のび太の海底鬼岩城Ⅵの2[★★★]
[初出誌] 『のび太の海底鬼岩城』、「月刊コロコロコミック」1983年1月号、30頁、152コマ
[単行本] 『のび太の海底鬼岩城』、「てんとう虫コミックス 大長編ドラえもん VOL.4」昭和58年6月25日 初版第1刷発行、36頁、169コマ
[大全集] 『のび太の海底鬼岩城』、「藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 2」2011年1月30日 初版第1刷発行、36頁、170コマ
[梗概] 「カメレオンぼうし」のボタンを「カチッ」と押すと、「スウ ムク ムク ムク ムク ムク」と地面にもぐり、「カバーが地面そっくりになって、その下に超空間ができる」ようになっている。
別のボタンを押すと、天井がマジックミラーになり、「中から外はみえても、外からはただの岩にしかみえない」 エルたちが懸命に捜索していても、地面にしみこんだみたいでなにも発見することはできなかった。
ドラえもんたちが進むと超空間も進み、それにつれてカバーも自由自在に変形していくので、国境を無事こえることができた。エルの仲間は「陸上人は魔法使いか!!」といら立っていたが、エルはここが海の底のどん底だってことを知っていたので、すべての探知機を下に向けて旋回を続ければ、かならず見つけることができると自信を持っていた。
海溝の端に到着したので、「カメレオンぼうし」は垂直に動けないので、しばらく外の様子を見ることにした。やがて、バトルフィッシュがやってきて、エルの乗りものを「ズガーン ズガガン ズガン ズガガガガ ズガン」とはげしく攻撃したので、「操縦系統ズタズタだ! コントロール不能!! 砲塔全壊!! 応戦不能!!」と叫んで、「ズン」と不時着陸してしまった。
バトルフィッシュが引き返してとどめを刺す気であるので、ジャイアンはボタンを押し、「カメレオンぼうし」を「ムク ムク」と地上に出した。「さあこい!! おれがあいてだ!! たたきおとしてやる!!」とバトルフィッシュに向かって叫んだ。
しかし、ドラえもんがさっとめずらしく「スモールライト」を出して、「ビカ」と浴びせたので、バトルフィッシュは「ガ・ガ・ガ ビ・ビ・ビ ジジ… ピクピク」と小さくなって、金魚ばちに捕獲されることになった。
エルはきみたちが助けてくれたのかと驚いていると、国境監視所からの急報で応援に駆けつけた海底人は「動くな! 陸上人ども!! エルおてがらだったな」と言葉をかけてきた。ジャイアンが「おい、まってくれよ、エルのピンチをすくったのはおれたち…」と訴えると、「動くな!! ジャッ」と攻撃される始末であった。
地下牢では、ジャイアンが「こんなばかな話しってあるか!! あのままかくれてれば、おれたちはにげられたんだぞ! エルを助けたばっかりに…、みろ、つかまっちゃったじゃないか!! 最初にとびだした、ばかやろうはだれだ!! ……おれだ。おれのバカ バカ バカ!!」となってしまった。
会議では、エルが勇敢で心優しい少年の無罪の判決を強く訴えていた。しかし、検事側は「おわれていることを忘れるとは、勇敢というよりうっかり者というべきではないか。あるいはいいかっこしてみたかったとか」と主張した。
エルは「そんなうけとり方しかできないんですか…。危機におちいっている者を、見殺しにできないという人間らしい心をそんなふうに…。同じ海底人として、ぼくははずかしい!!」と激怒すると、「ぶれいな!! 法廷ぶじょく罪で、たいほするぞ!!」と訴えられてしまった。
議長は「さばきは公平であるべきだ。五人の少年たちの英雄的な行動はみとめよう。ただし…、かれらが約束をやぶり、脱走し国境をこえた事実もみおとしてはなるまい」と付け加えた。
「ムー刑法で、国境やぶりの罪は死刑と定められております」、「そんなの一万年前も昔に定められたカビの生えた法律だ!!」、「陸上人は魚をとりつくし、絶滅させようとしている。工場の排水や放射性廃棄物など、きたないものを流しこんで海をよごしほうだいだ。あつかましくも深海へまでのりこんで資源をうばっていく!! ムー連邦のために、死刑を求刑いたします!」、「そ、そんな!!」となった。
そのとき、「グウン ズズン」と巡視船303が不時着陸をし、「鬼岩城が活動を始めました!!」という緊急連絡を告げた。
