ジャイアン殺人事件 [★★★]

[初出誌] 『ジャイアン歌手になる!?』、「小学六年生」19852月号、10頁、60コマ

[単行本]  『ジャイアン殺人事件』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第39巻」1989125日 初版第1刷発行、10頁、60コマ

[大全集] 『ジャイアン殺人事件』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 122011330日 初版第1刷発行、10頁、60コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 タイトル『ジャイアン歌手になる!?』が『ジャイアン殺人事件』に変更

 「ゆく手はるかにたちこめる黒雲のような何かが……」が「ゆくてはるかにたちこめる悪霊のようななにかが……」に変更[701(4)]

 

[梗概] ドラえもんとのび太は「こういうお天気のいい日は、町ゆくのら犬の足どりさえはずんでいるね」、「ピタ ?……」、「なにか不吉な気配がする…。ゆく手はるかにたちこめる黒雲のようななにかが…。キャイン キャイン キャイン これはただごとじゃないぞ!」となった。

 

 ジャイアンの歌が聞こえてきたので、ドラえもんとのび太が耳を押さえ、目を閉じて駆け抜けようとしたら、ジャイアンが新曲をつくってリハーサルしているドカンのある広場に、こともあろうに飛び込んでしまった。

 

 二人が覚悟を決めて歌を聞いていると、のび太が「いつもふしぎでしょうがないんだけど…。ジャイアン本人はどうしてあのすさまじい歌にケロッとしていられるんだろ」、「あたりまえだろ、フグが自分の毒で死ぬか!?」といった会話が続いていた。

 

 そこへ「すばらしい!! こんなすごい歌はじめてきいた。きみこそさがしもとめていた人だ。おりいってお話が…」、交渉の結果、ジャイアンが歌を歌うことを引き受けることになった。テープでの録音が終わり、「校長さんによろしく」と別れを告げた。

 

 ジャイアンは、「今の人? グランプリミュージックスクールの教頭だって。プロの歌手を育てる学校だ。おれの歌を校長にきかせたいんだって。ミュージックスクールの校長にだぞ! ついにおれの才能を、みとめてくれる人があられた!!」と有頂天になっていた。

 

 二人はまったく信じられなかったので、しずちゃんに話しても、「ウッソー」となった。スネ夫に話すと、「犯罪のにおいがする!! しかも…、おそるべき完全犯罪だ」と言い出した。

 

 スネ夫は、「教頭はそのテープを、寝静まった校長の耳にひそかにきかせる。すぐにはきき目が現れない。しかし毎晩くりかえすうちに…、しだいに歌の毒がまわり…、校長は日に日におとろえ…、やがて命を落とす。そして教頭が学校をのっとるんだ!! しかも後にはなんの証拠も残らない!! 名づけてジャイアン殺人事件!!」と推理した。

 

 そこへジャイアンがやってきた。スネ夫の推理によればと話しかけると、スネ夫は「ワー ワー」と喚いて、ジャイアンが手に持っているものに関心を向けた。

 

 それは「スリムローラー」といってマッサージするとやせるものであり、「アイドル歌手は歌がうまいだけじゃいけない。ルックスもよくなきゃな」で、さっそく買ってきた新製品であった。

 

 調子のいいスネ夫は「ジャイアンがスマートになったら、女の子にもてるだろなあ。そろそろ、テープをきいた校長がすっとんでむかえにくるよ」とよいしょしていた。

 

 もしほんとなら人命にかかわることだ。いちおうしらべようと言いながら、ドラえもんはひみつ道具『警察犬つけ鼻』を取り出した。この道具は「車に乗った人のにおいもたどれるほどの高性能」なものである。

 

 グランプリミュージックスクールは簡単に見つけることができた。中に入ろうとしたら、ジャイアンのテープが流れてきたので、ドラえもんとのび太は危うく失神しそうになった。

 

 「なあ校長すごい歌だろ。これで宣伝テープをつくれば、少しは生徒がきてくれるんじゃないか。これに似た声で少し歌える男に、同じ歌を歌わせるんだ。二つのテープをつないで…。本校ご入学前とご卒業後。どんなオンチな生徒さんでもこんなにじょうずになれます」というのが事の真相であった。

 

 ドカンの上で「まだむかえにこない。おそいなあ…」とじっと待っているジャイアンに、のび太は「ほんとのこと教えるのと、このままだまってるのとどっちが親切だと思う?」と真面目にドラえもんに尋ねている。

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