しずちゃんをとりもどせ [★★★]

[初出誌] 『タイムテレビと家庭科エプロン』、「小学六年生」19896月号、10頁、72コマ

[単行本]  『しずちゃんをとりもどせ』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第40巻」1990125日 初版第1刷発行、10頁、72コマ

[大全集] 『しずちゃんをとりもどせ』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 1620111130日 初版第1刷発行、10頁、72コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 タイトル『タイムテレビと家庭科エプロン』が『しずちゃんをとりもどせ』に変更

 

[梗概] のび太は誰にも邪魔されず、午後の一時雲の上で昼寝という至福の時を過ごすことができた。「頭がすっきりしたところで、しずちゃんとこへでもあそびにいくか」と考えながら、「タケコプター」で家に帰ると、ドラえもんのしまい忘れていった『タイムテレビ』がのび太の部屋に置いてあった。

 

 「タイムテレビ」で「おとなになったしずちゃん、つまりぼくのおくさんを…でへへ」と笑いながら、のび太がスイッチをつけると、画面にはしずちゃんが「おとなになったら、ますます美人になって…」映っていた。しずちゃんはドアをノックしながら、「おやつができたわよ、たべにいらっしゃい」と呼び掛ける。

 

 のび太は「ノビスケをよんでるんだ。やさしい声! ぼくのママと大ちがい」と思っていると、突然ママから「なにが大ちがいよ!? きょうはいそがしいから、すこしはおてつだいしてって、たのんであったでしょ!!」と怒鳴られてしまった。

 

 テレビ画面を見ると、ドアの中では、「今いそがいいから、あとでいきます」との返事、しずちゃんも「そんなにいそがしいの?」とやさしく問い掛けていた。のび太は「あとでいきますだって! こら、ノビスケ、せっかくしずちゃんがよんでるのに、なまいきだぞ!!」と画面に向かって感想を漏らしていた。

 

 テレビ画面では、「なにを作ってるの」といった質問に対して、「『ロボケット』ロケットとロボットのあいの子なの。小学生発明コンクールに出品しようと思って」との回答が交わされていた。そして、しずちゃんが「じゃ、てがあいたらいらっしゃいね、ヒデヨちゃん」と誘っていた。

 

 のび太は「ヒデヨ!? ぼくのむすこはノビスケだろ!?」とビックリしながら画面をのぞき込んだ。すると再度、ママから「のび太!!」と怒鳴られ、「お使いにいってくるから、その間におそうじとお皿洗いたのむわよ。もしも、やってなかったら…」とにらみ付けられ、のび太も「わかった、やっとくよ!!」と言わざるを得なかった。

 

  ドラえもんが帰宅すると、台所でのび太はお皿洗いなどをしていた。ドラえもんが「お皿洗い? ひゃーめずらしい! これで洗ったの? 茶しぶが落ちていないよと」と指摘すると、のび太は「うるさあい!!」と怒鳴り、カリカリしながら「はやいとこかたづけて、あれをたしかめなくちゃ」とつぶやいている。

 

 部屋の掃除を見て、ドラえもんは「『四角いへやを丸くはく』って、このことだね。すみのほうが、ゴミやほこりだらけ」とケチをつけると、のび太は怒りをエスカレーションさせて、「もんくばかりいってないで、てつだったらどう!?」と反撃する始末。

 

 ドラえもんはのび太のすごい剣幕に圧倒されて、ひみつ道具である『家庭科エプロン』を差し出した。このひみつ道具は「すいじ、洗たく、お料理まで、家のことはなんでもじょうずにできる」優れものである。

 

 こうしたことができないと大人になったとき困るよとの意見に対しても、のび太は「そんなの、じょうずになんかなりたくない!! いいもん、およめさんに…つまり、しずちゃんにやってもらうもん」との考えである。

 

突然思い出したように、「タイムテレビ」で先ほどの続きを確認しようとした。画面に登場する男の子は出木杉にそっくりであり、しずちゃんも「おかわりあるよ。ヒデヨちゃん」と明言している。

 

のび太は「こんなばかな!! たしかにしずちゃんは、ぼくと結婚してノビスケを生んで…」と抗議すると、ドラえもんは「それはそうだが、…、未来はかわることがあるから…。きみがきらわれるとか、出木杉のほうが好きになるとか」といった曖昧な返事に終始した。

 

 確認のためしずちゃんの家に行くと、お母さんから出木杉さんのお宅におじゃましているとのこと、思い切ってドラえもんと一緒に伺うことになった。出木杉は料理準備の真最中であり、二人を大歓迎してくれた。

 

 しずちゃんからは、「出木杉さんしゅみでお料理をつくるんですって」と報告され、出木杉からは、「試食して、批評をきかせてよ」とリクエストされた。

 

 しずちゃんは「おいしい!!」と絶賛、ドラえもんも「こりゃうまい! ほんと! おせじじゃなくて!!」とこれまた称賛、のび太も「う、うまい! くやしいけど、うまい!!」と認めざるを得ない料理に仕上がっていた。

 

  のび太は「でもさあ、男の子が料理なんて…」と異を唱えると、出木杉はすかさず「いや、おかしくないと思うよ。これからの時代は、女性もどんどん社会にでて働くだろ。家事は女性の専門というわけにいかなくなると思うよ」と理路整然の反論。

 

 しずちゃんも「出木杉さんのおよめさんになる人はしあわせね」と納得の発言。のび太は驚愕のあまり、「ガーン」をショックを受け、椅子ごと後にぶっ倒れてしまった。

 

 帰宅の途中でも、のび太は涙を流しながら、「ヨロ ヨロ」と満足に歩けない状態であった。家に帰っても、のび太は「もう生きてるのがいやになった」と意気消沈していたので、ドラえもんは「あきらめるのははやいよ、出木杉にまけない家事の名人になればいい!! 「家庭科エプロン」をつけてがんばれ!!」と積極的に応援。

 

 それに対して、のび太は「今さらそんな…」と意気地ない態度を示したので、ドラえもんは「毎日の小さな努力のつみ重ねが、歴史を作っていくんだよ!!」とこれまた格調の高い励ましを与えるのであった。

 

  のび太のママが「たのんどいたこと、やってくれたかしら。どうせまたいいかげんに…」と思いながら家に帰ってみると、「食器はピカピカ…。ちりひとつ落ちていないわ!!」と完璧に仕上がっていた。

 

 「家庭科エプロン」をつけて、手に電気掃除機を持ってショボンと立っているのび太に対して、ママは「やればできるんじゃない。ありがとお小遣いあげるわ」と最高のご機嫌。

 

 ドラえもんは心配になって、「タイムテレビ」で未来のしずちゃんのその後の状況をチェックした。すると画面には、帰宅途中の未来ののび太が家の前で息子のノビスケに「サッカー、今おわったの? 勝ったか?」と尋ねると、元気よく「もちろん!!」という返事が返ってきた。

 

 そこへ金髪の外人と結婚していた出木杉が火星基地の仕事から帰り、「おーい、野比くん!!」と声をかけながら、出張中あずかってもらっていた「ヒデヨ」を迎えに来た。出木杉の奥さんのお礼の言葉が「タイムテレビ」から流れていた。

 

  ドラえもんは「こんなことだったのか!」とことの真相を知ることになった。のび太は「これから、毎日おてつだいさせてね」と執拗にママにお願いするので、ママはパニクッていた。その情景を見て、ドラえもんも「とうぶんだまってたほうがいいかな…」と思ったりしたのでした。

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