のび太の恐竜Ⅲの4[★★★]

[初出誌] 『のび太の恐竜』、「月刊コロコロコミック」19803月号、58頁、293コマ

[単行本]  『のび太の恐竜』、「てんとう虫コミックス 大長編ドラえもん VOL.1」昭和581225日 初版第1刷発行、74頁、372コマ

[大全集] 『のび太の恐竜』、「藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 12010929日 初版第1刷発行、74頁、372コマ

 

 [梗概] 激闘の末、ティラノサウルスがアパトサウルスを「ドウ」とぶったおし、「ガオルルルル…」と咆哮している。ティラノが「クワ」と顔をしずちゃんのほうへ向けたので、しずちゃんは赤ちゃんを両手で守りながら、その場に「ヘタ ヘタ」と座りこんでしまった。

 

 岩陰から飛び出たのび太が「にげろっ」、「かくれろっ」と叫びながら近づくと、ティラノも「ズシ… ズシ…」と近づいてきた。

 

 ドラえもんも岩陰から飛び出し、「桃太郎印のきびだんご」を出そうとしたが、あわてふためいて関係のないものばかり出していた。のび太が震えながら両手を広げて、しずちゃんの前に立ちはだかると、ピー助がものすごいスピードでのび太としずちゃんの前に飛び出し、ティラノと対決しようとした。

 

 ティラノがピー助たちに襲いかかろうとして口を開けた瞬間、ドラえもんが「え~い」と投げたきびだんごがものの見事に口の中に入った。しばらくの間、恐怖の沈黙が続いた。

 

 ティラノが尻尾を「ピク ピクン」と動かし、さらには、「パタ パタ」と動かしたので、効き目が表れ、子犬のようにおとなしくなった。それで、みんなティラノの背中に乗って「アハハハ アハハハハハ……」と笑いながら、今晩のキャンプ地に到着することができた。

 

 『キャンピングカプセル』では、しずちゃんは「ランランラン…」と楽しそうにシャワーを浴び、のび太は窓から「ピー助お休み」と言いながら手を振っている。

 

 今日もまた、スネ夫は涙を流しながら「お母さま…」、ジャイアンも「ムニャ。母ちゃんかんべん!!」と寝言を言いながら、ベッドから「ズシン」と落下している。ドラえもんは故障し出したタケコプターを修理しながら、心配で冷汗を垂らしている。

 

 カプセルの上空では、ドルマンスタインの部下である黒服の男が「ルルル…」と「無人人工探査球」を飛ばして偵察し、ピー助などをカメラで「カシャ」と撮影している。

 

  翌朝、のび太の装着していたタケコプターが離陸して間もなく、「プルル… プスッ カツン カツン ルルル・・ プスン プスン プルル・・ ピタ スウ プルルル」と調子が悪く、スネ夫から「いつものび太がブレーキになる」と非難されている。

 

 深い渓谷の間を飛んでいると、のび太のタケコプターが「ピタ」と止まり、「スウ」と落下しだしたが、ドラえもんの助けを借りて、飛び続けることができた。すると、ジャイアンから「タケコプターにのび太のノロマがうつったな」と笑われていた。

 

 しずちゃんやドラえもんの力を借りて飛んでいる間に、タケコプターは完全に直って、再度、動き出した。ドラえもんが渓谷を抜けたところで降りようと合図すると、突然、無数のプテラノドンが「ギャ ギャ ギャ ギャ…」と鳴きながら、一行を襲ってきた。

 

 全員全速力で逃げたけれども、プテラノドンがもの凄い勢いで追いすがってきた。気の動転したのび太が「きび太郎印の…」を出して叫ぶと、ドラえもんも「ももだんご」かという始末であった。そして、あわてるといつものように関係のない物ばかり出し続けた。

 

 「桃太郎印のきびだんご」を出したとき、真上を「バサー」とプテラノドンが飛んだので、手に持った「きびだんご」の網の袋を落としてしまった。さらに、一同がプテラノドンの風圧で翻弄されているとき、ジャイアンのタケコプターが吹っ飛んでしまった。

 

 幸い、のび太がジャイアンの右腕を「グイ」とつかんだので、墜落を防ぐことができた。しかし、高度がドンドン下がりだし、ジャイアンが「手をはなさないでくれ、おれをみすてないでくれ~っ」と絶叫しているとき、ドラえもんが辛うじてジャイアンの左腕をつかむことができた。

 

 大群のプテラノドンに囲まれて飛んでいるとき、のび太が「ぼくらをどうする気だろう」と尋ねると、ドラえもんは「どこか広い岩棚へ追い込んで…、楽しく昼食会開くだろうな。するどいクチバシ…、ツメ…」と答えた。

 

 しずちゃんが「ね、ね、たべられるときってどんな気持ちかしら」と尋ねると、真っ青な顔のスネ夫は「まず目玉をつっつくと思うよ。それからおなかをさいて、やわらかいないぞうを…」と言い終わらないうちに、「アハ…」と自分の想像で気絶してしまった。

 

 ジャイアンから「のび太泣いてるのか?」と問われると、のび太は「くやしいんだよ。しずちゃんをまもってやれないのが」と大粒の涙を落としている。プテラノドンが「クワーッ クワーッ クワーッ」とみんなを食べに襲ってきたとき、黒い服の男の率いる戦闘艇が「キーン キーン」と飛んできた。

 

 そして、「ジャーッ シャーッ シャーッ」と砲弾を発射して、大群の恐竜を「ボッ ボッ ボッ」と撃ち落としながら、追っ払ってくれた。

 

