ドンジャラ村のホイ [★★★]

[初出誌] 『ドンジャラ村のホイ』、「月刊コロコロコミック」19847月、20頁、121コマ

[単行本]  『ドンジャラ村のホイ』、「てんとう虫コミックス ドラえもん短編第35巻」1986125日 初版第1刷発行、23頁、135コマ

[大全集] 『ドンジャラ村のホイ』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 202012930日 初版第1刷発行、23頁、135コマ

 

[梗概] のび太が「エリマキガエル」を見たと主張しても、ジャイアン、スネ夫、しずちゃん誰ひとり信用してくれなかった。しかし、めずらしい動物の標本を集めているおじいさんから、「ぜひその話をくわしく聞きたい」と頼まれた。みんなと一緒にその家を訪れると、天然記念物などもゴロゴロ展示されたいた。

 

 そのおじいさんは「わしの夢はな、パンダ、コアラ、イリオモテヤマネコをペットにし、庭にはシロナガスクジラのはく製を、できればネッシーや雪男も…」というものであった。そして、最後に、もしエリマキガエルをとらえて渡せば、おじいさんから百万円もらえるという話になった。

 

 その話をドラえもんにすると、「エリマキガエルは絶滅寸前の動物かもしれない。やっと生き残っている世界で最後の一匹かもしれないぞ!! きみも知ってるだろ。

 

 これまでにどれだけの動物が人間のために地球上から姿を消したか! 今も消されつつあるか!!」と激怒し、「もしエリマキガエルがつかまって絶滅したら、責任はのび太にある!!」とまで言われてしまった。

 

 だれかが見つける前に安全なところへ移そうと思って、「どこでもドア」で出かけると、町中にうわさが広がって、この動物の捕獲に乗り出していた。

 

 ドラえもんはひみつ道具『あっちこっちテレビ』を取り出し、カメラを四方に四台「シュパー」と飛ばして、探していると、一台のモニターにカエルではなく、掌サイズの小さな人間の新種が映し出された。早速、家に連れ帰ってひみつ道具の「お医者さんカバン」で手当をした。

 

 目をさますと、「キャッ」と悲鳴をあげて逃げ回るので、ドラえもんものび太も「スモールライト」を使って同じサイズに変身した。いろいろ尋ねてみると、青葉ヶ丘の森のドンジャラ村に住んでいるホイくんであるとわかった。

 

 青葉ヶ丘は近ごろ急速に開けた町で、工場ができ、高速道路が通り、マンモス団地などが建ち,どんどん森は小さくなり、大事な川は汚れ、動物も小鳥も魚や虫もみんなすみかをおわれ…」といった状況になっていた。

 

 ホイくんたちが新しい土地を求めて一週間前に旅に出たが、どこへ行っても大人族の町ばかりで、小人族の住むことができる場所をみつけるのが困難になっていた。

 

 「どこでもドア」でホイくんたちが住んでいるところへ行くと、造成工事のため、「森が消えた!! 森がなくなってる!!」、その上、パパもママも妹のクンもみんなどこかへ消えてしまっていた。

 

  みんなはどこかに避難していると考え、探しに出掛けると、ツバメが「チ、チッ」と飛んできたので、ホイくんはひみつ道具『万能手綱』を「ヒラ」と投げると、「クル クルッ」と首に巻き付いて、エリマキツバメになった。この小動物に乗って三人は団地の外れの雑木林のあるところまで運んでもらった。

 

 雑木林の中は、今や子どもの遊び場になっていて、とても危険な状態であったので、場所を変えることにした。ホイくんがエリマキネズミで移動しようとしたが、ドラえもんが「そんなものにのるくらいなら、死んだほうがましだっ」とダダをこねたので、歩いて安全な場所を見つけ、静かなある家の屋敷の木にひみつ道具『みの虫式ねぶくろ』をつるして、「グウ…。スヤ…。ンガー…」と寝だした。

 

 ホイくんの妹のクンが月が出て、みんなが寝静まったので、縁の下から出て、「森の木かげでドンジャラホイ」と歌い出した。すると、目の前にお兄ちゃんたちが寝ているので、「お兄ちゃん!!」と呼び掛けた。

 

 縁の下で生活しているホイくん一家に招かれて、しばらく楽しいひとときを過ごすことができた。深夜しか出歩けないので、みんなで近くの公園に出かけた。

 

 ホイくんのパパは「百年以上も前から住んでいたが、小鳥やけもののほかに住む人もなく…、清らかな小川、あざやかな緑…、月夜の晩はお祭りです、村じゅう総出で森の木かげでドンジャラホイと踊りあかしたものでした…」となつかしげに、ドラえもんやのび太に語ってくれた。

 

 目の前では、白アリを消毒するため、住めなくなって引っ越しするトラックも目にすることができた。ホイくんのパパは「もう地球上でわしらが安心して住める場所は、なくなってしまったのかな…」と嘆き悲しんでいた。

 

 「どこでもドア」で帰ってきたドラえもんとのび太は「小人族のための土地をさがそう!!」と決心した。ドラえもんはひみつ道具『リクエストテレビとロケット』を取り出し、赤道の南北にまたがる世界最大の河アマゾンの流域に、いまだ人が足をふみいれたことのない原始林の中にホイくん一家を案内した。

 

 なんにもないところだけど、安全で、しかもミニハウスの町をつくって手渡したので、ホイくんのパパは「こんなに広ければ、思いどおりの町づくりができます」と感激し、「ここから河まで大通りをつくろう。

 

 大通りを中心に町を広げよう。もちろんたっぷりと緑を残しながら」と夢がどんどん広がっていった。「野球場をつくったり、ドンジャラ祭をやったり、やがては世界中の小人族をよびよせて…」となった。

 

 ドラえもんとのび太は「このことはだれにもひみつだぞ。あったりまえだ! ぜったいしゃべるもんか!!」と約束しあった。

 

 テレビでは、「エリマキガエルさわぎは発見した少年のみまちがいだったようです」といったニュースが流れると、ジャイアンは「いいかげんなこといいやがって!!」、スネ夫も「おかげでまる一日むだ骨おりだったぞ!!」と猛烈に腹を立てていた。

 

 のび太がジャイアンにつかまり、「あれはじつは…、なんでもない」と答えたので、「ばかにするな!! ボコ ボコ」と殴られたが、ひみつを守り通すことができた。

 

 ドラえもんから「いつものきみににあわずえらい!!」と肩を叩かれたが、のび太は「そんなほめ方あるか」と苦笑していた。二人で遠くの空をながめながら、「ホイくんたちやってるかな、ドンジャラ祭り……」と楽しげに語り合っていた。

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