タンポポ空を行く [★★★]

[初出誌] 『ファンタグラス』、「てれびくん」19796月号、12頁、89コマ

[単行本]  『タンポポ空を行く』、「てんとう虫コミックス ドラえもん短編第18巻」1980125日 初版第1刷発行、16頁、110コマ

[大全集] 『タンポポ空を行く』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん192012630日 初版第1刷発行、16頁、110コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 タイトル『ファンタグラス』が『タンポポ空を行く』に変更

 「やあ、白くてフワフワしたすてきな帽子だね」、「これ、子どもたちなんですよ」、「もう少ししたら、みんな旅に出るんです」コマ挿入[38(1)]

「文字なし」コマ挿入[39(2)]

 

「どうしたかな……、タンポポのぼうや」コマ挿入[39(3)]

「文字なし」コマ挿入[39(4)]

「話し声が聞こえる」コマ挿入[39(5)]

「そうよ、ママも風に乗ってとんできたのよ」、「どこから?」、「ママのママって、どこに生えていたの?」コマ挿入[39(6)]

 

「遠い、遠い……………」、「山おくの駅のそば……」コマ挿入[39(7)]

「ある晴れた日、おおぜいの兄弟たちといっしょにとびたったの」、「こわくなかった?」、「ううん、ちっとも」、「はじめて見る広い世界が、楽しみだったわ」コマ挿入[40(1)]

 

「つかれると列車の屋根におりて……」、「ゴトゴトゆられながらひるねしたの」コマ挿入[40(2)]

「夜になるとちょっぴりさびしくなって泣いたけど」、「お月さまがなぐさめてくれたっけ」コマ挿入[40(3)]

 

「高くのぼって海を見たこともあるわ」、「青くて広くてとってもきれいだったわよ」コマ挿入[41(1)]

「やがて、この町について……」コマ挿入[41(2)]

「のび太さんのお部屋へとびこんだの」コマ挿入[41(3)]

 

「ママ、旅をしてよかったと思う?」、「もちろんよ」、「おかげできれいな花をさかせて、ぼうやたちも生まれたんですもの」コマ挿入[41(4)]

「ねむくなつちゃった」、「じゃあね、歌を歌ってあげますからねんねしなさい」コマ挿入[41(5)]

 

「文字なし」コマ挿入[42(1)]

「ソヨ ソヨ」コマ挿入[42(2)]

「文字なし」コマ挿入[42(4)]

「文字なし」コマ挿入[42(8)]

 

「おうい」、「だいじょうぶかい」コマ挿入[42(9)]

「やあ元気?」削除[89(4)]

「どこへ行くつもり?」、「わかんないけど…」、「だけどきっと、どこかできれいな花をさかせるよ」コマ挿入[43(2)]

 

[梗概] 去年カブトムシを飼っていたガラス鉢に、タンポポの花が咲いているのをドラえもんが見つけた。それをのび太に話すと、どこかへ捨てに行こうと持ち出そうとした。ドラえもんが「やっと育った花のいのちを、きみはむざんにも…」とたしなめると、のび太は「大げさないいかたするなよ、たかがタンポポに」と反論してきた。

 

  「そういう考えはよくない! たとえ草一本虫一匹にでも、愛する心を失ってはならない。そうすれば自然と心がかよいあってゆかな人間性が…」と、格調高く説得したが、「ちっともわからない」と言うので、ひみつ道具『ファンタグラス』を出している。 

 

 このグラスをかけると、植物も動物も人間みたいに見えるようになる。のび太がこのグラスをかけて、タンポポを庭の隅に植え替えようとすると、タンポポがにっこり笑った。

 

  タンポポを庭に植えて、水をやると、まわりの木から、「いいないいなタンポポばかり」という声が聞こえてきた。このあいだからずっと雨が降らないので、のどがカラカラの状態になっていたからである。

 

 水をまいていると、屋根の上の野良猫のクロなどは、「見て見てなまけ者ののび太が。雨でもふるんじゃないかしら」と噂していた。すると、のび太は水まきをやめてしまったので、ドラえもんは、「きみが、心のそこで思ってることなんだ」とアドバイスしている。

 

 のび太が「だれがこんなもの。二度とかけるもんか」と腹を立てて、横になって寝ていると、五匹のアリが部屋の中を移動していた。グラスをかけると、「はたらけはたらけ、冬にそなえて。なまけていると今にきっとこうかいするぞ。

 

  のび太みたいにならないように。せっせ、せっせ」と聞こえてきたので、のび太は机に向かって勉強を始め出した。

 

 のび太が毎日水をやったので、タンポポも育ち、つぼみもふくらみだした。ある晩、「ビュゴオ」と風が強く吹き出すと、外で助けを求める声が聞こえたので、タンポポが吹き飛ばされないように、植木鉢をかぶせて、守ったこともあった。

 

のび太はタンポポと絶えず会話を交わしているので、タンポポから優しい男の子と感謝された。しかし、ママやドラえもんは庭のかたすみでひとりごとばかり言って、みんなと遊ばなくなったので、近頃ののび太をとても心配していた。ジャイアンやスネ夫にメンバーが足りないから、強引に誘われたけれども、人間は、乱暴だからいやと断っていた。

 

タンポポの白くてフワフワしたすてきなわた帽子も成長し、その子どもたちもひとり立ちして、きれいな花を咲かせるため、広い世界へ飛び出し始めた。いつまでママと一緒にいるんだとグズっているいくじなしがひとりのこっていた。

 

 ママが「勇気をださなきゃだめ! みんなができることがどうしてできないの」と何度も説得しても、「やだやだ」の一点張りであった。

 

 ママが一生けんめい言い聞かせていたので、のび太は夜になってタンポポのぼうやが、どうなったか気になり、起き上がって庭に出てみた。すると、タンポポのママはぼうやに、遠い山奥の駅のそばに咲いていたが、ある晴れた日、大ぜいの兄弟たちと一緒に旅立ったと、語り出した。

 

はじめて見る広い世界は楽しくて、疲れると列車の屋根におりて、「ゴト ゴト」揺られながら昼寝をしたり、夜になるとちょっぽりさびしくなって泣いたりしたが、お月さまになぐさめられたりした。

 

そして、高くのぼって、青くて広くてとてもきれいな海を見たりしながら、のび太さんの住む町や部屋にやってきて、きれいな花を咲かせて、ぼうやたちが生まれたといったストーリーを聞かせ、子守歌を歌いながら、ぼうやを寝付かせていた。

 

 次の朝、最後に残ったぼうやも、「ソヨ ソヨ」と吹く風に乗って、飛び立った。のび太は心配になったので、タケコプターで追いかけ、「だいじょうぶかい」と声を掛けると、「思ったほどこわくない。行き先はわかんないけど、きっとどこかできれいな花を咲かせるから、ママに心配しないでと伝えて」と、元気よく空のかなたに旅立っていった。

 

 広場では、ドラえもんがバッタボックスに立って、楽しそうに野球をしていた。それを遠くから見ていた、のび太は「ぼくも…、入れてもらおうかな」という心境になっていた。

[S1902A1820077906]