海底ハイキング[★★★]

[初出誌] 『海底ハイキング』、「小学館ブック」19747月号、15頁、88コマ

[単行本]  『海底ハイキング』、「てんとう虫コミックス ドラえもん短編第4巻」1974111日 初版第1刷発行、17頁、91コマ

[大全集] 『海底ハイキング』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 202012930日 初版第1刷発行、17頁、912コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 「のび太郎さんは、何かけいかくしてるの?」が「のび太さんはなにか計画してるの?」に変更[80(2)]

 「底のスプリングの力で、陸上の10倍はやく歩ける」が「陸上の十倍はやく歩ける」に変更[82(1)]

 

 「「深海底」は海底でもっとも広い気分である」が「「深海底」は海底でもっとも広い部分である」に変更[85(2)]

 「こちらは、海底ののび太郎―」が「こちらは海底ののび太―」に変更[87(6)]

 

 「ああ、よくねた」、「このくらいの深さだとひるも夜も、わからないや」が「あーっと、よくねた」、「このくらいの深さだと昼か夜かわからないや」に変更[87(6)]

 「青白いひとだまがヒュ~ドロドロ」、「わあっ、怪談なんかいやだよ!」コマ挿入[88(7)]

 

 「青白いひとだまがヒュ~ドロドロ」コマ削除[176(7)]

「ワア」、「怪だんなんかきかせるな!」コマ削除[176(8)]

「それが海底につもって、長い年月がたつと石油になるの」が「それが海底につもって長い年月がたつと石油になるといわれているの」に変更[89(5)]

 

「文字なし」コマ挿入[89(6)]

「そろそろ一万メートルだ」、「海溝の底に着いてもいいころなんだがな」コマ挿入[90(1)]

「な、なんだ!あれは?」コマ挿入[90(2)]

「のびちゃん、ドラミちゃん、おやつよ」、「はいっ」コマ挿入[90(4)]

 

 「のび太郎さんが!!」が「のび太さんが!!」に変更[91(2)]

 「二万メートルの日本海溝の底で」が「一万メートルの日本海溝の底で」に変更[92(8)]

 「のび太郎はまい日ゴロゴロしてる」が「のび太は毎日ゴロゴロしてる」に変更[94(5)]

 

 [梗概]  作品『海底ハイキング』はドラえもんの登場しない作品である。ロボットは時々機械を休ませなくてはならないので、ドラえもんの妹であるドラミちゃんが半ば強制的にドラえもんのスイッチを切っている。のび太にドラミちゃんが自己紹介をし、「おにいちゃんが休んでるあいだ、わたしがめんどうみるわ」と告げている。

 

 この作品では、スネ夫に代わってズル木が登場し、夏休みにはハワイへ行って、サーフィンの名人になって帰ってくるとみんなに自慢している。ジャイアンやしずちゃんの夏休みの目標は千メートル泳げるようになったり、本式に植物採集をすることである。

 

  一方、のび太はニコニコ聞いていて、計画も明かさず、いずれ記者会見で発表すると言ってみんなを煙に巻いている。

 

 家に帰ると、ドラミちゃんに頼んでおいた中古ロボットを改造した、のび太の身代わりロボットが完成していた。のび太はこの夏休みに、日本からサンフランシスコまで、海底を歩いて太平洋を横断するという大冒険のためには、何十日も留守にするので、どうしても身代わりが必要であった。

 

 のび太はこの計画を実現するために、ドラミちゃんから十個からなるひみつ道具『海底ハイキングセット』を出してもらっている。それらは「快速シューズ」、「コンパスと海図」、「真水ストロー」、「エラ・チューブ」、「コンク・フード」、「ヘッドランプ」、「通信機」、「深海クリーム」、「水圧銃」、「寝袋」である。

 

 のび太は朝早く野比家を「タケコプター」で出発し、海岸まで飛行している。ドラミちゃんは長い時間海水につかるとさびるので同行を断念し、海岸まで見送りに出かけている。のび太が崖の上から、「記念すべき第一歩だ!」と宣言しながら、海に「ザブウン」と飛びこむと、お尻にウニが刺さり、前途多難をうかがわせた。

 

 大陸棚を歩いていると、のび太は絵にも描けない美しさと絶賛し、「これなら何万キロも歩き続けられるぞ」とご機嫌である。海底を歩いていると、エイを踏みつけたり、サメを「水圧砲」で「バズン」と撃退したりしている。午前中だけで、二百キロ以上も歩くことができた。

 

 家では、のび太の身代わりロボットが水撒きを頼まれると、部屋の中で水を「バシャ」と撒いている。ロボットが何かするたびごとにボロをだすため、ドラミちゃんはしばらくロボットに昼寝をしてもらっている。

 

  のび太は海底の大陸斜面をどんどんおり、チョウチンアンコウやグロテスクな深海魚に出会い、さらに、深海魚さえめったにいない、深まる暗闇の世界を歩き続けた。

 

  心細くなったので、「通信機」を使って、ドラミちゃんに連絡を取り、ラジオでも聞かせてほしいと頼んでいる。すると、通信機から、「青白いひとだまが、ヒュ~ドロドロ」と怪談番組が流れてきた。

 

 のび太は地獄の底まで続いているような気がする、日本海溝の絶壁を降りていると、深海では雪のようなものが降っていた。ドラミちゃんに尋ねると、それはマリンスノーというもので、プランクトンの死体が沈んでいき、長い年月がたつと石油になるものだと、教えてもらうことができた。

 

 そろそろ一万メートルの海底に着くころ、巨大なクジラが目の前を横切っていった。のび太はこんな深くまで潜って泳いでいるクジラを見て、びっくりしている。ドラミちゃんたちがおやつの時間にスイカを食べている時、テレビから、「鳥島沖で、海底火山が噴火。太平洋岸は津波の恐れも…」といったニュースが流れてきた。

 

海底を歩いていたのび太を地震が直撃し、のび太はどれくらいの時間かははっきりしないが、しばらく気絶して海底に横たわっていた。幸い気づいた時には、たいした怪我もしていなかったけれども、食料もライトもストローも海図もコンパスもみんな失くしていた。

 

さらに、助けを呼ぼうにも、通信機もなかったので、一万メートルの日本海溝の底で、のび太はこれからどうすればよいか、途方に暮れていた。

 

 しばらくすると、遠くに光が見えたので、近づいて確認すると、それは深海潜水艇であった。助けを求めて、深海艇の窓を「ドン ドン」叩くと、乗組員は「お化けだ!」と言って大騒ぎになった。のび太は深海艇のおしりにしがみついて、東京湾に無事たどり着くことができた。

 

 家に帰ると、ドラミちゃんが涙を浮かべながら、無事に帰れたことを歓迎してくれた。身代わりロボットのスイッチを切り、のび太は疲れていたので、ゆっくり二、三日休むことになった。

 

  のび太が鼻ちょうちんを出して、ぐっすり休んでいる姿を家の外から見て、ズル木はジャイアンやしずちゃんに、「ほうら、いったとおりだ。のび太は、毎日、ごろごろしてる」と語っている。

[S2005A0405087407]