見えなくなる目薬[★★]

【道具解説】 『見えなくなる目薬』を目に差すと、周りの人が見えなくなるひみつ道具である。差した本人が透明になる目薬ではない。

 

【使用目的】 のび太はジャイアンに借した本のおしまいのページにジャイアンの悪口を書いたので、ジャイアンが読み終わらないうちに、透明人間になって家に忍び込んで取り返すんだとわめいていた。そして、年末で忙しいドラえもんから「見えなくなる目薬」を出してもらっている。

 

【使用結果】 のび太が「見えなくなる目薬」を「ぽと」と目にさして、ママの鏡台を見ると、自分の姿がバッチリ見えるので、ほかの人が見えなくなる目薬だと思った。のび太は家でも、往来でも、空き地でも、誰一人目にすることがなかった。

 

  往来では、「ドシン」とぶつかり、「きおつけろ」と怒鳴られたが、誰も周りにはいなかった。自転車が「チリリリン」と音を出して走っていたが、誰も乗っていなかったので、のび太は「おばけだあ」と叫んで逃げ出している。

 

 ドラえもんマンガ史上最初で最後となる、めずらしく二人のドラえもん作者がコマに登場して、このふしぎな現象を説明している。「見えなくなる目ぐすり」とは、ほかの人が、のび太くんには見えなくなる目ぐすりのことであると。

 

 のび太はジャイアンの家に忍び込もうとした時、猛獣の檻に入っていくような気がした。のび太には玄関でくつを磨いているかあちゃんも、「そろそろ」と入ったジャイアンの部屋にも、誰ひとりいないと確信した。

 

  ジャイアンのお菓子を「パク パク」食べながら、読んでいた本と取り上げ、落書きをしたおしまいのページを見ながら、「これをよまれちゃ、おしまいなんだ。アハ アハ アハ」と大笑いして、「ゴシ ゴシ」と消し、「パッ パッ」とジャイアンの目の前ではらっていた。

 

 顔を真っ赤にして、「ウガーッ」と怒ったジャイアンが追い掛けてきて、いきなり背中を「ドン」と押した。のび太は「なんだかふらふらしたぞ。目まいかな」、さらに、「ガン」と頭を殴られたときも、「ものすごい頭つうがした。かぜをひいたな」と考えていた。

 

 ドラえもんはタイムマシンで帰るとき、「今、考えてみると、かんちがいしたらしい。不吉な予感がする」と思った。のび太は顔にけがを負い、頭に氷嚢をのせて、「へんなかぜだなあ。からだじゅうがいたくなるなんて」とうなされていた。この姿を見て、ドラえもんは、のび太くんは最後の最後まで気がつかなかったことを確信した。

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