 全員大地に無事降り立つと、例の黒い男たちが現れ、狙いを定めていた人になついた恐竜のピー助を譲って欲しいと申し出た。その話を聞いて、ドラえもんは「あんたたちは恐竜ハンターだな!!」と見破っている。

 

 恐竜ハンターとは、「中生代のめずらしい動物を、殺したりつかまえたりして金持ちにうる」人々のことである。そして、歴史を狂わす輩であるので、「航時法」という法律で彼らの行為は厳禁されている。つまり、人類の祖先を殺したりすると、この地球に人類が生まれないことになってしまう。

 

 黒い服のボスは、恐竜はごまんといるから、そんなことにはならないとうそぶきながら、ある取引を提案している。その取引とは、ピー助にそうとうの代金を払い、その上、タイムマシンで一行を日本へ送り返すというものであった。

 

 基地への招待を受けたドラえもんは怒り狂って、「だれがいくもんか!!」と断固拒否している。すると、ボスは今晩よく相談して、明日の朝また会おうと言い残して、基地へ帰っていってしまった。

 

 その晩、ファイヤを囲んで今後の対策を練った。「ピー助がほしいってのならわたそうじゃないの。いますぐ日本へ送り返してもらおうじゃないの」とスネ夫が口火を切った。

 

 しずちゃんが「それじゃ、ピー助ちゃんがかわいそうじゃないの」と反論すると、スネ夫は「とってくわれるわけじゃないだろ。金持ちのペットになってプールでかわれるんだろ。なあジャイアン」とすがりついた。ジャイアンは沈黙したままであった。

 

 すると、のび太が「それがピー助にとってしあわせなことだと思う? そんなことにならないようこれまでがんばってきたんじゃないか」と主張して、ドラえもんに同意を求めている。

 

 ドラえもんはハムレットのような心境で、「ひとつみんなにしらせておかなくちゃならないことがある…」と切り出し、「タケコプターがさっきの高速運転で、もう使いものにならなくなっているんだ」と語った。スネ夫が「それじゃいやもおうもない、おくってもらうしかないじゃんか」とより強く訴えた。

 

 のび太が「歩けばいいじゃないか!! 地続きなんだ。いつかはきっと日本につくんだ」と力説した。スネ夫が「ジャイアンなんとかいってやれよ」と催促すると、沈黙を守っていたジャイアンが「おれ…、歩いてもいいぜ、日本まで」と言い切った。

 

 スネ夫が「お、おい、正気かよ!! なんでこれ以上ぼくたちがトカゲのぎせいに……」と言い掛けると、ジャイアンは立ち上げって、「おれ歩く!! のび太といっしょにな!!」と力強く言い切った。のび太がありがとうといいながら握手を求めると、ジャイアンは「おれがタケコプターをおとしたとき、おまえ、おれの手をはなさなかったもんな」と感謝の意を表した。

 

 ピー助が「ピューイ! ピューイ! ピューイ!」とないたが、別にあたりにはなにも見当たらなかった。ドラえもんは「ぐうぜんかもしれないけど…。あの方角には日本がある、ピー助のふるさとが……」と言い掛けた。

 

 スネ夫も「いいよ。歩くよっ。歩きゃいいでしょ!!」と不承不承納得した。のび太がみんなに感謝すると、ジャイアンは「なあに、悪者のいいなりになるなんてしゃくじゃねか」といつもの元気いっぱいのジャイアンに戻っていた。ドラえもんにいますぐ逃げるよりも、もっとすばらしいアイディアが閃いたので、全員それに納得して、明日の朝そのアイディアを実行することになった。

 

 その晩、2314 年のメガロポリスにある大富豪のドルマンスタンの屋敷では、ドルマンスタンが黒い服の男を呼び出し、人になれた恐竜を手に入れたかどうかを尋ね、それに対して、手に入れたも同然という回答を引き出している。

 

 黒い服の男は最後の仕上げをだんな自身の手でやっていただき、さらに、人間狩りも一緒に体験していただこうと語りかけている。

 

 翌朝、白亜紀中期の北米の第七基地で、恐竜狩りにあきたドルマンスタンは人間狩りもすることになった。飛行艇で現地に到着すると、砂煙を上げて五台のバギーカーが{ガ~ ガ~ ガ~」と轟音を響かせて、砂漠地帯を爆走していた。

 

 黒い服の男が「ピー助をわたさねば、銃撃する!!」と警告しても止まらないので、ドルマンスタンが飛行艇から狙いを定めて、バギーカーを「ビッ ビ・ビッ」と攻撃すると、ものの見事に命中して「ガァン ガガン ガアン」と全車ぶっ飛んでいる。

 

 飛行艇から降りて調べると、すべてひみつ道具『立体コピー紙』で作った人形であり、バギーカーもひみつ道具『ラジコン粘土』で作ったにせ物であった。黒い服の男はボスから、「わしのえものはねんど細工にのったコピーだった…、ラジコンをおいまわさせるために、はるばる白亜紀までよびよせたのかね」ときつい叱責の言葉をもらうことになった。

 

 汚名返上のため、黒い服の男はドラえもん一行を電波キャッチで捕捉し、電波の発信地へ向けて急行した。そのころドラえもんはイカダに乗って、川下にあるやつらの空っぽになっている基地のタイムマシンを乗っ取ろうと計画していた。

 

 カモフラージュ作戦も成功したと確信して、ラジコンのスイッチをイカダの上で「カチ」と切った。しかし、黒い服の男は「電波の発信源は距離、約百十キロ。北東から南西に向けてイカダらしきものでジグザクに移動しながら、川を下っている」と的確に捕捉していた。