のび太と鉄人兵団Ⅴの2[★★★]
[初出誌] 『のび太と鉄人兵団』、「月刊コロコロコミック」1985年12月号、36頁、213コマ
[単行本] 『のび太と鉄人兵団』、「てんとう虫コミックス 大長編ドラえもん VOL.7」昭和62年2月25日 初版第1刷発行、41頁、240コマ
[大全集] 『のび太と鉄人兵団』、「藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 3」2011年7月30日 初版第1刷発行、41頁、240コマ
[梗概] メカトピアからは「おまえの役は地球上に確かな足場を作り鉄人兵団を安全に誘導することではなかったか。とつぜん連絡をたったのはどういうわけだ。リルル応答せよ、応答せよ」と指令が続いた。
ドラえもんは「勝手の知らない地球へいきなり大軍がつけば、かなり混乱するだろう。ひょっとしてそのスキがこっちのチャンスになるかもしれない。リルルにはぜったいに誘導させないことだ」とみんなに考えを伝えていた。
ロボットが帰ってきたので、みんなは空気砲を使って反撃をしたが、のび太がロボットにつかまってしまった。しかし、ぼくらのザンダグロスがしっかりのび太を救助してくれたので、強い味方をえたドラえもんたちはロボットを町から追い払おうと決意した。
しずちゃんの右足をしっかりつかみ、ズルズルと引っ張るリルルに「あなたはいったいどういうロボット!? なぜわたしをおそうの!?」、「まだわたしの秘密を…、地球人にしられたくないの…」と言いながら、しずちゃんの首を絞めようとした。
すると、ミクロスがジャンプして、リルルの後頭部を「ゴチーン」とキックしたので、リルルは失神してしまった。しずちゃんが家にリルルを運ぼうとすると、ミクロスは「エエッ、手当スルノ? コンナ悪イろぼっとヲ」、しずちゃんは「悪いロボットじゃないと思うわ。きっと故障のせいよ。こんなボロボロになってかわいそう」と十分な手当を考えていた。
玄関のほうで「ガチャ」という音がするので、行ってみるとロボットが立っており、しずちゃんをつかまえようとした時、のび太が空気砲で「ボン」と攻撃してくれた。その後も、のび太はロボット狩りに出掛けている。
近くで、「ボン ボン ボン」と音が鳴り響き、しずちゃんは「よくわからないけど…。鏡面世界でなにかおそろしいことがおきてるみたい」と肌で実感することができた。
ドラえもんはひみつ道具『金属探知チョーク』で、うら山を含めて町内をスッポリ囲み、ロボットを探知できる体制を完成していた。のび太からしずちゃんがこの世界にきていることを聞き、みんなでしずちゃんの家に行くことになった。
リルルがしずちゃんの家にいて、大けがをして壊れかけていることを知ると、スネ夫やジャイアンは完全にこわしちゃえという強硬意見をはいた。しかし、しずちゃんの強い反対や、ドラえもんの直して鉄人兵団について、いろいろ聞こうという意見によって、ひみつ道具『メカ救急箱』で修理することになった。
この救急箱は「人間の薬みたいにぬるだけで分子が増殖し、切れた配線、ねじれたシャフト、欠けた部品を復元する」ものであった。
しずちゃんはリルルの手当に懸命につとめた。「ほんとにロボット…? 傷口がなかったらとても信じられない。地球人そっくりに作られてるわ。やはりスパイとしてあやしまれないためなのね」と考えながら。
夕食の時間になったので、みんなはスーパーに行って、自分の好きなものを手に入れた。のび太は「インスタントラーメンにカレーにチャーハン」、ジャイアンは「いっぺんハムをまるごとたべてみたかった!」、スネ夫は「いい肉だ、ぼくがうまいステージを焼いてあげよう」となった。
この鏡面世界は、ドラえもんたちが作ったので、ぼくらの町であり、自由自在になにをしてもかまわなかった。
しずちゃんは二時間ごとに薬を塗り替え、徹夜の覚悟で手当を続けていたら、リルルが「イタ!…」と叫んで、「ガバ」とベッドから起き上がった。リルル「わたしをどうする気!?」、しずちゃん「安心しなさい。ちゃんあんと手当てしてかならず助けてあげるから」、「助ける!? どうして!?」、「ほっとけば死んじゃうじゃない」
「死んじゃう…? ああ、こわれるってこと? わたしがこわれたってあなたになんの関係があるの?」、「…あんまりしゃべりすぎないで…。動くと傷がふさがらないわよ」との会話が二人の間で続いた。
ミクロスがドカンの広場でみんながバーベキューパーティーを開いているので、しずちゃんを呼びに来た。みんながおいしく食べているとき、ミクロスは「ギ…ガ…ガ…ガキ…」と肉をのどに詰まらせ、その上、スネ夫から「きみはものを食べるように作られていない」と言われてしまった。
