腹話ロボット [★★]

[初出誌] 『腹話ロボット』、「てれびくん」198110月号、11頁、85コマ

[単行本]  『腹話ロボット』、「てんとう虫コミックス ドラえもん短編第32巻」1985125日 初版第1刷発行、13頁、100コマ

[大全集] 『腹話ロボット』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 192012630日 初版第1刷発行、13頁、100コマ

 

[梗概] ジャイアンがドカンのある広場で、「ひさしぶりに新曲ができた。おれの作詞作曲だ。聞きたいか」と尋ねると、スネ夫は「ききたい! ききたい! ひさしぶりだなあ。おそいんだよジャイアン。いつ新曲ができるかと、まちくたびれちゃったよ」とゴマスリ、「なまけて悪かった。心の友よ」となった。

 

  のび太の場合、「おそいんだよ、ジャイアン。もっとおそくてもよかったのに。ききたいききたい。どうせきかされるなら、いやなことははやくすませたい」と言ったため、「ボカ ボカ」となってしまった。

 

 のび太はテストが0点であったため、家に帰りにくいとスネ夫に話すと、スネ夫が見本を見せてくれた。

 

 ママから「スネ夫!!」と怒鳴られると、「やめて!! おかあさま!! おこると、小じわがふえるっていうよ。ママの美しい顔がしわだらけになるなんて、ぼくたえられない!! このつぎがんばるからさ。ママにいつまでも若く美しくいてほしいから」、「まあ…、スネ夫ちゃまは、なんてやさしい…」となった。

 

 のび太の場合、「やめてママ!! その美しい…、というほどでもない顔が、しわくちゃになるんじゃないか。みるにたえないよ」となり、顔を真っ赤にしたママからより強烈なお説教を受けることになった。

 

 のび太は「ぼくは口べたで、いつもそんをしてる。ねえ、ドラえもん。口がうまくなる道具だして」と頼むと、「そんなの意味ない。口先だけでどんなうまいこといっても、ごまかしにすぎない」と言われた。

 

 しかし、「ごまかしでいいんだよ。スネ夫みたいに、ようりょうよくやりたいよ」としつこく頼むので、ドラえもんはひみつ道具『腹話ロボット』を不承不承だしている。このロボットは「人形が人間の口をうごかして、その人の声でうまいことしゃべる」ものである。

 

 のび太がママに草むしりを頼まれると、肩に乗った「腹話ロボット」がのび太の口を「パカ」と開かせ、「ワーイ草むしりうれしいな。あれをすると、すっきり美人になるんだよね。腰をかがめるでしょ。

 

 ウエストをひきしめる運動になるんだよな。草の葉緑素が、指から吸収されて肌がきれいになるしね」と蕩々としゃべったので、ママも「いいわ、ママがやります」となった。

 

 この調子でおこづかいをもらえるようにこのロボットに頼むと、「お年玉が年一回というのはだれがきめたのでしょうか。現代人は古い習わしにとらわれることなく、毎月お年玉を」と訴えて、ママからおこづかいをせしめている。

 

 ドラえもんから「いいかげんなことばかりいって、ロボットをとめると、ごまかしがばれるんだぞ」と注意された。

 

 外に出ると、先生から「今回のテストをみなさい。宿題もせずにフラフラと遊びまわれる身分かね」と注意されると、「ぼくには、自分さえ成績があがればという考え方がどうしてもできないんです。…。クラス全員が必死に勉強したとしてもテストをすれば…、かならず順番がついてだれかがビリになる!! だから…だからぼくがぎせいになって0点を…。世の中にこんなバカが一人ぐらいいてもいいんじゃないでしょうか」と訴えた。

 

 すると、先生は「野比!! きみがそんなやさしい子だったとは…。先生は誤解していたよ。これからもがんばって、0点を取りなさい」と激励させた。これを聞いて、ドラえもんはお手上げの状態であった。

 

 ドカンのある広場でジャイアンの新曲発表会が開かれた。みんなは「ウッ。オエ~。ゲ~」と必死にこらえていた。すると、「ひどい歌だなあ」という声が聞こえたので、場内は「シ~ン」となり、みんなは真っ青になってしまった。

 

 ジャイアンがいまなんていったと凄むと、「はっきりいって、がっかりしたなあ。ジャイアンの歌は、こんなもんじゃないはずだよ。おかしい! ひょっとして、のどをいためてるんじゃない?」と問い掛けてきたので、ジャイアンも思わず、「ゆうべめざしをくった時、小骨をのどに…」と弁解しだした。

 

 たたみかけるように、「やっぱり!! むりしちゃだめじゃないか。将来の大歌手が、もっとのどをだいじにしてくれなくちゃ」と注意すると、ジャイアンはのび太の手を「ガッシ」と握り、「心の友よ!! きみだけだ。こんなにも気づかってくれるのは。きみのいうとおり、のどがなおるまでリサイタルをのばそう」となった。

 

 しずちゃんがリサイタルに来ていなかったので、のび太は「どこでもドア」で出かけると、しずちゃんはお風呂に入っていた。

 

 しずちゃんが腹を立てたので、ロボットは「もともと人間ははだかだったんだよ。アダムとイブをごらんなさい。それがなぜ服をきるようになったか。神のいいつけにそむいて禁断の木の実を食べたからだ。神さまのいうとおりにしてれば、人間はいまも楽園で楽しくくらしてたはずなんだ。はだかのままで」、しずちゃんも「じゃあ…はだかでいるほうが正しいの」となり、「そ~なんだよ!!」となった。

 

 さらに、「腹話ロボット」が「せかいのびじゅつかんをみたまえ。はだかのえやちょうこくでいっぱいじゃないか。なぜか? それは美しいからだ。はだかこそ永遠の美のテーマであります!!」と力説した。

 

 すると、しずちゃんは「そうか! じゃあ、はずかしがるのがまちがいなのね。服なんてきなくていいのね! あそびにいきましょ」と「ザバ」とフロから出て、「どこでもドア」から外に出ようとすると、ロボットは「そうとも、そのまま町じゅうをかけまわろう!!」とけしかけた。さすがののび太も肩に乗っていたロボットを地面に叩き付けてしまった。

 

 外に出て裸であると気づいたしずちゃんは「キャーッ」と絶叫して、「どこでもドア」に逃げ帰った。「ウロ ウロ」とのび太を探している、ジャイアン、ママ、しずちゃんの姿を見て、ドラえもんはドカンの後ろに小さくなって隠れているのび太に対して、「とうぶんうちへ帰れないね」と忠告している。

[S1930A3215078110]