しずちゃんさようなら [★★★]

[初出誌] 『しずちゃん、さようなら…』、「小学六年生」198011月号、10頁、70コマ

[単行本]  『しずちゃんさようなら』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第32巻」1985125日 初版第1刷発行、12頁、90コマ

[大全集] 『しずちゃんさようなら』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 82010630日 初版第1刷発行、12頁、90コマ

 

[梗概] 学校からの帰宅途中、しずちゃんから「あら、のび太さん。今帰るの?」と声を掛けられても、のび太は何も言わないで、逃げるように走り去っている。しずちゃんと別れる決心をしたという話を聞いて、ドラえもんは大いに驚いた。

 

 「別れるって…? まだ結婚してるわけでもないのに」と尋ねると、のび太は「だからそうなる前に別れるんだ。決心したんだ!」と。ドラえもんの「きらいになったの?」との問いに対して、のび太は「とんでもない! 好き! 好き! 大好き!! あの子がいるからぼくは生きていけるんだよ」とキッパリと答えている。

 

 決心した理由は学校の先生の次の言葉「きみにはつくづくあきれた。同じこごとを何度いわせるつもりだね。ほんとにもう…。そんなことじゃろくなおとなになれんぞ!! 先生は断言する!!」にあった。

 

 のび太は「いわれてみればそうかなあと…。だから、ぼくなんかのおよめさんになれば、しずちゃんは一生不幸に…」と「ウツウツ」と泣きながらの回答であった。

 

その話を聞いて、ドラえもんは「アハアハハ」と大笑いしながら、「そんな先のことを今から大げさに」と言うばかりであった。しかし、今回ののび太はいつもと違っていて、「未来をかえるには、今から手をうたなくちゃだめなんだ!! つらいけど、ほんとにしずちゃんの幸せを願うなら…、やるべきだ!!」と至って真面目で真剣。

 

のび太は「でも、うまく別れられるかなあ。自信ないなあ」といった考えが頭を過ぎったので、早速ママに引っ越しやアメリカ留学の話を持ち出したが、怒鳴られる始末であった。

 

 のび太は「けっきょく、ぼくの意志の力だけで、しずちゃんを忘れなくちゃいけない。まず、これまでのぼくとしずちゃんの、あらゆるつながりを断ち切ることだ」という心境になった。最初、借りていた本をしずちゃんのママに手渡し、「しずちゃんにさようならと伝えてください」と言い残して、走り去った。

 

「どうもようすがへんだわ」と思ったしずちゃんが追い掛けてのび太に「なにかおこってるの?」と尋ねると、のび太は「ぼくらはもうあわないほうがいいんだ。きかないで! このまま別れて!!」と繰り返すばかり。

 

 しずちゃんも「ますます気になるわ。いうまで離れないから」と言い張り、のび太は「どうしたらいいんだろう。そうだ!! きらわれればいいんだ」という気持ちになり、思わすしずちゃんのスカートを「パッ」とめくってしまった。しずちゃんはのび太の頭にコブができるほど殴り、「きらい!!」といって立ち去った。

 

 のび太は「これでいいんだ…。でも…、つらいなあ。たえよう! しずちゃんの幸せのために…」と思案していると、通りがかった出木杉が「どうしたの?」と声を掛けてくれた。

 

 のび太は出木杉の両手をガッチリ握り、目に一杯涙をためて「きみはいいやつだ。きみなら幸せにできる。しずちゃんのこと、たのんだぞ!!」と将来を託し、両手で顔をおおって「ク、ク、ク…」と泣きながら立ち去った。

 

  机の前でションボリ座っているのび太を見て、ドラえもんは「ばかばかしいと思うけど…。いじらしくもあるなあ」と嘆息するばかりであった。

 

 しずちゃんは出木杉から「どうもへんだ」と言われ、ジャイアンとスネ夫の「のび太もかわいそうに。先生に残されて、ひどく叱られてたからな。こたえただろうな。あれだけいわれれば、世の中いやになるよな。ぼくなら死にたくなるね」との立ち話を聞いた。

 

 さらにママの「しずちゃんにさようならと伝えて…」の伝言などを総合的に判断して、のび太さんは自殺するのではないかという結論に達した。それで、しずちゃんはのび太の家に向けて駈け出した。

 

 しずちゃんの姿を窓から見た、のび太はドラえもんにひみつ道具である『虫スカン』を出してもらった。この薬を飲むと、しずちゃんに確実に嫌われ、さらに、しずちゃんだけじゃなく、誰も寄りつかなくなるという、イヤで「ムカ ムカ」するような強力な臭いを発するものである。

 

 大量の薬を飲んだのび太の発する臭いで、ドラえもんもママも家にいることができず、外へ飛び出してしまった。

 

 しずちゃんはのび太の「助けて!!」という叫び声を聞いたので、部屋の中の猛烈な悪臭をものともせず飛び込んで、倒れているのび太を背負って、トイレに連れて行くことに成功した。

 

 トイレで、しずちゃんの「のどのおくへ指をつっこんで。はいてしまえば、楽になるわ」といった適切な処置により、のび太は全部「ゲ~」と言いながら吐いてしまった。

 

 元気になったのび太に対して、しずちゃんは「ああ、びっくりした。毒を飲んだのかと思ったわ」と正直に話すと、のび太は「そんなに心配してくれたの? ぼくのこと」と今さらながら感謝の言葉を述べた。

 

 すると、しずちゃんは「あったりまえでしょ!! お友だちだもの!! あなた弱虫よ!! 先生に叱られたぐらいで…」と「ガン ガン」とのび太をしかりつけた。

 

 屋根の上で夜空を見上げながら、のび太は「しずちゃんにきらわれるのは、また今度にするよ」と言い、ドラえもんは「それがいいだろ」と同意したのであった。

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