一生に一度は百点を[★★★]

[初出誌] 『コンピューターペンシル』、「小学六年生」197312月号、10頁、67コマ

[単行本]  『一生に一度は百点を』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第1巻」197481日 初版第1刷発行、9頁、68コマ

[大全集] 『一生に一度は百点を…』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 12009729日 初版第1刷発行、9頁、68コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 タイトル『コンピューターペンシル』が『一生に一度は百点を…』に変更

 「こないだのテストの答案をかえします」が「きのうのテストの答案をかえします」に変更[730(1)]

 

 「あれが、ひょうばんの天才少年………」が「あれがひょうばんの天才少年よ。すてきねえ」に変更[730(5)]

 「まじめにやれば、かならずむくいられるものだ」が「まじめにやれば、かならずぼくのようになれるよ」に変更[734(6)]

 

 「ほしいものは手に入れるのがおれの主義さ」が「ほしいものは手に入れるのがおれのやりかたさ」に変更[735(7)]

 「………かまうもんか!!」、「あしたはぜったいに使ってやるぞ!!」コマ挿入[736(7)]

 

 「0点にちかい成績だった」が「あれじゃあ、0点かもしれないな」に変更[737(6)]

 「なんのことだ。しらんな」が「なんのことだ。知らないな」に変更[738(3)]

 「泣くほどうれしいかい」が「なくほどうれしいのかい」に変更[738(4)]

「かえすよ」が「百点なんかこりごりだい!!」に変更[738(7)]

 

[梗概] 先生から、「きのうのテストの答案をかえします。のび太くん。いつものとおり百点だよ。きみは、どうしてよくできるんだろう。ほかの者も、見習いなさい」とお褒めの言葉を頂戴している。

 

 のび太は「くやしいなあ。どうしても百点以上取れない」と頭をかきながら悔やんでいる。しずちゃんからは「のび太さんて、すごいわねえ」と絶賛され、女の子のクラスメートからは、「あれが、ひょうばんの天才少年よ。すてきねえ」と羨望の眼で見詰められている。


 のび太が「ムフ フフフ」とヨダレを垂らしながら、机に俯せて夢を見ていると、突然、ドラえもんの「宿題終わったかい」の声で、「ハッ」と目が覚めた。

 

 ドラえもんが「さっきからなにやってたんだ!! しずちゃんとこへ行く約束だろ。学園祭の打ち合わせがあるんだぞ。きっと、もうみんな待ってるよ。悪いと思わないの。そんなものさっさとかたづければいいのに」と「ガミ ガミ」とがなり立てた。


 のび太は顔を真っ赤にして、「うるさいなア てまどって悪かったな! どうせ、ぼくは頭が悪いからね」と居直り、仰向けになって「ドラえもんだけ、いけばいいじゃないか」とふて寝してしまった。

 

 その姿を見て、ドラえもんは「なにも、そうヤケにならなくても」と言いながら、『四次元ポケット』からひみつ道具を取り出して、のび太に手渡した。それを使って、宿題をやると「スラスラ スイスイ」とあっという間にできてしまった。そのひみつ道具は『コンピューターペンシル』という優れものであった。


 ドラえもんから「かえせよ」と言われたが、のび太は「もうちょっと貸せよ。おもしろいから」と言って外に出かけた。ジャイアンの家で、「あれ、まだいたの。行こうよ、学園祭の打ち合わせに」と誘いかけると、ジャイアンはいつもの元気がなく、「近ごろ宿題は、むずかしくて量が多いだろ。なかなかかたづかなくて」とこぼしていた。

 

 のび太はその宿題を「スラスラスイ」と解いて、ジャイアンから「おまえ、いつからそんなに頭がよくなった?」と感心された。スネ夫の宿題を同じように解決して、ジャイアンから「おかしい!!」と疑われ、スネ夫からも「あのバカがきゅうに。なんかあるんだよ」と邪推された。

 

 しずちゃんの家では、パパがねじり鉢巻きをして、机の上の大量の仕事に悪戦苦闘しているところであった。その光景を見て、のび太は「サラサラサラノ チョイチョイ」とあっという間に、すべての仕事を片付けてしまった。

