かがみのない世界 [★★]
[初出誌] 『かがみのない世界』、「てれびくん」1981年3月号、10頁、65コマ
[単行本] 『かがみのない世界』、「てんとう虫コミックス ドラえもん短編第27巻」1983年4月25日 初版第1刷発行、10頁、65コマ
[大全集] 『かがみのない世界』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 19」2012年6月30日 初版第1刷発行、10頁、65コマ
【初出誌vs.大全集】
変更なし
[梗概] のび太は鏡を見るたびに、マンガみたいでいやになっちゃうと嘆いていたので、ドラえもんが「人間のねうちは顔じゃない。頭だ! 力だ!」と励ますと逆効果になってしまった。
のび太が「だれも、自分の顔をしらなければ、ひけめを感じる者も、うぬぼれる者もないはずだろ」と言うので、納得したドラえもんはひみつ道具『もしもボックス』を出し、自分の顔をだれも見たことのない世界を出している。
ママはお化粧はむずかしいので、口紅がゆがんでないかしらと、ドラえもんに尋ねるので「もっと右へぐ~っ」とアドバイスしている。ママがパパに「わたしのおけしょう…」の具合を見てもらうと、「なんだその顔は!!」とビックリされてしまった。
スネ夫の描く女の子の似顔絵は抜群に人気があった。「だって、こうでもしないと自分の顔を見られないもの」というので、実物よりはるかに美人に描いていたためである。あのしずちゃんまでもが、「わたしにもかいてえ」というモテモテぶりであった。
ドカンのある広場で、ジャイアンは自らの手で顔を触りながら、「高い鼻、ひきしまったくちびる…、おれってどうしてこんなに、男らしいりっぱな顔をしてるんだろ」とうぬぼれ、タレントになろうと叫んでいる。
鏡を見たことのない人間が、初めて鏡を見たらどう反応するかの実験を、ひみつ道具『箱入りかがみ』を使ってすることにした。ジャイアンが鏡を見ると、「ウ~。ハハハ…。ゴリラみたいなひどい顔。おれの顔みてわらったな!! でてこいこのやろ!! ドタンバタン」となってしまった。
スネ夫が鏡を見ると、「ムカッ 見るからにずるそうな、感じの悪いやつ!!」、「でも、ゴリラよりキツネだろ」とジャイアンに話している。しずちゃんの場合、「うそお。かわいい女の子よ」となった。
見知らぬ人がやってきて、鏡をのぞき込むと、「十年前に家出した、ふたごの兄さんじゃないか。…、どうしてガラスのおりにとじ込められているんだ」と言いながら、この「箱入りかがみ」を交番に担いで運んでいる。
交番では、見知らぬ男がおまわりさんに「とじ込められているんです」と訴えると、「警官といっしょだ。きみ、見たことのない人だが、どこの署の者かね」、「きっと、にせ警官だ。そいつがゆうかい犯人です!」
「む、どうりで人相が悪い」、「むこうも、ピストルをぬいた」、「きさまていこうするか!?」となって、派手に「ドキュン ドキュン ガチャン ガチャン」とピストルの乱射になってしまった。
ドラえもんが大急ぎにもとの世界に戻すと、おまわりさんは「なんで、かがみなんかうったんだろう」、見知らぬ人も「なんで、かがみなんかはこんできたんだろう」と、まるでキツネにつままれたような表情であった。ドラえもんも「かがみがなくなっても、いいことなかったね」と、のび太ともども後悔していた。
[S1923・A2717・078103]