のら犬「イチ」の国 [★★★]

[初出誌] 『のらイヌたちを救え!!……』、「小学六年生」198010月号、17頁、117コマ

[単行本]  『のら犬「イチ」の国』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第22巻」1981825日 初版第1刷発行、20頁、143コマ

[大全集] 『のら犬「イチ」の国』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 82010630日 初版第1刷発行、20頁、143コマ

 

[梗概] 一度だけエサをやった野良犬が、ジャイアンに襲われると、「ワ・ワン!」と吠えて、のび太の窮地を救ってくれた。生き物を飼うことができないと説得しても、ついてくるので、しばらく、しずちゃんの家に避難することにした。

 

 しずちゃんの家では、出木杉が新聞を読みながら、アフリカの奥地で発見された大昔の町の遺跡の記事をみんなに話していた。「この遺跡はかなり高い文明を持っていたらしく、これまでの考古学・人類学の定説をくつがえす画期的大発見…」という内容であった。のび太には難しくてサッパリ理解できなかった。

 

 しずちゃんの家を出ると、野良犬が待っていて、のび太についてきたので、ドラえもんに相談するとひみつ道具『かべかけ犬小屋』を出してくれた。目立たないところへ貼って、ひとまず野良犬を飼うことにした。 

 

 学校から帰ると、「クウン クウン」と、のび太になきついてきた。広場に連れ出し、たっぷり遊ばせ、名前が付いていなかったので、賢明で「ワン ワン」となく犬であったので、ワンといえば英語の「一」であるので、「イチ」という国際的な名前を付けることにした。

 

 夜になるとさびしいのか、「クウン クウン クウン」となくので、犬小屋でしばらく一緒にいることにした。「ミャアミャア」と屋根でなく、捨てられたネコのことが気になる、とてもやさしいイヌであることがわかった。

 

 次の朝、ママから「台所からよく食べ物がなくなるけど」と、問い詰められたので、のび太は「夜中に勉強なんかしてるとさ、ついおなかがへったりして」と苦しい言い訳をしている。こづかいも底を突き、ソーセージを一本買うのがやっとという状態になってしまった。

 

 ソーセージを与えると、何か言いたそうであったので、ドラえもんはひみつ道具『動物語ヘッドホン』を出して、聞くと「かわいそうなのらネコがいるので、いっしょに飼ってくれ」という内容だった。

 

 ビックリした後、「ミウ ミウ」なくネコを「ショボ」と見ているイチの気持ちを汲んで、のび太はいっしょに飼う決心をした。のび太は二匹分のえさ代を稼ぐため、早速パパの肩たたきを始めた。

 

 パパから「つづくようならこづかいを値上げしたやるぞ」と言われたが、「少しずつでいいから毎日ほしい」と頼んだので、怪しまれたかもしれないと思った。

 

 その間、ドラえもんは未来の世界へ行って、ひみつ道具『無料ハンバーガー製造機』を手に入れて帰ってきた。この機械は「水と空気でクロレラを培養して。人工肉を作る」ものであったので、食糧問題を一挙に解決することができた。

 

 のび太のママは庭でイヌやネコのなき声がするので、どっかにきっとかくしているのだとパパに話していた。ママが徹底的に探したので、次の日、学校から帰ってくると、ママからショボンとしているイヌとネコを「すてていらっしゃい!!」と言い付けられてしまった。

 

 「どこでもドア」を使って山奥へ捨てに行くと、野犬がいっぱいいることに気づいた。ドラえもんは「保健所のおりがこわれて野犬がにげだしたというニュース」を思い出した。

 

 たくさんの野犬を見て、ドラえもんは「山の中にはあれだけの犬の食べるえさがない。やがては村へあらわれて鳥小屋をおそったり…。人間と争うことになって…。みんなつかまってこれされちゃう!!」と判断して、ひとまず、「スモールライト」で小さくして、みんなを連れて帰った。

 

 のび太とドラえもんが人間のペットに対する無責任さを糾弾しているとき、ひとつの素晴らしいアイディアがドラえもんに閃いた。つまり、人間のまだいない、昔へ送ってやるという案であった。

 

 ついでに近所ののらネコや野犬もいっしょに連れ、タイムマシンに乗って、「恐竜時代のさらにもっと大昔。犬やネコをいじめるような動物は、まだあらわれていない、約三億年前にやってきた。

 

 イチに、のび太は「おまえがリーダーになってなかよくくらすんだよ」と言い含めた。しかし、周りには犬やネコのえさになるようなものが何ひとつなかった。

 

 ドラえもんはひみつ道具『進化放射線源』を出し、イチが「無料ハンバーガー製造機」を自由自在にいじくれるように着手した。イチに「進化放射線源」の最高パワーを、「ピピ ピピピピ…ピ…」と照射した。

 

 立ち上がったイチに「まずメインスイッチを入れて。培養器のコックを開き。蛋白抽出ドラムを始動。…」と教えると、「ポン ポン ポン」とのび太より上手にハンバーグを作り出せるようになった。

 

 のび太はイチに「きみは勇気をあるし、りっぱなリーダーになれるよ。だれにもえんりょしないでのびのび生きな」という言葉を残して、タイムマシンで帰ってきた。

 

 テレビでは、「遺跡の発掘が進むにつれ、なぞは深まるばかりです。この都の栄えた年代は、じつに三億年の昔です。これは人類の発生以前で、では、いったいだれが住んでいたのか…。建物の出入り口や家具などから推定される住民の身長は、意外に小さく犬やネコていどです」といったドキュメンタリー番組が流れてきた。

 

 ドラえもんはこの番組を見て、「ア~ツ」と驚きの言葉を発し、「進化放射線源」を忘れてきたので、あれから千年後の世界へタイムマシンで出掛けた。

 

 わずか千年で大都市に変身し、三億年たって掘り出された遺跡であるらしいことがわかった。りっぱな神殿には神様の彫刻が鎮座していた。二本足で立った犬がやってきたので、「イチ」を尋ねると、「ご先祖さまにそんな名まえの方がいました。遠い昔です。わが国の初代の大統領です」という返事が返ってきた。

 

 「でも、この町ともお別れです。学者が今後の地球の気象の大変動を予言したので、もっとくらしよいほかの星へ移住したのです。ぼくはちょっと忘れ物をとりにきたです」といって、円盤で戻って行ってしまった。

 

 のび太とドラえもんが「いつの日か…、どこかの星で、イチの子孫とぼくらの子孫が出会うかもしれないね」と、語り合いながら眠りについた。翌日、ジャイアンとスネ夫は新聞の写真を見ながら、「寺院跡から出てきた神さまの彫刻がほら! 野比くんそっくり!! アハハ、けっさくだ」とバカにしていた。

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