のび太と鉄人兵団Ⅵの4[★★★]

[初出誌] 『のび太と鉄人兵団』、「月刊コロコロコミック」19861月号、38頁、201コマ

[単行本]  『のび太と鉄人兵団』、「てんとう虫コミックス 大長編ドラえもん VOL.7」昭和62225日 初版第1刷発行、50頁、276コマ

[大全集] 『のび太と鉄人兵団』、「藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 32011730日 初版第1刷発行、50頁、276コマ

 

[梗概] 鉄人兵団の鏡面世界への誘い込み作戦は大成功であった。激しい抵抗をしていたのに人間どもはひとりもいないので、隊長は「まだまだ手ぬるい!! 人間どもがふるえあがって飛びだしてくるまで徹底的に攻撃しろ!!」と檄を飛ばしている。

 

 ドラえもんがひみつ道具『改良型山びこ山』を出し、「音だけじゃなく、光や爆風にも反応してこだまを返す」すぐれものであり、攻撃が激しくなればなるほと反撃も激しくなった。

 

 しずちゃんからリルルが逃げたと知らされたので、ドラえもんは「鏡面世界の秘密をばらされたらおしまいだぞ!!」と狼狽しながら、リルルを探すことを全員に伝えている。

 

 鉄人兵団側も、「われわれはこの島国の首都と思われるこの町に猛撃を加えた。地球人の応戦もめざましかった。ビルのかげから屋上から熱線をあびせてきた。…。人間がただの一人もみあたらぬとは、いったいどういうことだ!!」と不安が募ってきた。

 

ドラえもんはひみつ道具『たずね人ステッキ』を出し、のび太と一緒にリルルを探していた。のび太がリルルを探していると、廃墟の階段のところにリルルを発見することができた。

 

のび太が「しずちゃんが心配してたよ。さあ、いっしょに帰ろう」と声をかけると、リルルは「そうはいかないわ。あんなたちのインチキを総司令に報告にいくのよ」、「そ、そんなことしたらうつぞ!!」、「うちなさい!! わたしはメカトピアのロボットよ。祖国につくす義務があるの。だからどうしてもいかなくちゃならないの」

 

「やめてくれえ!! やめないとうつよ!! 本気だぞ!!」、「うちなさい! わたしをとめるにはうつしかないわよ。早くうちなさい!! うって!! いくじなし!!」と威圧し、ビームを浴びせてのび太を失神させている。そして、リルルはロボットに、司令部へ案内してもらっている。

 

 隊長は「連絡もせずいったい今までなにをいていた! 情報活動や基地設営の任務を忘れたのか!」と叱責した。リルルは「基地は作りました。小さな山のふもとです。その後…、地球人と数日いっしょにくらし…、人間というものを深くしるチャンスにめぐまれました」

 

 「それはでかした!! ではさっそくきくが…、地球人はどこにいるのだ。戦っても戦っても相手の人間の姿がみあたらず、ふしぎでならぬ。どこをさがせばどれいを手に入れるのだ。さあ…、答えろリルル」と詰問された。その光景を廃墟のかげでドラえもんとのび太はしっかり聞いていた。

 

 隊長が「ええい、じれったいやつめ!! なぜ答えぬ!!」、「……答えたくありません」、「なに……。今、なんといった?」、「人間をどれいにするのは…、悪いことです…」、「なにをいう! 人間などゴミみたいなものだ。なんでゴミなどに同情する」

 

 「ゴミなんかじゃありません。わたしたちと同じように、それ以上に複雑な心をもっています。自分でもふしぎなんです、こんなこと考えるなんて。けがをして人間の手当をうけているうちに…、わたしの思考回路がどうかなっちゃったみたい…」と真情を吐露している。

 

 隊長が「そうだ、おまえの考えはまちがっている。神がわれわれを宇宙の支配者と定められたのは、人間にかわってロボットの天国を作ろうとお考えになったからだぞ」

 

 それに対してリルルは「ロボットの天国ではないと思います。宇宙に住む者すべてにとっての天国だと思います。わたしたちはいつのまにか神のお心にそむく道を進んでいたのではないでしょうか。どれい狩りを中止てひきあげるべきです」と強く諫言している。

 

 隊長も「反逆だ!! 基地に連行し、とじこめておけ!! いずれこの手でバラバラに分解してくれる!!」と厳しく宣告している。

 

 リルルが司令部へロボットによって連行される途中、のび太はビーム砲によって手錠でつながれたチェンを切り、ドラえもんが「瞬間接着銃」でロボットを攻撃して、リルルを救出することに成功している。再度、しずちゃんの家にリルルを運び込んだ。

 

のび太はみんなに「リルルくんは命がけで鏡面世界の秘密を守ってくれたんだ。ぼくらのみかたになってくれたんだよ」と報告すると、ジャイアンが「ほんとに信用していいのかなあ…」と疑問視した。

 

リルルは「信用しないで。わたし…、どれい狩りは悪いことだと思うけど…。でも祖国メカトピアをうらぎることはできない…。どうすればいいのか、自分でも自分の心がわからないの」と訴えている。そして、ドラえもんにスモールライトで小さくしてもらって、リルルは鳥かごに入る決心をしている。

 

 鉄人兵団はニューヨーク、パリ、ロンドンを同時に攻撃したが、どの都市でも動くもの影一つ見あたらずという報告が本部に届いた。

 

