のび太航空 [★★★]

[初出誌] 『三輪飛行機』、「小学六年生」19829月号、18頁、110コマ

[単行本]  『のび太航空』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第28巻」1983825日 初版第1刷発行、18頁、112コマ

[大全集] 『のび太航空』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 1020101030日 初版第1刷発行、18頁、112コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 タイトル『三輪飛行機』が『のび太航空』に変更

 「つれてきたよ~」コマ挿入[684(1)]

「さすがに迫力あるなあ」挿入[684(3)]

 

「よおしみてろ!!」挿入[684(4)]

「バラ バラ」コマ挿入[684(5)]

 

[梗概] みんなで将来の夢を話したら、ジャイアンは歌手、スネ夫はデザイナー、しずちゃんは国際線のスチュワーデスになるというので、のび太はジャンボジェットのパイロットに決めたと、ドラえもんに報告している。

 ドラえもんはのび太が操縦すると多くの人命を危険にさらすことになると思ったが、夢を持つことは悪くないので、「そのためには、もっと勉強して、からだをきたえ…」と励ました。すると、のび太は今から技術を身に付けたいので、子どもでも飛べるような飛行機を出して欲しいと強引に頼んできた。

 

 ドラえもんは未来の遊園地においてあるひみつ道具『三輪飛行機』を取り出した。ペダルを「キコ キコ」こぐだけで空中に舞い上がって、速くこげばこぐほどスピードがで、ハンドルを操作すると、宙返り、横転、きりもみなどなんでもできるので、のび太は大いに気に入ってしまった。

 

 こぐのに疲れると、グライダーみたいに滑空できるので、将来といわず、今すぐパイロットを始めると言いだした。

 

 ドカンのある広場に、「のび太航空」を開業した。すると、ジャイアンやスネ夫やしずちゃんがやってきて、「か~わいい! いつまでたっても、幼稚園みたいなやつだ。

 

 飛行機ごっこね」と言われた挙げ句、「ぼうやたち、なかよくあちょぶんでちゅよ」と野次られ、笑って帰って行ってしまった。ドラえもんやのび太ははずかしい思いをしたが、のび太が「どんな事業でも、始めからうまくいくわけがない。この飛行機のすばらしさがわかれば、お客がつめかけてくるよ」と懸命にドラえもんを説得した。

 

 しずちゃんの飼っていたカナリヤが逃げたというので、のび太がパイロットになり、広場のコントロールタワーのドラえもんから、離陸の許可をもらって、カナリヤの飛んでいった裏山を目指した。

 

 カナリヤのピーコちゃんが見つかったので、懸命にこぎ、しずちゃんにアミをかまえてもらって、限界までスピードアップすると、かろうじてアミでカナリヤを捕まえることができた。

 

 しずちゃんとのび太が「すばらしい飛行機ね。気にいってもらえてうれしいよ」と会話しながら、スネ夫の見ている窓の近くを通って、ぶじ滑走路に着陸している。

 

 スネ夫は気になって何度も何度も偵察にやってきた。そして、空の旅のベテランだから、「きみらの飛行機にのってあげて、いろいろアドバイスしてあげてもいいなあ…」と言いながら乗り込んできて、町内遊覧を頼んでいる。

 

 座席がきゅうくつだからファーストクラスを作れとか、眼下の小さな家やりっぱなお屋敷はだれの家かと尋ねたりしている。ジャイアンが家の屋上にいたので声を掛けると、かあちゃんに追い掛けられているから、大きな声を出すなと頼んでいる。

 

 スネ夫はスチュワーデスがいないとか、機内食のサービスがないとか言うので、のび太はコントロールタワーに何とかならないかとお願いしている。

 

 ドラえもんはしずちゃんに頼んで、タケコプターを付けてもらって、ジュースやサンドイッチのサービスをしてもらったり、イヤホンのリクエストがあると運んでもらったり、映画のリクエストがあると、駅前の名画座の割引券を配布してもらっている。

 

 スネ夫は「飛行機はダサイが、サービスでおぎなって、まあまあ合格点」と好き勝手なことを言って帰っていった。頭にきたのび太は「たかが三十円で大きな顔すんな!」と怒鳴っていた。

 

 そこへ、ジャイアンが左手にふろしきを持って、急いでやってきた。のび太が「なんのかんのいっても、けっきょくのりたくなったんだね」というと、きげんの悪いジャイアンは「さっさとのせろ!!」と怒鳴りつけた。

 

 のび太が「キコキコキコ」とこぎながら、「ジャイアンは、おもいいなあ。料金を倍もらわなくちゃあわないよ」と考えていると、「う~んと遠くへ。そうだ、ホンコンへやれ!!」と命令してきた。

 

 「じょうだんじゃない、これは国内線だよ」と応対すると、これが目に入らぬかと花火セットを見せながら、「いうとおりとばないと、火をつけておまえの座席へほうりこむぞ!!」とすごい形相で脅してきた。

 

 のび太からコントロールタワーのドラえもんにわが機はハイジャックされたとの一報が入ってきた。「それで、犯人の要求は!?」、「かちゃんからにげるため、外国へいくというんだよ」、「機長!! おちつけ。 犯人をしげきするな。時間をかけて交渉しろ。その間に、こちらも対策を考える」とのやりとりが続いた。

 

  機上では、「ホンコンへいく道、わかんないんだけど」、「世界地図をもってこさせろ。ついでに、弁当とこづかいを百円だ。一時間以内だぞ。一秒でもすぎたら、機体を爆破する!!」と左手に三本の花火を持ち、コントロールタワーにいたドラえもんやしずちゃんにも、直接聞こえるようにがなり立てていた。

 

 ハイジャックであわてているドラえもんを見て、スネ夫は「きみたちの手にはおえないね。当局に連絡する」と言いながら駆け出した。機上では、「いやに手間どるな。時間かせぎやっているんじゃないだろうな」とイライラしているかたわらで、のび太は「あの…、ほんとにトイレに…」と懸命にこらえていた。

 

 スネ夫がジャイアンのかあちゃんを連れてきたので、コントロールタワーで、「タケシやめな!! つまんないことして、人さまにめいわくかけたらしょうちしないよ」とすごい迫力で説得してもらった。

 

 ジャイアンは「ウヌーッ、よくもかあちゃんを!! ようしみてろ!!」と大粒の涙を流しながら、機上から「バラバラ」と地上めがけて花火を投げつけた。

 

 のび太は我慢の限界を超え、顔を真っ赤にして、やおら機上の上で立ち上がり、ジャイアンの顔をめがけて「ジョバ」とおしっこをした。「ワー、やめろ!! 機長!! なにをするんだ!!」と絶叫しながら、うら山に墜落してしまった。

 

のび太は頭をかきながら、みんなの前で「パイロットやめた」、ドラえもんは「そのほうがいいと思うよ、世の中のためにも」と納得していた。そのころ、ジャイアンはかあちゃんに首根っこをつかまれ、ションボリした顔で、家路に向かっていた。

[S1066A2813068209]