具象化鏡 [★★★]

[初出誌] 『具象化鏡』、「小学六年生」19863月号、10頁、70コマ

[単行本]  具象化鏡』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第39巻」1989125日 初版第1刷発行、10頁、70コマ

[大全集] 『具象化鏡』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 132011430日 初版第1刷発行、10頁、70コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 変更なし

 

[梗概] のび太がいつものように「ゴロ ゴロ」昼寝をしているので、ドラえもんはひみつ道具『具象化鏡』のスイッチを「カチ」と押し、「ゴオ ゴオ」と時の流れを見せ、「きみがだらけてる間にも時間は休みなく流れていく」ことを説明している。

 

 ドラえもんが「たしかにきみは頭がよくない。それならそれでいっそう勉強が必要ではあるまいか」、「勉強ならやったさ、めずらしく。きょうのテストにそなえて」、「フーン…それで結果は?」

  「おそらく0点。もうむだなことはやめた。どーせぼくなんか…」と嘆くので、ドラえもんが「具象化鏡」のスイッチを押すと、のび太は「モヤ~」と暗い人になった。言葉の上の表現をほんとに見えるようにするのが「具象化鏡」の特徴である。

 

 なんだかわからないでこの鏡のスイッチを押すと、「トコ トコ」とキツネが現れ、のび太の顔を「ギュ」とつねった。「キツネにつままれたような」表現が具体化したものである。

 

  のび太がスイッチを入れっぱなしにして出掛けようとすると、ママから「勉強もしないで! 今学期の成績が楽しみね」と言われると、きゅうにのび太の耳がガンガンしだした。これが「耳にいたい言葉」の実例であった。

 

 外に出ると、スネ夫が「きょうもアイドルスター二人からデートにさそわれて、どっちへ…」と言いかけると、スネ夫の体は真っ赤になってしまった。これは「まっかなうそ」の例であった。

 

  のび太がしずちゃんの「きょうのテストたぶん九十点ももらえないと思うわ。出木杉さんはこんども百点でしょ」、出木杉の「ま、ひととおりできたつもりだけど…」、「頭のいい人ってうらやましいわ」、「よしてよ、たいしたことじゃないよ」の会話を聞いて、「ボウ」と燃え上がったのは、「しっと(ねたみ)の炎」であった。

 

 のび太が「しずちゃんが出木杉をすきになるのもむりないや。頭がよくてスポーツマンでやさしくて……。ぼくなんかとても…」と考えて歩いていると、「ドーン」と穴に墜落してしまった。これは「絶望のどん底」であった。

 

  なんだか体だけじゃなく心も重くなってしまった。これが「重い心」、「重い足どり」であった。「世の中まっ暗だァ!!」とドカンの上で叫び、この「胸もはりさけそうな悲しみ」と口にすると、「ビリ」とほんとに張り裂けそうになってしまった。

 

  先生から「ひるまから暗やみでさわいでるのはだれかね」と尋ねられたので、「あ、先生」、「その声は野比か。いいところであった。話がある」、「どうせテストが悪くておこるんでしょ」、「おこる? 何点だと思ってるんだ」

 

 「わかんないけど…。いつだって正しいつもりの答えが、みーんなまちがってるんだもの」、「六十五点だ! めずらしく勉強したな」、「ロク…ジュウ・・ゴ、テ、ン!?」となり、「希望の光」、「天にのぼるここち」、「はずむ足どり」を実感できた。

 

 「梅が満開だよ。もうすぐ春だね」、「ズシン… ズシン… ズシン・」、「なにか近づいてくる!! すごくでっかい足音が」、「あれは春の足音だよ」となった。

[S1372A3920068603]