のび太の大魔境Ⅰの3[★★★]

[初出誌] 『のび太の大魔境』、「月刊コロコロコミック」19819月号、34頁、216コマ

[単行本]  『のび太の大魔境』、「てんとう虫コミックス 大長編ドラえもん VOL.3」昭和60925日 初版第1刷発行、37頁、237コマ

[大全集] 『のび太の大魔境』、「藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 12010929日 初版第1刷発行、37頁、237コマ

 

 [梗概] スネ夫は「昔、地球は謎と神秘にみちていた。かぎりなくつづく密林。うす暗いその奥には、猛獣や毒蛇がキバをむき、人間をよせつけなかった。

 

  雲の上にはるかにそびえたつ白い巨峰。南極や北極。氷にとざされた死の世界」と論じたあと、「それが、いまはどうだろう。ジャングルも砂漠も極地も高峰も、深海底さえも…、地球のすみずみまで探検しつくされ、人間のいかないところはない。ぼくらには謎や神秘のかけらさえのこされていないんだ!!」とのび太に強く訴えている。

 

 スネ夫は「この広い地球にはまだ、どこかに魔境とか秘境とかがのこっていると思う」ので、ドラえもんに「今年の夏休みは、大探検旅行をみんなで、やろうと決めた」ことを伝えてほしいと、のび太は頼まれてしまった。

 

  その話をしたが、ドラえもんは地球のすみからすみまで探検されつくしたと、いいながら逃げ回り、机の下に隠れてしまった。すると、机の下から、去年ドラ焼きを買いに行こうとしてなくし、すっかりあきらめていた百円玉が出てきた。

 

 のび太はそれを見て、魔境だってあきらめずに徹底的に探せば、どこかにまだのこっているかもしれないと、強く主張している。

 

ドラえもんはひみつ道具『自家用人工衛星』を打ち上げ、地球をまわりながら、写真を送ってもらうようにした。アフリカに的を絞り、ジャングル地帯の誰も知らない秘境を探し出すため、インド洋から大西洋の間のアフリカ大陸を何度も何度を横断させながら撮影を開始することにした。

 

 のび太がママから頼まれて買い物に出掛けると、ドカンのある広場に、きたないイヌが立っていられないほど腹を空かして横になっていた。のび太がスーパーで買い物を終えて戻ってくると、まだ座っていたので、買ってきたソーセージを与えても食べようとしなかった。よくみると、汚れているけれども、どことなく上品な犬であった。

 

 ジャイアンとスネ夫がやってきて、秘境の件はどうなっているかと質問されたので、「いまアフリカを調べてるんだ。何かありそうだから。…。秘境が見つかりしだい出発しよう」と言って別れた。

 

 きたない犬はのび太に「ヒョコ ヒョコ」と玄関までついてきた。「ママが絶対に反対なんだよ。わかってくれよ」と頭をなでると、玄関からは入ってこなくなった。

 

 衛星からの写真が送り続けられていたが、アフリカ大陸の写真が何枚ぐらいになるかと尋ねると、九百三十万枚と言われてのび太は目を回してぶっ倒れてしまった。やるしかないと考えていると、玄関の犬が部屋へ入ってきたので、ひとまず押し入れに隠すことにした。

 

 ママがすごい形相で入ってきたので、のび太が犬を家に入れたことに気づかれたと思い、「ごめんなさい」と謝っていると、そうではなく、ママが野比家の全財産の入っていた通帳とハンコを銀行の帰りに落としたということであった。

 

 ドラえもん、のび太、犬とママで落とし物を捜しに出掛けた。ママはボーッとして要領を得ないので、犬がにおいを「クン クン」かいて、みんなを誘導していた。最初に吠えた場所は氷アズキを食べた喫茶店であり、次は本屋さん、宝石店のウインドー、婦人服店の順であった。

 

 突然わき道にそれたのは火事ためであった。ママがいっぱいのヤジウマに、おしまくられてある家の塀の前で倒れてしまった。すると、犬がそのあたりを調べて、ママのなくしたバッグを口にくわえて現れた。

 

 のび太が「恩返しのつもりでうちにおいてあげない?」と申し出ると、許可が出て、大っぴらに犬を飼うことができるようになった。のび太がイヌを洗いながら、「ずっと腹ぺこだったから、きみの名はペコにしよう」と決めている。

 

 パパが家に帰ってくると、「ワン ワン」とイヌが出てきたので、「うちで犬をかうって!?」と驚くと、ママが「かわいそうなのら犬をみすごしにできないでしょ!!」とめずらしく強く主張している。

 

 夜中に夢から覚めると、「少年よ。魔境探検を志す少年よ。もとめる世界はかならずアフリカにある。ジャングルの奥深く深い霧にとざされた高い山に、大いなる白き神像が、巨万の財宝とともに、きみたちをまっている」といった声が聞こえてきた。ドラえもんやペコに聞いても、あやしいものがきた気配は全くなかった。

 

 衛星写真には、アフリカのサバンナ地帯が写りだした。ゴマジオのようなものはゾウの大群であることがわかった。平凡な景色ばかりなのでしばらく電送をストップすることにした。ペコは部屋で写真を見ていると言ったが、ひさしぶりに散歩に連れ出すことにした。

 

 しずちゃんと出木杉が学校のうら山に散歩に来ていたので、魔境探しの話をしたら、出木杉は「アメリカやソ連がスパイ衛星をバンバンあげてさぐりっこしてるからね、もう新発見のみこみはないだろうね」と否定的な意見を述べている。

 

 すると、出木杉に対して、ペコは「ウ~…ワン ワン ワンワン」とはげしく吠えつき、しずちゃんから「いいこだからほえちゃだめよ」と頭をなでられている。

 

 すっかり寝込んで家に戻ると、ストップさせていた電送が動いており、ペコが一枚の写真をくわえて、「ワン ワン」とのび太のところへ持ってきた。拡大して、しかも、ひみつ道具の『六面カメラ』で写すと、アフリカの奥地にある石像が写っていた。

 

 早速、出木杉に調べてもらうと、東アフリカ、ザイールのコンゴ盆地の奥、果てしなくジャングルが広がる「ヘビー・スモーカーズ・フォレスト(タバコ好きの森)」であると判明した。NASAの命名した場所であり、コンゴのジャングルに一部分いつも雲がかかって衛星写真が撮れないところであるが、ドラえもんの衛星は雲なんかじゃまされないから、はっきり写ったものであった。

 

 ついに魔境を発見したので、次の朝、五人プラスペコの探検隊は土管のある広場にセットした「どこでもドア」の前に整列していた。「どこでもドア」でいきなり目的地に着いたらつまらないので、目標の百キロ手前に向けて出発を開始した。「ワン ワン ワン」と吠えるペコが先頭に立って、みんなを引っ張るような門出であった。