 

 しずちゃんから「いったいどうしたの」、ジャイアンからは「なにかいいくすりでもあったのか」、スネ夫からは「そんなら、おれたちにもよこせ」と問い詰められる始末。


 のび太は「なにをいうんだ、しつれいな! これすべて、日ごろの努力が実をむすんだのです。しょくんがねているまも、ぼくはせっせと勉強にはげんだからなあ」と言いたい放題。

 

 さらにエスカレートして、「しょくんも、あきらめることないよ。まじめにやれば、かならずぼくのようになれるよ」とのたまう次第。傍らで、ドラえもんは目を閉じて、名僧のような表情でただじっと聞いているばかりであった。
 

 帰宅途中、のび太は「ああいい気持ち」とご機嫌、ドラえもんが「もういいだろ、かえせよ」と催促しても、「まだ借りとくよ。あしたテストがあるんだ」との返事であった。

 

 ドラえもんは思わず激昂して、「ずるい!! それじゃカンニングと同じだ!」と厳しく糾弾したが、のび太は「いいじゃない。いっぺんぐらい、百点とってみたいよ」と笑いながら走り去ってしまった。


 その会話を家の陰で聞いていたジャイアンは「なるほど、なるほど。あのエンピツのおかげか。いいなあ。おれも欲しいなあ。欲しいものは手に入れるのがおれのやりかたさ」とニヒルな表情を浮かべながら家路に向かった。


 のび太の家では、パパが「ようし、冬休みには世界一周旅行につれていこう。それから、のび太のほしがってたものは、なんでも買ってやろう。なんでも、かんでも」と大盤振る舞い。

 

 心配になったママが「あなた!! へんなこと約束しちゃ困ります」と釘を刺したが、パパから「ハハハ、通信簿がオール五だったらという話さ」と聞かされ、ママも「ホッ」と安堵の表情。


 のび太は舌を出しウインクしながら、「ところがあるんだな、このエンピツさえあれば。ドラえもん、きみもつれてってやるからね」と誘いかけると、ドラえもんは「フン」と答えるのみだった。

 

 のび太は冷や汗を垂らしながら、「あの目。けいべつしきったような目つき。きたないものでも見るような」ドラえもんの表情に対しても、布団の中では、「かまうもんか!! あしたはぜったいに使ってやるぞ!!」と決意しながら眠りについたのであった。


  先生から、「答案用紙は、行きわたったかね。でははじめ!」の合図でテストがスタートした。のび太の心臓の鼓動は「ドキ ドキ ドキ」と高まり、震える手で「コンピューターペンシル」を握りしめると、脳裏には昨晩の軽蔑しきったドラえもんの表情が浮かんできた。

 

 のび太は「やめた! ふつうのエンピツでやろう」と決心し、「あれじゃあ、0点かもしれないな」とうなだれながら帰宅した。


  家に帰って、のび太は正直に「かえすよ、使わなかった」と告げると、ドラえもんは「えらい!」と喜色を満面に浮かべて歓迎してくれた。

 

 コンピューターペンシルを見たドラえもんから、「あれ、これちがうよ。ふつうのエンピツに手を加えただけのにせものだぞ」と指摘されたが、のび太は「へんだなあ。どこで入れかわったんだろう?」とキツネにつままれたようなものであった。


  後日、テストの返却で、ジャイアンだけひとり満点を取ることができた。のび太はジャイアンにコンピューターペンシルを返すように要求したが、「なんのことだ。知らないな」ととぼけるばかりであった。

 

 ジャイアンの家では、父ちゃんが泣きながら、「いつも落第点のおまえが、きゅうに百点取れるわけがないっ。できの悪いのはしかたがないとして、不正だけはするなと教えてきたはずだぞ!」と厳しく叱責した。

 

 翌日、顔中傷やコブだらけのジャイアンがドラえもんとのび太の前で、「百点なんかこりごりだい!!」と言いながら、コンピューターペンシルを道路にたたきつけていた。
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