のび太の恐竜Ⅲの5[★★★]

[初出誌] 『のび太の恐竜』、「月刊コロコロコミック」19803月号、58頁、293コマ

[単行本]  『のび太の恐竜』、「てんとう虫コミックス 大長編ドラえもん VOL.1」昭和581225日 初版第1刷発行、74頁、372コマ

[大全集] 『のび太の恐竜』、「藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 12010929日 初版第1刷発行、74頁、372コマ

 

 [梗概]五機の飛行艇で追跡され、ドルマンスタインの「ビッ」と発射した弾丸がイカダを直撃して、真っ二つに割ってしまった。さらに、ジャイアン、スネ夫、しずちゃんの乗ったイカダは向こう岸に「ザバ」と激突し、全員川の中に放り出されてしまった。

 

 ドラえもんとのび太の乗ったイカダでは、急流の中でどうすることもできなかった。急流はドンドン速度を増し、巨大な滝に近づいていた。ドラえもんが「交通安全お守り」を辛うじて出したが、「ゴオ ドオ ドオ ドオー」と、滝の上から真っ逆さまになって滝壺に墜落してしまった。

 

 「ザア ザア ザア」と激しい雨が降り出し、岸に打ち上げられたピー助が箱から出て、「ピュイ ピュイ ピュイ」と鳴いて、意識を失っていたのび太を覚醒させている。ドラえもんのお守りが効いたのか、しばらくすると元気なドラえもんと対面することができた。空中では恐竜ハンターの飛行艇が何機も執拗に捜索を続けていた。

 

 のび太はピー助を箱に入れて、待っているようにと指示を出しながら、飛行艇の飛んで行った方向に敵の地下基地があると確信して、ドラえもんの一緒に捜索に出掛けている。つかまった三人は地下基地で、「考えを読みとる装置」を頭に装着されて検査を受けていた。検査の結果、「カエル…ニホンヘ…タイムマシンヲノットッテ…」とディスプレイにアウトプットされた。

 

 黒い服の男は「子どもだと思ってあまくみていたら」と激怒していたが、ドルマンスタンは「ふたりが生きていればかならず基地をやってくるぞ」と判断していたので、冷静になった黒い服の男は「工夫をこらして大歓迎してやりましょう」と答えている。

 

 そのころ基地の入り口が分からなくて「ウロ ウロ」しているふたりをモニターでしっかりと確認できたので、黒い服の男は入口を二人にそれとなく教えている。

 

 ドラえもんたちが木の幹でなにか光っているので、そちらのほうへ移動すると、光が消えて、「ゴトン ゴトン ゴトン」と地面がへこみだした。そして、秘密基地の入り口がドラえもんの目の前に現れた。

 

 その時、空中では、タイムパトロール本部の探査用「タイムボール」が「ルルルル…」と飛行し、「カシャ カシャ」と何枚も写真を撮影していた。

 

 入口はしっかりと閉まっていたが、ドラえもんはひみつ道具『通り抜けフープ』を使って、難なく基地の通路に潜入することに成功している。ドルマンスタンたちは逐次モニターで二人の行動を看視続けていた。黒い服の男はボスに、あの通路は競技場に通じており、「これからおもしろいショーをお見せしましょう」とほくそ笑んでいた。

 

 メガロポリスのタイムパトロール本部には、発信地、白亜紀の北米からタイムボールより緊急の通信が届いた。本部の巨大モニターには人工の建造物が映し出され、恐竜ハンターの秘密基地であると確認された。本部長は直ちに、何機もの巡視艇に出動を命じている。

 

 ドラえもんとのび太が地下深くめぐらされている通路を歩いていると、前方に明かりが見えたので入ってみると、高いところに三本のロープでつるされた三人を発見することになった。すると、マイクから黒い男の歓迎の言葉が流れてきた。

 

