のび太の宇宙開拓史Ⅰの1[★★★]

[初出誌] 『のび太の宇宙開拓史』、「月刊コロコロコミック」19809月号、36頁、220コマ

[単行本]  『のび太の宇宙開拓史』、「てんとう虫コミックス 大長編ドラえもん VOL.2」昭和59325日 初版第1刷発行、37頁、227コマ

[大全集] 『のび太の宇宙開拓史』、「藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 12010929日 初版第1刷発行、37頁、227コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 「?」、「歩くとなんだかフワフワする」コマ挿入[215(5)]

「紹介するわ。ロップルくんです」コマ挿入[21(6)]

「おっそろしく遠くはなれた二つの場所が、くっついちゃったらしいよ」が「こりゃたいへんなできごとだぞ!!」に変更[216(3)]

 

「おたがい聞いたこともないほど遠くはなれたふたつの場所がくっついちゃったんだ」コマ挿入[216(4)]

「ロップルくん原因に心あたりは?」、「見当もつかないけど…………、ひょっとして…………」コマ挿入[216(5)]

 

「ヒャ……」、「ややこしそう………」コマ挿入[219(2)]

「あれでつつむと、その中だけ時間をさかのぼるんだ」コマ挿入[219(6)]

「するとつまり……、故障する前の状態までもどるわけ」、「そのとおり!」コマ挿入[219(7)]

「地球にはふしぎなものがあるんだなあ」、「まあね」挿入[219(8)]

 

 [梗概] のび太がSFみたいな、いやにはっきりした夢を見たあとに、ジャイアンが急用でのび太に会いにやってきた。その急用とは、ジャイアンズ球場を隣町の中学生にのっとられるというものであった。

 

 ジャイアンやスネ夫にのせられて、のび太が「相手が中学生だろうがなんだろうが、ぼくらの権利は、だんことして守るべきだ!!」と強く主張したため、のび太はジャイアンズの代表として中学生と交渉する役を引き受けることになってしまった。

 

 のび太が空き地の交渉に行くと、相手のボスから「おれたちにとってはな、野球が命なのだ。ここしかやるところがないのだからしかたがないだろ」と言われた。

 

 のび太が「野球部なら学校のグランドでやれば」と尋ねると、相手が「野球部に入れてくれない」と答えるので、のび太はつい口を滑らして、「野球は大すきなのに、へたくそでいれてもらえないんだね」と言ってしまった。

 

 すると、「おれたちのいちばんいたいこといったな」と怒り、のび太を追いかけ、後頭部に「ガツン」とボールをぶつけている。のび太は「フラ~」となって工事中の大きな穴に落っこちて、失神してしまった。

 

 失神中、のび太は「ロップルくんとチャミーの乗った宇宙船が高速で敵から逃げるため、ワープを繰り返したので、超空間で故障してしまった。そのため、見たこともない世界につながったと嘆いていた」といった夢を見ていた。

 

 のび太が目覚めると、ジャイアンに見つかり、球場の交渉がどうなったかを聞かれた。苦し紛れに、「ジャイアンにはが歌があるじゃないか!! だからさ、これからは歌ひとすじに…」と話すと、ジャイアンも「おう、歌こそわが命だ。歌手をめざし、がんばるか!!」という心境になった。

 

 しかし、スネ夫が「リサイタル会場は、あの空き地だよ」と一言話すと、「ごまかすな!!」と、二人に追いかけられることになった。

 

 しずちゃんが「これはみんなの問題よ。かわりの空き地をさがしましょうよ」と、ふたりを何とか説得してくれた。家に帰って、ドラえもんに今までの経過を話し、ドラえもんに空き地の件を頼むと、「じょうだんいうな!!」と拒絶されてしまった。

 

 のび太が、「ドラえもんにできないわけがない。もしできなければ、ぼくのたのみ方が悪いんだと…」とみんなに思われると、泣きながら語り出した。しかし、ドラえもんも空き地を探す件では、妙案が浮かばなくて、思案に暮れてしまった。

 

 空き地を探すために、のび太は「どこでもドア」の使用を提案したが、「どこでもドアは、十光年以内の星じゃないととどかない。その範囲には、野球をやれる星なんかない」というのがドラえもんの答えだった。いい考えも浮かばないので、二人は寝ることにした。

 

 宇宙船では、食べ物もなくなってしまったので、チャミーが宇宙船の倉庫の外の世界を調べ出した。倉庫のドアがどうしても開かないので、チャミーはトンカチで、思いっきり「バタン」と叩いて外に飛び出ることができた。

 

 のび太はふとんごと吹っ飛ばされ、台所のほうで「コト コト コト…」と音がするので、起きて行ってみると、夢の中に出てきたチャミーが冷蔵庫の前で食料を袋につめていた。

 

 追いかけると、空中をすばやく逃げ回り、なかなかつかまらなかったが、地球の空気が汚れていたため、息が詰まり、屋根の上で、チャミーは大の字に居直って、「ニルナリヤクナリスキニシテ!!」と絶叫していた。

 

 チャミーやロップルくんはのび太の夢に出てきた動物や人間とそっくりであった。ドラえもんによれば、「精神感応だ!! ロップルくんの必死の思いが、なぜか、遠い星空をつたわって、きみにとどいたんだ」というものであった。

 

 宇宙船の倉庫のドアがのび太の部屋とつながっているので、宇宙船に入るとロップルくんに会うことができた。ロップルくんは地球のことを、ドラえもんはコーヤコーヤ星について、お互いに全く聞いたこともなかったと語っている。二つの遠く離れた場所がくっついたのは、ロップルくんによれば、ワープの失敗が原因ではないかと思われた。

 

 宇宙船のメカルームに案内され、宇宙船が飛行できない原因を次元振動ヘッドのシャフトのねじれと説明されたが、ドラえもんもチンプンカンプンであった。のび太の「この機械、こわれている前はこわれてなかったんだろ」をヒントに、「タイムふろしき」で機械を包むと、宇宙船は動き出した。

 

 ドラえもんとのび太は畳の穴が消えないうちに、「バアン ドタ ズル ズル」とのび太の部屋に戻ることができた。宇宙船が動いたけれども、のび太の部屋に戻れたのは、ねじれた空間の一部がつながっていたためであった。

 

 空き地の件で、ジャイアンとスネ夫はのび太を探していたので、のび太は学校帰り裏山に行き、遠回りして家に帰ると、ふたりが玄関で待っていた。空き地の件を追及されたが、芳しくなかったので、ひとまずドラえもんはひみつ道具『ミニ野球場とミニプレーヤー』を出して、なんとかこの難局を切り抜けている。

 

 しかし、ジャイアンから、「ひろ~い、地面の上で、思いっきり汗にまみれてかけまわりたいんだよ。たのむよ、ドラえもんだけがたよりなんだよ~」と泣きつかれている。

 

 のび太とドラえもんはチャミーやロップルくんがどうなったかを心配していた。昨日のことを思い出して、タタミをめくってみると、まだつながっており、宇宙船は着陸した状態で、だれも乗っていなかった。

 

 ふたりが出口を探していると、ボタンがあったので、スイッチを押すと、エレベーターみたいに上がって、扉が開いた。すると、目の前に赤い月と青い月が輝き、紫色の気味の悪い夜であった。

 

  町どころか、家一軒なかったので、ぼくらの空き地にしたら、野球でもなんでもできると思った。突然、地面から四つ足の魚らしき生き物があっちからもこっちからも、「ムク ムク」出てきた。そして、しばらくすると、「ドドドーードドドド ドド ドドド…」と海もないのに大津波が押し寄せてきた。