のび太が消えちゃう? [★★★]

[初出誌] 『のび太が消えちゃう!?…』、「小学六年生」19812月号、10頁、62コマ

[単行本]  『のび太が消えちゃう?』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第43巻」1992125日 初版第1刷発行、13頁、87コマ

[大全集] 『のび太が消えちゃう?』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 82010630日 初版第1刷発行、13頁、87コマ

 

[梗概] のび太がゴロゴロしていると、パパがやってきて、「いったい自分の将来というものをどう考えてるんだ。そろそろ人生の目標をさだめて歩きだしてもいいころじゃないか。たとえば学者になりたいとか。芸術家とか政治家とか」と得意な説教を始めた。

 

 すると、のび太は「ぼくそんなのこだわらないよ。なんでもいいの。らくな仕事でかっこよくてお金さえもうかれば」と気楽に答えた。

 

  パパはのび太を書斎に連れてきて、のび太やドラえもんも知っている大家画伯のりっぱな画集を見せた。それから、「ちょうど今から二十年前の二月十五日…、あれがぼくの運命の別れ道だったんだな」と語り出し、「そもそもぼくは、画家になるのが子どものころからのゆめだった。

 

 「おやじの反対で美術学校には入れなかったがね。ほんしきに絵を勉強するためのお金をだしてやろうという人があらわれたんだよ。留学したければ、フランスでもイタリアでもいかせてやるといわれて…。まよったなあ。ぐずぐずしてるうちにちゃんすをにがしたけどね。もしあのときけっしんしてれば、いまごろは…。だから! のび太には自分のおもい通りの道へ進ませてやりたかったんだよ!! よーく考えて目標をきめなさい」といって部屋を出ていった。

 

 その話を聞いて、ドラえもんとのび太はタイムマシンに乗って、二十年前のパパに、画家を目指してがんばれと声援に出かけた。おばあちゃんによれば、のび助はひどく迷ってる様子であった。

 

 おじいちゃんは「もう子どもじゃない。自分の一生のことは自分できめさせなさい」とおばあちゃんに話していた。パパは三時までに金満さんにん返事しにいくに約束であったが、思いきっていくべきか、それともこのままかで悩み、ひとりジャンケンで決めようとしていた。

 

 のび太は「もうすぐ三時だよ。あれじゃ日がくれちゃう」と焦るので、ドラえもんはひみつ道具「ヤリトゲ」を「ピュッ チクリ」とパパの背中に刺した。「このトゲが刺さると、思ったことをなにがなんでもやりとげるんだ。だれも止めることはできない」というものである。

 

 パパが決心して出かけると、将来およめさんになる金満兼子さんが車でやってきて、ドラえもんとのび太に「あの人にとって夢みたいな話だと思うのに、いつまでもまよってばかり。ほんとにじれったい人!!」と不満をたらたらで帰っていった。

 

 「パパがあの人と結婚すれば、きみは生まれないことになるんだぞ!!」となるので、ふたりは懸命に追い掛けて、パパに「ちょっと考えなおして…」もらおうとしたが、「ヤリトゲ」のせいでだれにも止めることができなかった。なんとかしようと思って、その家の前までやってきたので、二人で乗り込むことにした。

 

 金満兼子のパパが「わしは若いころ絵かきになりたかったんじゃ。その夢を娘のむこではたそうと思ってな。わしの金とコネできみを世界的な大画家にしてやるぞ。ワッハッハ」と話し掛けると、パパは「あの…きょううかがったのはじつは…」、「えっ。ことわりにきた!?」、「せっかくのお話しですが…」

 

 兼子さんは「こんな美人をお嫁さんにしたくないっていうの!?」と叫び、兼子のパパも「お金ならいくらでもだすといっとるんだぞ」と懸命に説得した。

 

パパは「金をかければ画家になれるというわけじゃないのです。それに、どんなしごとをしながらでも絵はかけますから…。もっとはやくおことわりしたかったのですが、兼子さんががっかりしてきずつくと思うと…」と弁解した。

 

兼子さんから、「ばっかにしないでよ!! パパ、第二候補の大家さんに電話して!! あなたみたいなばかな人大きらい!!」と罵倒され、玄関の外に蹴り出されてしまった。

 

 パパは「ばかか…そうかもしれない。でも、これでスッキリしたよ。ぼくの人生はぼく自身の力できり開いていくのだ!! やるぞ!! ウオーッ!!」と駆け出すと、ひとりの女子高校生に「ドシン」とぶつかってしまった。

 

 すみませんと謝っていると、道路に「片岡玉子」という定期券が落ちていたので、パパはその人を追い掛けることになった。ドラえもんとのび太はパパとママの出会いをはじめて知った。

 

 タイムマシンで現代に帰ると、パパはキャンバスを出して「ひさしぶりにかいてみたくなってね」とママに話し、ママも「まあめずらしい」と声を掛けていた。

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