のび太もたまには考える [★★★]

[初出誌] 『能力カセット……』、「小学六年生」19833月号、10頁、67コマ

[単行本]  『のび太もたまには考える』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第34巻」1985825日 初版第1刷発行、11頁、76コマ

[大全集] 『のび太もたまには考える』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 1020101030日 初版第1刷発行、11頁、76コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 タイトル『能力カセット……』が『のび太もたまには考える』に変更

 「ほらほら使うぞ」コマ挿入[740(5)]

「使えば」コマ挿入[740(6)]

 

「宿題をぜんぶ終えて寝る気分は最高だなあ」コマ挿入[740(10)]

「とめるべきだったかしら……」、「いやどうせとめてもむだだったろうな……」コマ挿入[741(3)]

「なりゆきをみまもるしかあるまい」コマ挿入[741(4)]

 

「こんどはこれがやくに立つ」コマ削除[176(2)]

「おれの歌なんかだと!?」、「GGGGGGGG」コマ挿入[744(5)]

「ウソ…、のび太がこんなに強いなんて………」、「じゃあ、もういちどやるか!!」、「GGGGGGGG」コマ挿入[745(1)]

 

「ガハハハハ」コマ挿入[745(2)]

「これを使ったのさ」コマ挿入[745(3)]

「すべてカセットのおかげじゃないか」、「思えばむなしい………」が「さっきからのこと…、すべてカセットのおかげじゃないか」に変更[745(9)]

 

「ぼく自身はあいかわらず……、ドジでのろまで弱虫で………、思えばむなしい………」コマ挿入[746(1)]

「決心してもズルズルと元へもどっちゃうんだよな……」が「しかし、なんど決心してもズルズルと元へもどっちゃうんだよな……」に変更[746(3)]

 

【単行本vs.大全集】

 「カセットぜんぶかりていくからね~」が「カセットぜんぶ貸りていくからね~」となる校正ミス[741(1)]

 

[梗概] 今日もまた、どら焼きを食べているドラえもんの傍らで、のび太がオーバーに「ア~、破滅だ、おしまいだ!! なぜ破滅かおしまいか教えてやろうか」と泣き叫んでいる。

 

 さらに、「あす算数のテストがあるんだよ。ここんとこず~っと悪い点ばかり。もし今度0点だったら幼稚園にかえすと先生がいうんだよ」と訴えるのび太に対して、ドラえもんはお茶を優雅に飲みながら、「がんばってちょ~だい。それだけ?」と軽く交わしている。

 

 のび太が顔を真っ赤にして、「ぼくがこんなに悩んでいるのに」と椅子から立ち上がって、力説すると、とぼけた顔でドラえもんが「悩んでる…? いや、悩んでなんかいないね、たんなる甘ったれてるだけだ」と応酬している。

 

 そして突如、「いっぺんでいいから本気で悩んでみろ!!」と怒鳴りつけた。「自分というものをしっかりみつめろ。悩んで悩んで悩んで悩みぬくのだ。そうすれば…、そこに新しい道がひらけるだろう」と最後は冷静になって説教を終えている。

 

  のび太は「さっぱりわかんないけど…、ようするにたすけてくれないってことね。やるしかない」と言いながら机に向かって勉強を始めた。

 

 するとママが、「のびちゃん電球が切れたから買ってきて」と頼むので、ドラえもんが「勉強中だからぼくが」と申し出たが、「おつかいさせるのも教育のひとつです!」とピシャリと言われてしまった。

 

 「電気屋さんは踏切をわたってず~っと遠くなんだよ」とのび太が告げるので、ドラえもんはひみつ道具である『能力カセット』を取り出した。

 

 このひみつ道具には、「いろんな人のいろんな能力がマイクロカセットに入ってる」ので、例えば、マラソン選手のカセットをはめ込むと、一時間の間マラソン選手なみに走れることができた。このひみつ道具を使うと、ママがビックリするような早さでお買い物をすることができた。

