無人境ドリンク[★★]

【道具解説】 ひみつ道具である『無人境ドリンク』を一口飲むと、絶対に他人と顔を合わせることができなくなる。

 

【使用目的】 のび太は学校でも登下校時でも家庭でもよってたかっていじめられるので、「みんな大きらいだ!!」、「人間不信」、「ききたくない! 顔も見たくない」と泣きわめき散らした。それで、ドラえもんは「無人境ドリンク」を出している。

 

【使用結果】 のび太が「無人境ドリンク」を「ゴク ゴク」と飲み終わると、ドラえもんは突然、部屋を走って出ていった。よく見ると、部屋の隅にネズミがいることがわかった。

 

 「のび太!!」と階段の下でママが呼んでいたが、「だれとも顔を合わせないのなら、ママもぼくをしかれないはずだ」と確信して、部屋に閉じ困っていると、ママが階段を「ドス ドス」と上がってきた。のび太の部屋にチラシが落ちていて、「まあっ、お肉が五割引!! 売り切れないうちに!!」と買い物に出掛けてしまった。

 

 ジャイアンから「さっきのつづきだ。あき地へこい。にげてもむだだぞ。あしたもあさっても追いかけるぞ」という電話があり、「いってやろうじゃん!! どうせ顔をあわせられないんだ」と出掛けることにした。

 

  ジャイアンは「おれの命令にさからえるはずがない」と自信満々で待っていた。しかし、安雄が窓にボールをガチャンとぶつけたので、神成さんが「きょうこそゆるさんぞ!!」と追い掛けてきたので、みんな退散してしまった。したがって、のび太が着いた時は誰ひとりいなかった。

 

 しずちゃんの家に行っても、いつもの本屋さんに行っても、誰にも会うことはなかった。のび太は「どうなってるんだ…。みんな死に絶えちゃったのかな…」と考えて歩いていたら、「そこらの家へいきなりとびこめばきっとだれかいる」と思って、インターフォンを「グイグイ」押したが、「るすらしや」となった。

 

 「だれかきてたみたいだったけど…。インターフォンなおしとかなくちゃだめね」というのが実情だった。「こんちは!! こんちは!!」と大声をかけたが留守であった。「だれじゃ。ゆっくりトイレにも入っておれん」とおじいさんが遅れて出てきた。

 

 ドラえもんはそろそろ孤独のおそろしさがわかったな。もうしばらく死の町をさまよいな。二度とばかなこと考えないように」と言いながら、タケコプターでどこかへ飛んでいった。

 

  のび太は「こんなこといつまでも続くわけがないよ。もうすぐ夕食だ。パパも帰ってくる。家へ帰ればきっといる!」と思って、帰ってみたが誰もいなく、のび太は「永久にぼくはひとりぼっち…?」と考えて眠ってしまった。

 

 「びっくりしたわ。とつぜん映画にさそうなんて」、たまには二人だけの夜もいいじゃないか」とママとパパは夜遅く帰ってきた。つぎの朝、「しまった!! 寝ぼうした!! ちこくだ、ちこくだ」と言いながら学校に出かけた。

 

  教室で、「やっぱり…、ぼくは永久に孤独地獄をぬけだせないんだ。ドラえも~ん」と泣き叫んでいた。家では、パパが「日曜なのになんでのび太は学校へいったんだ?」と不思議がっていた。

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