 のび太が「しずちゃんたちをおろせ!!」と叫ぶと、黒い服の男は「その前にピー助をわたしたまえ」と命じたので、「ピー助は外においてきたんだ」と返事している。黒い服の男はその言葉を信じないで、小さくしてポケットに入れているんだろと疑っていた。

 

 まもなく、しきりの鉄壁が「ギ・ギ・ギ…」と開きだし、中の恐竜が「ゴガア」と咆哮し、壁に「ガン ガリ ガガン」と体当たりし、さらに、壁をかじりだした。その恐竜はティラノで、しかも、腹ペコで血に飢えて、とびらが開くのを待っていた。

 

 再度、黒い服の男はピー助をわたしたまえと命じたが、のび太も前と同じ返事を繰りかえしている。さらに、のび太は「ほんと!! 信じて!! 身体検査をしてよ!!」と訴え、ドラえもんも「扉しめて!!」と真剣に頼んでいる。

 

 黒い服の男も「ほんとに持っていないのか?」と信じ始め、ドルマンスタンはピー助よりも目の前の光景に関心を持ち出した。扉が完全に開くと、巨大なティラノが「ズシ」と前に進み出て、「ガ・ガ…」と咆哮しだした。

 

 「ズシ… ズシ…」と近づいてくると、ドラえもんは慌てふためいて、おなじみのワンパターン行動である四次元ポケットから関係のないものばかり、次から次へと取り出している。最後の「ズシ」の一歩で、のび太は吹っ飛ばされ、ドラえもんはティラノの足の指の間に挟まれて、大きく舌を出している。

 

 ロープで吊らされた三人の目の前で、ティラノが「アギャ」と咆哮し、しずちゃんの吊らされたロープをツメで引っかけて、「スウ」と口の方へ持っていった。しずちゃんはティラノの大きく開けた口の前で、「神さま」と呟き、のび太はティラノの尻尾を「こいつめ! こいつめ! しずちゃんをはなせ!!」と泣きながら叩き続けている。

 

 すると、ティラノの尻尾が「パタ」と揺れたので、のび太は意識を失って倒れているドラもんのそばまでぶっ飛ばされて、「ドタ」と落下してしまった。

 

 ティラノが尻尾を「パタ パタ パタ パタ」としきりに振り出したので、ドラえもんは前に「桃太郎印のきびだんご」を与え、火口湖まで運んでくれたティラノだと気づいた。

 

 おとなしくなった、ティラノの頭の上にドラえもんとのび太は乗って、競技場のガラス張りの特等席で事態を見守っていたドルマンスタンと黒い服の男を「ハンターたちをやっつけろ!!」と叫びながら、積極果敢な攻撃を開始した。

 

 競技場には、「フォーッ フオー」と警報が鳴り響き、たくさんの部下たちが手に熱線銃を持って集まってきた。部下たちが熱線銃を発射しても発射してもすべて、ドラもんの取り出したひみつ道具「ヒラリマント」にはね返されてしまった。

 

 ドラえもんが「地下基地をふみつぶせ」とティラノに命令しているとき、タイムパトロールの三機の巡視艇が到着したので、アッという間に恐竜ハンターの一味を一網打尽にすることができた。

 

 巡視艇でピー助を日本近海まで運んでもらうと、のび太は「ピューイ ピューイ ピューイ」と鳴いて追い掛けてくるピー助と別れる瞬間が訪れた。のび太はピー助を叱りつけ、巡視艇のスタッフに泣きながら「早く超空間に入って!!」と哀願している。

 

 ほどなく、ピー助の仲間が集まりだし、「ピ… ピ…」と歓迎されて、仲良くなることができた。

 

 机の引き出しから出てきた五人が階段から下りるとき、のび太のママから「まあ。大ぜい二階でなにしてたの」と尋ねられると、満ち足りた顔ののび太は「うん…、ちょっとね」と答えている。夕日を一杯浴びながら、みんなは満足しきった表情で家路に着いたのであった。

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