 隊長が空中から日本の地形をみると、「なんだ、あれは!? メカトピアから観測した地形とまるで逆ではないか!! わかった! これは巧妙に作られたニセの世界だ。ここへくる時湖へ飛びこんだ。あの外にほんとの地球があるんだ!! 海外の兵団をよびもどせ!! 総力をあげて人間狩りを開始する!!」と指令を発している。

 

 鏡面世界のトリックに鉄人兵団が気づいたので、ドラえもんたちは湖へ行くことになった。しずちゃんとミクロスとリルルを残し、さらに、ドラえもんはしずちゃんに「スペアポケット」を手渡している。

 

 湖では、ドラえもんは実戦を覚悟し、「空気砲」、「ショックガン」、「スモールライト」、「ヒラリマント」、「即席落とし穴」、「山びこ山」を総動員して、「ゴオン ゴオン ゴオン」と近づく敵をできるだけ引き寄せて狙い撃ちにすることにした。鉄人兵団も「大部隊のまちぶせだ!!」と判断し、森の中から慎重に接近する作戦に変更している。

 

 鳥かごの中で、リルルは「どうしてこんなことになったのかしら。メカトピアを発展させることが宇宙の正義だと信じて働いてきたのに…。それがこんなおそろしい争いの原因になるなんて。どこかで進む道をまちがえたのかしら。それとも神がアムとイムをお作りになったことがそもそもまちがいだったのかしら」と口に出して反省していた。

 

 ミクロスが「ソーダ! 神サマガ作リソコナッタンダ!! ロクデモナイ先祖ヲ作ルカラロクデモナシノ子孫ガアバレマクルノダ。…、デキレバ大昔ノ世界ニイッテ、神サマニモンクイッテヤリタイゾ!!」と喚いた。

 

 それを聞いて、しずちゃんは「ひょっとしてあなたの今のひとことが、地球を救うことになるかもしれないわ」と思った。しずちゃんはリルルにもとの大きさに戻ってもらって、神さまにあいにいくため、大昔の世界へ出掛ける決心をした。

 

  ショックガンや空気砲だけでは決定的なダメージをあたえることもできないので、ドラえもんはザンダクロスを「ムク ムク ムク」と大きくして、戦いに参加させた。すると、多くのロボットもザンダクロスにはまったく歯が立たなかった。

 

 その頃、しずちゃんとリルルとミクロスはタイムマシンに乗って、メカトピアの建国記念日のあった三万年前の世界へ、ワープを繰り返しながら出発していた。

 

 ザンダクロスの大活躍により、敵方は海外から主力部隊が帰ってくるまで一時引きあげたので、ドラえもんは「壁紙秘密基地」を出して、休みながら、次の作戦を立てることになった。

 

 三人は人間に絶望して、アムとイムを作りだした科学者のもとへ急いだ。博士は「そんなことになるとは思いもよらなかった…。わしの作ったアムとイムはいい子なのに…。その子孫が頭脳に「競争本能」をうえつけたのが悪かったのか」としきりに反省していた。

 

 他人より少しでもすぐれた者になろうという心が競い合えばそれにつれて社会も発展していく。ただ、ひとつまちがえると、弱い者をふみつけにして強い者だけが栄える、弱肉強食の世界になる。

 

 博士は「わしの目ざした天国とはほど遠いものだ。頭脳を改造しよう。他人を思いやるあたたかい心を…。なんとか改造を完成するだけの体力が残っていればいいが」といいながら計画に着手した。

 

  秘密基地内では、スネ夫が「ソワ ソワ ウロ ウロ」し、「もうすぐ鉄人兵団の総攻撃があるってのに。しかも結果が見えてるのに!!」と喚いていた。のび太は「わかる! こんな気持ち何度か経験したからね。0点しかとれないのわかっててテストをうける時の気持ちだよ」と能天気に答えている。

 

 ドラえもんは「よけいなこと考えずに全力をつくすんだ! 思いがけない道が開けることもある!!」と檄を飛ばしている。

 

 博士は「この改造で三万年後のメカトピアはガラリとちがった国になるはずだ」としずちゃんに語りかけたが、それは鉄人兵団が消え、リルルも同時に消えることを意味していた。

 

 体のすっかり弱り切った博士は改造中、イスから「フラ ドタ」と落下してしまった。リルルが「博士教えてください、わたしが続けます!」と宣言して、「すばらしいと思わない? ほんとの天国づくりに役立てるなんて」といいながら懸命に改造を続けた。

 

 鉄人が森に火をつけ、焼き払って見晴らしをよくしていた。ものすごい炎はまるで地球が焼け落ちていくみたいであった。頼みの綱であったザンダクロスも何百何千台のロボットの攻撃を受け、倒されてしまい、四人の最後も刻一刻と近づいていた。

 

 しかし、突然、目の前のロボットが消え出した。リルルが改造に成功した証であり、リルル自身も「今度生まれかわったら…、天使のようなロボットに…」と言いながら、しずちゃんの目の前から消えていく運命にあった。しずちゃんが地球に戻ってきて、リルルの件を話すと、みんなは「え~っ。リルルが!?…」と絶句してしまった。

 

のび太がひとり残されて教室で反省していた。のび太が「もし生まれかわったらまた地球へきてくれないかな…。スパイなんかじゃなく…。観光旅行とか…」と夢想していると、窓の外をちらっとリルルが横切った。のび太は「まちがいない! リルルだよ! 生まれかわったんだ!!」と確信した。

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