水たまりのピラルク [★★★]

[初出誌] 『無題』、「小学五年生」19821月号、17頁、121コマ

[単行本]  『水たまりのピラクル』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第34巻」1985825日 初版第1刷発行、24頁、172コマ

[大全集] 『水たまりのピラクル』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 1020101030日 初版第1刷発行、24頁、172コマ

 

[梗概]  スネ夫が写真を見せながら、「おじさんの別荘のうらの谷川では、こんなのがどっさり釣れる」と自慢していた。日曜日に連れて行ってあげてもいいよと言ったので、しずちゃんも行く気になった。

 

  しかし、のび太にいじわるするのでしずちゃんはいかないと言いだした。感激したのび太はドラえもんにいろんな道具を出してもらって、でっかい魚をいっぱい釣ろうよと提案すると、ジャイアンも一緒に行くと言い出した。

 

 ドラえもんにその話をすると、「近所のネコたちとパーティーを開くことになっている」と言われた。しずちゃんとジャイアンが誘いにやってきたので、ひとまずドラえもんからスペアのポケットを借りることができた。

 

 「どこでもドア」を出そうとしたら、ひみつ道具の『どこでもまど』が出てきたので、その窓を使ってスネ夫の釣り場に行くことにした。

 

 のび太が竿と糸と針を出すと、竿は普通であったが、糸と針は家庭で裁縫用に使う物であった。あきれて、ジャイアンは目の前で釣っていたスネ夫のほうへ行ってしまった。

 

 のび太はひみつ道具『手針』をなんとか出して、釣りをしずちゃんと一緒に始めた。スネ夫もジャイアンも全く釣れないので、「へんな針を使うから、魚がにげちゃうんだ!!」といちゃもんをつけ、のび太に石を投げつけてきた。

 

 タラコの入ったおにぎりを食べながら、しずちゃんとのび太が釣っていた場所はスネ夫によれば、「池じゃなく、ゆうべの大雨でできた水たまり」であることがわかった。スネ夫とジャイアンに大笑いされたが、しずちゃんはあくまでも優しく、「いいのよ。なにもつりにこだわらなくても、ハイキングにきたと思えば」と慰めてくれた。

 

 しずちゃんがその辺を散歩している間、のび太は大物を釣ると決心し、ひみつ道具『海水のもと』、『タイムふろしき』、『成長そくしんライト』がポケットからでてきたが、釣りに関係ないものばかりであった。

 

 「やっぱり、ドラえもんでなくちゃだめか…」と考えていたら、「タイムふろしき」が「ピク ピク」動いたので、ふろしきをのけてみると、小さな魚が出てきた。のび太がおにぎりで食べたタラコの一部が落ち、タイムふろしきが被さり、成長そくしんライトが当たったため、幼魚になったことがわかった。海水のもとを池に入れ、幼魚を放して、大きくするためにライトを照射した。

 

 ジャイアンとスネ夫は全く釣れないので、気晴らしのため、のび太をからかうことになった。「あのアホが、水たまりの前でどんなアホな顔をしてるか。考えただけでも笑っちゃうぜ」と言いながら、行ってみると、のび太は手針で大物の魚を次から次へと釣り上げていた。

 

 ジャイアンは今さらのび太に頭ををさげることがでいないので、「おまえの釣り場でドカドカつろうじゃねえか! おまえがつれるといったんだからな! もしつれなかったら……、命はないものと思え」というきびしいものであった。

 

 大物をあらかた取り尽くしてしまったので、しずちゃんにとにかく見せようと思って、呼びに出かけた。そのとき、風が吹いて、タイムふろしきが魚の上に「フワリ」と被さってしまった。しずちゃんはリスと遊んでいたので、その大漁の話を信じてくれなかった。

 

しかし、現物を見てもらうために連れてくると、タラの山はどこにも見られませんでした。タイムふろしきの下にはタラコがあり、タラコに戻ったことに気づいた。ぼくはダメな男だと悲嘆にくれていると、ドラえもんが「どこでもドア」からやってきた。

 

落胆しているのび太を見て、しずちゃんに「大物を釣らせてあげたい」というのび太の希望を入れて、ひみつ道具『空間入れかえ機』を取り出した。

 

 この機械を使って、アマゾン川の一部をもってきて、淡水魚としては世界最大の魚である「ピラクル」を釣る計画を立てた。

 

 この川で魚を釣っていると、「クイ… クイッ」の手応えがあり、「手針が魚をみつけたんだ! あんまり大きいので、どこをつかむかさぐっているんだ!!」とドラえもんが解説するので、のび太はしずちゃんを呼びに行った。

 

 ジャイアンはそろそろ限界に近づいていた。村の人が「つりはだめだよ。ゆうべの大雨で、水かさはふえるし、どろどろににごったし」と注意してくれたので、「むだ骨をおらせやがって!! このやろ!! このやろ!!」、「大雨はぼくのせいじゃないもん。にくいのは水たまりでタラなんかつったのび太だ!!」となり、「ゆるせない!! やっちまえ!!」となった。

 

 その頃、しずちゃんたちは「ググ ズル ズル」と引っ張られ、ピラクルを釣り上げ、「ザバー ドタッ バタン ドタン」と振り回され、竿をつかんでいたしずちゃんは「キャアー いや~んとめてえ!!」と絶叫して、「ザバン」と川の中に引きずり込まれてしまった。

 

 この川にはピラニアがうようよいるので、のび太は泳げもしないくせに、川に入っていってしずちゃんを助けようとした。

 

 しずちゃんがのび太を助けて川から上がると、ピラニアなどは全くいないと言うことであった。よく見ると、「空間入れかえ気」は故障し、ただの水たまりに戻っていることが判明した。結局一匹も釣れなかったが、しずちゃんは「とてもおもしろかったわ。こんなスリルあじわったのはじめてよ」と上機嫌であった。

 

 スネ夫たちがたくさん釣ったかどうかを見るため、「どこでもドア」で行くと、先ほどの「ピラクル」に「ドタン バタン」と振り回され、ケガをしてウ~ンと呻っていた。三人を見ると、ジャイアンは「のび太についていけばタラをつったりピラクルを…」とうらやましがり、一方、スネ夫は「いきたきゃいけっていったろ!!」と喚いていた。

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