「海底火山が大爆発し、それを鬼岩城の目と耳がキャッチ…。警報が響き、バトルフィッシュのむれがまいあがり、鬼岩城は七千年ぶりに臨戦態勢に入ったもよう」、さらに、「地震計は、バーミューダ沖の海底に新しい火山脈の発生をみとめ、近々さらに大きぼな噴火を予測している」との重大な報告であった。
もし鬼岩城の近くで海底火山の大噴火があれば、「鬼岩城は七千年の眠りからめざめ、おそるべき鬼角弾を世界のすみずみまで雨のようにふりそそぐでしょう…、われわれにはふせぐてだてもありません」という最悪に事態に立ち至った。
鬼岩城に潜り込んでポセイドンを破壊することは不可能であり、七千年の間に何百何千人の勇士がしのびこもうとしても…、むなしく死んでいった。
「永遠のやみにとざされ、死の壁にかこまれ、死の軍団に守られた死者の国」へ潜入する方法はエルによれば、たったひとつの方法しかなく、ドラえもんのふしぎな力を借りることしかないという結論になった。死刑の判決が出たけれども、直接首相から「世界を救ってほしい」とドラえもん一行は頭を下げられた。
一行はバギーに乗って、バーミューダ沖まで行くことになった。「おいバギー、もっとスピードをださないとまにあわないぞ」、「コレガセイイッパイダヨ! 六人ノルナンテムチャクチャダ」、「このやろ! グズグズいうとスクラップにするぞ!!」、「オー、ヤレルモノナラヤッテモラオウジャン。ソノアトオマエラ歩イテイクカ」とお互いけんか腰になった。
しずちゃんが「おねがい! バギーちゃん、いま、世界はたいへんなことになっているの。それをくいとめるために、あたしたちいくのよ。あたしたちをそこまで運べるのは、バギーちゃん、あなただけなのよ」と励ましたので、「バルル ギューン」とたった一日で、南アメリカのはしっこまでくることができた。
「バギーちゃんががんばってくれたおかげよ。ほんとにありがとう。ゴシゴシ」と車を磨くと、「シズカサンシンセツ、ヤサシイ…。今度ノ旅行、イヤデイヤデシカタナイ。デモ、シズカサンノタメニダケガンバル。ボク…。シズカサンノタメナラコワレテモイイ」、「バギーちゃん…」となった。
夕食後、エルが今回の鬼岩城に乗り込む状況をくわしく説明した。「海底には陸上人がまだ石器時代の頃から、高い文明社会を築き、海底には何百という国がちらばっていたが、それらはぜんぶ二つの大きな連邦に属していた。太平洋にムー、大西洋にアトランチスだ」
「二つの連邦ははげしく争った。軍備をふやし新兵器の開発をいそぎ、アトランチスが鬼角弾を作りだした」 そして、「アトランチスはムーをおどしにかかった。降伏しなければ太平洋を鬼角弾でやきつくすというのだ。ただのおどしではない。無数の鬼角弾がボタンひとつで世界のどこへでも発射されるよう配備されていたんだ」
「アトランチスの周囲(バーミューダ三角海域)をバリヤーで囲んだ。このバリヤーは目にみえずふれることもできないが、海底から空までのび、しかも、絶対放射能を通さないものであった」 しかし、アトランチスは核実験の失敗で国中に放射能が広がって滅びてしまった。バリヤーのおかげで、外の世界はぶじであった。
しかし、国は滅びても鬼岩城のポセイドンや鬼角弾は残ったままであった。ポセイドンは自動報復システムのコンピューターであり、敵から攻撃を受けた時すぐに仕返しをする装置でもある。
「バーミューダ海域の海底火山が噴火すると、ふきだすマグマ! とびちる岩! ゆれる大地! ポセイドンはこれを敵の攻撃とうけとるだろう。すかさず鬼角弾がばらまかれ、地球は…、虫一匹、草一本残らない死の世界になるんだ!!」という結末になるのは確実であった。
三角海域に近づいたので、敵をさがし、攻撃するだけの機能を持ったロボットに操縦されたバトルフィッシュが「ゴオオン ゴオオン」とウヨウヨと飛びだした。バリヤーの内側は永遠のやみが支配する世界で、テキオー灯の力のおよばない場所である。
ドラえもんは捕獲して金魚鉢に入れていたバトルフィッシュにペンキを吹き付けて放すと、「ピコ ピコ ピコピコ」と泳いで、バリヤーに接触し、すごい閃光を発して爆発した。すると、バトルフィッシュが「ウヨ ウヨ」集まってきた。ドラえもんは「カメレオンぼうし」を出し、地下に潜って、鬼岩城へ前進した。