 

 ドラえもんが「さ、テストにそなえてがんばりなさい」と言うと、のび太は「さっきみたけど、まだいろんなカセットがあったね。ほ~ら、数学者のテープがあった。はじめからこれをかしてくれれば、いいのに、ケチ! そんなものにたよらずに、勉強しろなんていうんだろうけど、ぼくは使うからね」と言いながら、好き勝手に使い出した。

 

 その晩、数学者のカセットを胸にはめて問題を解くと、「スラスラスイ」とはかどり、「さすが数学者、小学生の問題なんか、かんたんすぎてあくびがでるよ」と舐めきった態度、挙げ句の果て、「宿題をぜんぶおえてねる気分は最高だなあ」といった感想を漏らすまでになっていた。

 

 翌朝のび太は「カセットぜんぶかりていくからね~」と学校に出かけた。玄関前で見送るドラえもんに対して、ママから「どうしたの、暗~い顔して」と指摘された。ドラえもんは「とめるべきだったかしら…。いやどうせとめてもむだだったろうな…。なりゆきをみまもるしかあるまい」と心に決めた。

 

 学校では、先生から「なに!? 野比はもう答案がかけたって。どれどれ…、信じられん! もんくなしの満点だ!!」と絶賛。つぎの国語の時間でも、この文の意味を述べる問題で、先生から、「野比、この問題はきみには無理かも…」と言われたが、のび太が解答すると、「そうです! それでいいのです!!」とこれまた満点。

 

 社会の時間でも、先週の宿題のレポートに関して、「の、野比くん!! こ、この電話帳みたいのをきみひとりでかいたのか!?」と驚きの目をもって称賛された。

 

 帰宅すると、のび太はドラえもんに「も~気もちいいのなんのって。なんかいいたそうだね、ちゃ~んと顔にかいてある。ちょうしにのって使いすぎるとろくなことないといいたいんだろう。ぜったいかえさないもんね」と勝ち誇った態度に終始した。

 

 ドラえもんが「ぼくなんかいなかったほうが…、きみのためにはよかったかもしれない」と静かにつぶやいて、部屋を出て行った。その姿を見てのび太は「…?」と何らか心境の変化をきたしたが、自分ではまだ深く認識できない状況であった。

 

 ジャイアンやスネ夫に野球に誘われると、「野球選手」のカセットをはめて参加したので、守れば超ファインプレー、打てばすべてがホームランという大活躍。しずちゃんたちからも「すごいわ、なんでもできるのね」と憧れの眼で見つめられた。「歌手」や「強い人」のカセットをはめれば、超一流で天下無敵になることもできた。

 

 カセットのボックスをのぞいて、「あとどんなのがあるかな。…こりゃなんだ」と思って取り出すと、そのカセットは「考える人」であった。それを「カシャ」と胸にはめ込むと、次から次へと走馬灯のようにいろんな考えが脳裏に浮かんで消えていった。

 

まず最初は、「考えてみれば…、さっきからのこと…、すべてカセットのおかけじゃないか」という考えであった。次には、「ぼく自身はあいかわらず…、ドジでのろまで弱虫で…。思えばむなしい…」、さらに、「ドラえもん、なにもいわなかったな…。ぼくのこともうあきらめちゃったのかなあ…」

 

最後には、「ドラえもんともいつかは別れの時がくる…。いつまでも子どもじゃいられないものな…。わかってるんだよ、このままじゃいけないってことは…。しかし、何度決心しても、ズルズルと元へもどっちゃうんだよな…。でも、やっぱり努力しなくちゃいけないんだよな。あきらめずにな」といった結論に落ち着いた。

 

 のび太は借りたひみつ道具である『能力カセット』をドラえもんに返すと決心して手渡すと、ドラえもんは喜色を満面に浮かべて、「えつ、自分からかえす気になってくれたの!? めずらしい」と褒めてくれた。

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