しばらくすると、「ビ・ビ・ビ・ビ・ビ」と金属探知機の警報が鳴り響いた。ザンダクロスを始め全員が現場に急行すると、ミクロスがうっかりチョークの線を踏んだことが判明した。
明日に備えて、いつでも飛び出せるよう服は着たまま寝ることになった。ドラえもんはなにかいい作戦がないかと、夜遅くまで考えていた。のび太も目がさえて、なかなか眠ることができなかった。
しずちゃんが包帯を交換していると、リルルは「わたしを助けること後悔するわよ。もうすぐ鉄人兵団がきて、地球人狩りがはじまるのよ。あなたたちはつかまっちゃうのよ」、しずちゃん「地球人をつかまえてどうしようというの?」、「メカトピアへつれていくの。わたしたちのロボットのために働かせるのよ。どれいとしてね」
「どれい!? 人間がロボットのどれいに!? そんなむちゃな話きいたことないわ!!」、「なにがむちゃよ。この宇宙を支配するのはロボットよ。人間みたいな下等生物が支配者のために働くのは、あたりまえじゃない。これ、神が定められた運命なのよ」、「かってなこといわないで!! ロボットは人間のために、人間が作ったものよ! あんたたちだって最初はだれかに作られたんでしょ!」との論争が続いた。
リルルは「はるか昔、地球人が生まれるずっと以前…、銀河のかなたに栄えていた人間たちがいたの。でも神はその人間たちを見放されたの。わがままでよくばりで憎みあい殺しあい…、神は無人の星に降りたちアムとイムというロボットを作り、おまえたちで天国のような社会を作りなさいと命じた。
人間は滅び、ロボットは栄えた。そのうち、ロボット社会の中で、支配する者とされる者が現れたの。…。でも近代になってロボットはみな平等という考え方が広まり…、ついに奴隷制度が廃止されたのよ!!」と長い歴史の流れを語った。
リルルが「新しい労働力として人間を使うことにしたわけよ。わかった? ロボットは神の子。宇宙はロボットのためにあるのよ」と話すと、しずちゃんが「まるっきり人間の歴史をくりかえしてるみたい。神さまもがっかりなさったでしょうね」と言った感想を漏らした。
すると、「なんですって!? ロボットが人間のまねをしてるというの!? 取り消しなさい!」と立ち上がり、しずちゃんにビームを浴びせ、吹っ飛ばしたけれども、エネルギーが弱くて、しずちゃんは軽いやけどをおったが、やがて、リルルは「バタ」と倒れてしまった。
「もうあんたなんかしらない!!」と飛び出したしずちゃんであったが、しばらくすると、「やっぱりほっておけないわ…」と考え、リルルの手当を懸命に続けるのであった。
次の朝、ドラえもんにすばらしいアイディアが閃いたので、みんなを集めて緊急会議を開くことになった。そのアイディアとは高井山の奥にある大きな湖に「逆世界は入りこみオイル」を流し、巨大な出入り口を作るというものである。
そこから鉄人兵団を鏡面世界に誘い込み、ぼくらだけで戦い、やつらに大暴れさせて、ひとりずもうをとらせる作戦である。こちらの世界ならどんなにこわされても平気であるから。
ザンダクロスの脳が部品集めの信号を、大きな湖から発信することになった。その間、リルルにじゃまされないように、ドラえもんはひみつ道具『コンピュータの機能を二十四時間眠らせる薬』をしずちゃんに手渡していた。
しずちゃんがリルルの傷を手当てすると、すっかり傷もふさがり、しずちゃんの服を着てもらうことになった。しずちゃんが「でもまだ動き回っちゃだめ! せっかくなおりかけた傷が開いちゃうから」と注意した。
すると、リルルは「…人間のすることってわからない。どうして敵を助けるの」、「ときどきりくつに合わないことするのが人間なのよ」と言いながら、口を「アーン」と開けて薬を飲んでもらっている。リルルはすぐ薬を「ポロ」と口の外へ出してしまった。
ドラえもんとのび太はオイルを広い湖一面にまき、ジャイアンとスネ夫は『瞬間接着剤』を使いながら、攻撃してくるロボットに対応していた。ザンダクロスが昼間から夜にかけて、「ピ・ピ・ピ・ピ・ピ…」と信号を送りまくると、湖面が「シュパ シュパ シュパ シュパ」と輝き、大量のロボットが「ザー ザー ザッ」と侵入してきた。
ドラえもんはザンダクロスの信号を止め、スモールライトで小さくして、いざというときの隠し球にすることにしていた。
鉄人兵団が上陸すると、隊長は「ここがめざす地球だ!! 全軍ただちに進撃!! まずは大都市を破壊する。地球人どもをふるえあがらせるので。その後どれい狩りを開始する」といった指令を発している。