ヤメラレン[★★]

【道具解説】 ひみつ道具の『ヤメラレン』の錠剤を飲むと、ある中毒になることができる。

 

【使用目的】 今回も禁煙に失敗したのび太のパパは完全にニコチン中毒であった。心配になったのび太はドラえもんに中毒を直す薬がないかと尋ねると、「ヤメラレン」を出してくれた。

 

【使用結果】 ドラえもんが勉強の嫌いな子に、「ヤメラレン」を飲ませると好きになるから、のび太に冗談に飲まないかと、すすめているとき、ジャイアンが「のび太、ドラえもんいるか!?」とやってきた。

 

 ドラえもんは「かくれろ!! いるすを使え!!」と押し入れに飛び込んでいる。のび太が「ばかみたい。コソコソかくれるなんてぼく、きらいだな」と言いながら、ジャイアンに会った。

 

  「友だちの家をまわってきたんだが。どこいってもるすなんだ」と、汗を垂らして、「約束のリサイタルの切符だ」と、二枚の「ジャイアン激唱」と書いたチケットを手渡された。「もうすぐ開場だからな、まってるぜ」とにこやかに手を振って玄関を出て行った。

 

  玄関を出ると、「みんないるす使ってるにちがいない。草の根わけてもさがしだしてきかせるぞ」の意気で切符を売りに回っている。

 

 ドラえもんから、「なにもぼくの分まで…」と泣いて抗議されたが、のび太は「客がふたりしかいなければ中止になるんじゃないかしら」と反論している。

 

  ドラえもんは「考えが甘いよ。ふたりっきりであの殺人的な歌を、たっぷりきかされることになるんだ」と話し、二人で涙を流して、「はたしてぶじたえられれるだろうか。神さまお救いください!!」と抱き合っている。

 

 のび太が「ヤメラレン」を飲んで、ジャイアンの歌の中毒になったら、どうかという考えを出した。ドラえもんは気がすすまなかったが、それしか道がないと思い、リサイタル会場の広場に出掛けた。

 

 ジャイアンはステージであるミカン箱の上に立ち、「どいつもこいつもいるす使ったり、仮病になったり。おぼえてやがれつてんだ!! それにひきかえ、きみたちふたりは、真の芸術の理解者だ!! ふたりでもいい! おれの歌を愛してくれる人のために、のどのさけるまでおれは歌うぞ!!」といった長いあいさつの後に、「歌こそ命~ わが~命よ~ オ~オオ~ オ~」と歌い出した。

 

 二人が「ヤメラレン」を飲むと、あの「ボエ~」も、「それほど悪くないんじゃない? 悪くないどころか…。天才だよ」という気持ちになり、「いいぞいいぞ!! 日本一!! いや、世界一!!」と声援を送ることになった。

 

  ドラえもんも大粒の涙を滝のように流し、「歌一すじにいきてきたかいがあった」と号泣した。二人の声援はエスカレートし、「キャーッ、ジャイちゃ~ん!! しびれるう!! おしっこもれそう!!」となった。

 

  遠くで見ていたスネ夫と安雄とはる夫は、「ここできいててさえさむけする歌なのに、ありゃおせじじゃなさそうだぜ。どんな神経してるんだ」と話していた。

 

 ジャイアンが「ファンのご声援にささえられ、二時間はゆめのようにすぎました。そろそろお別れの…」と言い出すと、「もう? もっときかせてよ。アンコール アンコール」の声に、「ほ、ほ、ほんきでいってるのかあ!? そんなにもおれの歌を…」と感動した。

 

 「のどが…、もう声がかれて…」とまで歌い続けても、「根性がないぞ!! そんなことでプロになれるか」と厳しい声援が続いた。

 

ドラえもんが「かんべんしてくれよう。あしたつづきをやるから」といっても、玄関までついてきて、「約束忘れるな!!」とでかい声援を送っている。しずちゃんが「さいなんだったわね」と声をかえると、二人は「楽しい一日だよ」と答えて帰って行ったので、しずちゃんはキョトンとしていた。

 

 いいくすりだとわかったので、家に帰ると、ガムをかみながらタバコを吸えないことに気づいたのび太はドラえもんと相談して、ガムと一緒に、「モグ モグ ムニュ ムニュ」と「ヤメラレン」をパパに飲んでもらった。

 

 次の日になっても、ドラえもんとのび太は「ジャイアンしらない? 約束破るなんてそれでも男か!!」と探し回り、食卓でも「ああききたいなあ。頭がボーッとしてイライラする」と言っていた。

 

 パパはガム中毒になったため、「クチャ クチャ ニチャ」とガムを、みんなが食事を終わってもかみ続けた。ドラえもんは「あのクスリのききめが強すぎるのかな」としきりに反省していた。

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