代の人になりきっていただかねばなりません。外国の貿易商とおともがひとり、あとのふたりは召使いの役わり」と言いながら、身なりを整えてもらった。
ジャイアンが「おれたちも商人にしろ!!」、「だってにあわないもの」、スネ夫はドラえもんを指さし、「だって、この顔人間にさえみえないだろ!!」、ミクジンは「だいじょうぶ! バクダットは国際都市なので、いろんな国のいろんな人種がごった返してるから」と巧みに反論している。
ミクジンはこの時代のお金を手渡したり、伝染病や水あたりを防ぐための混合ワクチンを注射したりして、タイムマシンでラシード王が治めていた時代の真ん中あたりである、794年のバクダットに向けて出発した。
みんなはアラビアンナイトの世界と思って、出口から飛び出ると、川に「ザブン ドブン」と落っこちてしまった。ミクジンは「ちょっと出口がずれ、ここが有名なチグリス川です」と、目の前の大勢の行列に対して、「おお! あれが有名なキャラバンです」と自信たっぷりに紹介した。
しかし、よく見るとラクダもいなくて、なんだかイメージがちがい、ミクジンは「794年の京都で、桓武天皇が平安京をつくられ、都を移し、そのためのひっこし行列です。わが社の特別サービスで寄り道しました」と言い訳していた。
バクダットに到着すると、ミクジンは「手前の流れが有名なチグリス河、中央が円城三重の城壁の中には王宮や寺院が立ちならび…。人口二百万!! この時代では世界最大の都市といわれます」と説明すると、みんなから「社会科の先生と旅行してるみたいで調子くるっちゃう」と言われ、「どーせぼくは三流ガイドです!」とすねている。
ドラえもんは「この広いアラブ世界のどこからどうやってしずちゃんの消息をたずねていくか」といった問題を提起しても、あまり意見が出なかった。スネ夫のどうせならアラビア風にいこうじゃないかとなり、ランプの精、びんの中の魔神、空飛ぶじゅうたんへとエスカレートし、ドラえもんにそんな道具を出せということになった。
ミクジンが「ばーかみたい! ばーかみたい! ランプの精とか、空とぶじゅうたんなんて作り話だよ。ほんとのアラビアにそんなものあるわけないだろ。ばーかみたい」と軽蔑した。すると、夜の空に、「空とぶじゅうたん!? まさか!?」となった。